ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【3】

ー絶命号:船内(上層)ー

下層で乱戦が始まると同時に上層でも大騒ぎになっていた。大きな液晶パネルに闘技者たちの名前と数字が表示されている。

マイクを持った黒服たちが声を張る。

『さあさあ予選を勝ち抜くのはどの闘技者か!?予想に自信のある皆さま、ぜひぜひお賭けください!』

液晶画面から闘技者の名前がひとつ消える。

『おおっと!また一人の闘技者が失格になりましたー!さあさあベットはお早めに!』

「ああ!うちの闘技者が!」

「クソ!悠にもう2000追加だ!」

「紅に1000!」

「こっちはハサドに5000だ!」

自社の闘技者に賭けるものもいれば、そうそうに負けてしまって少しでも出場料を取り戻そうとしているのだ。

ほとんどの人間は掲示板に集まっていったので久秀はドリンクカウンターの方へ行きミネラルウオーターを頼んで受け取った。

久秀「あの掲示板の名前の下にある数字はなにかしら?」

凛「ああ、あれは闘技試合で(会社)が獲得した資産の総額ですね。」

久秀「資産?」

凛「まぁ、闘技者の強さを測る指標のひとつですね。戦績が無敗の闘技者なんて珍しくもないですから。」

久秀「負けたらクビになったり死んだりするから……ってことね。」

凛「例えば試合数は少なくても獲得総額が多い選手は賭けレートの高い重要な試合を任される実力者の可能性があります。反対に試合数をこなしていても獲得資産額が少ない選手は、重要な試合を任されない使い捨て闘技者……の可能性もありますね。」

久秀「なるほどね。ちょっと下を見てみましょうか。」

凛「あ、社長。賭けないんですか?」

ミネラルウォーターを飲みほして瓶をカウンターにおいてガラスの方へと向かう。下ではすでに相当数の闘技者が倒されていた。この段階で数で潰しにかかるような三流闘技者は一蹴され選りすぐられてきている。

それでもまだまだ激闘が続いている様子を眺めていると、色んな声が聞こえてくる。

「ああ、負けちゃったかー!」

「やれやれこれで出場料の50億がパーですよ…」

「さすがトーナメントにエントリーするだけあってどの闘技者も強いですなぁ。」

「こりゃ誰が勝ち抜くかまるで分りませんね。」

そんな声を耳にしつつも、久秀は数名ほどの闘技者に視線を泳がした。三流の闘技者で参加した雇い主らは目も三流らしい。「居る」のだ明らかに別格の闘技者が。

「うふっ♪」

「な、なんだこの蹴り!ぎゃっあ!」

「軌道がよぐべっ!?」

舞うようなステップと蹴りで敵を倒していくキノコの傘のような奇抜な髪型をして紫のアイシャドウと口紅を塗った男。

【マーダーミュージック】沢田慶三郎
・闘技試合戦績:4戦0敗
・企業獲得資産:210億9000万円


「「「死ねや!コラァァ!」」」

数人の闘技者が白いインド装束の男に襲いかかろうとしたがパンッパンッと弾けた音がしたと思うと糸が切れた人形のようにその場に崩れ落ちていく。

「な、何が起こった!?」

「早すぎて全然見えなかったぞ!」

【ベルシイ石油】ハサド
・闘技試合戦績:17勝0敗
・企業獲得資産:2205億7600万円


ドゴォッと爆音とともに巨体の男が弾け飛んで地面を何度もバウンドする。そのぶん殴った男は更に巨体でスキンヘッドに白いひげを蓄えた男だった。その迫力に他の闘技者たちが引き腰になる。

【あじろ水産】賀露良成
・闘技試合初参加

「張り切ってるねえ。」

その巨体の男に向かったのは右目というか顔の右部分が裂けてそれを縫い閉じている細身の男だった。

「原田!!」

「ハラトクだ!!」

原田「俺とも遊んでくれや♪」

【ふじま運送】原田徳次郎
・闘技試合戦績9勝10敗
・企業獲得資産:690億4200万円


紅の背後に張り付いてギリギリと力を込めて絞め落とそうとしている佐治がいった。

【大亜細亜空港】下田佐治
・闘技試合戦績:2勝0敗
・企業獲得資産:40億2100万円

佐治「ハァ…いい加減あきらめたらどうだ?ハァ…この大戦から逆転の目はないぜ?」

紅「ぐっ……!!」

【?】紅(赤木皇)
・闘技試合戦績:?
・企業獲得資産:?


おれに狙いを定めた面白黒人は両腕をまっすぐ伸ばし拳をくっつけ、下半身はクランチの態勢という変わった姿勢をとる。

【22世紀ファックスコーポレーション】ジェリー・タイソン
・闘技試合戦績:3勝0敗
・企業獲得資産:19億5200万円

悠「(何だこの構え?)」

タイソン「Lady…GO!!」

妙な構えのまま飛びかかってきた。

【松永火薬製造&小鳥遊堂】小鳥遊悠
・闘技試合戦績:3勝0敗
・企業獲得資産:154億1400万円


久秀「ふぅん…。」

凛「社長、賭けないんですか?まだ受け付けてるっスよー?」

久秀「そうね賭けてみましょうか。勝ち残る闘技者が大体わかったわ。」

凛「ええー、本当ですかー?」

久秀「そこの黒服さん、この紙に書いてる闘技者に100憶ずついいかしら?」

黒服「はい、受け付けました。」
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