ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【3】

ー絶命号:船内(下層)ー

闘技者たちに囲まれ後ろに居る城が卑怯だと言おうとしたとき、大声が響いた。

「悠ーー!!」

悠「あ?」

闘技者の囲いも気にせずズカズカと近づいてくる男。長身で前髪の一部をおさげにしている……紅だった。

紅「よう、悠ーー!」

悠「紅……?紅!?」

城「お知り合いですか?」

紅「会いたかったぜぇ、悠!」

他の闘技者たちが突然のことに立ち止まり、どんどん近づいてくる紅だったが、巨漢の男がそれを遮った。

「オラァ!なにを余裕こいとんのじゃぁ!」

紅「なんだお前、邪魔。」

そういいながら紅は巨漢の首に指を添えて振り抜いた。瞬間、ブッと何かが剥がれたような不気味な音ともに鮮血が飛び散った。

「ぎゃぁっぁぁっ!」

悲鳴を上げて紅に染まり地に落ちる男。

城「切った?!刃物……」

悠「いや、指で削いだみたいだな。」

もともと強い男だったが、コイツはどちらかというとハードパンチャーよりのオールラウンダーstyleの戦い方をするタイプだったはずだが……。

紅は自分の手についた血を払いながらおれの前に立つ。

紅「会いたかったぜ悠。お前とまた戦うため血が滲むような特訓を続けてきたからな!……ん?」

紅の視線がおれから背後の城に向く。

城「…どうも。」

紅「その子猫ちゃんなんだ、闘技者か?」

悠「いや、ちょっと説明しにくいんだけど……とりあえず、関係者なんだがドジって閉じ込められてな。」

紅「お前の周りにはホント女がいるな。」

悠「否定はしないがコイツはおれの管轄外だ。でも、さすがに放置するわけにはいかんからな……。」

紅「ふーん……仕方ない、その子猫ちゃんのお守、手伝ってやるよ。」

悠「…お前、おれと闘うんじゃなかったのか?」

紅「おうよ!もちろんリベンジするぜ!だが、今じゃねぇ。お前には本戦まで残ってもらわないとな。」

悠「そりゃどういう意味だ?」

「なめてんのかテメーら!」

どういう意味か話を聞こうとしたが周りの闘士たちがさっきよりも憤慨したいる。

「やれ!二人ともぶっ殺せーー!」

堰を切ったように雪崩れ込んでくる闘技者たちだったが。

悠「テメーらには無理だよ!」
紅「テメーらにゃ無理だよ!」

おれと紅は馬鹿の一つ覚えのよな突撃しかしてこない雑魚を叩き伏せていく。

城「す、すごい!あの二人、レベルが違う!」

既に数で潰そうという闘技者として不正解の道を選んだ烏合の衆は大半が地面に突っ伏していた。中には倒れても起き上がろうと多少の意地を見せかけた奴もいたが、適当に悠に蹴り飛ばされ、飛んだ先で紅に踏み潰される始末。

紅「まるで歯ごたえがねぇな!闘技者なら根性見せてみろやっ!」

抉りこむようなアッパーカットで敵の顎を砕き余裕を見せていた紅だが何者かが背後から飛び着いてきた。カエルのように張り付き、右腕を紅の首に回し、残った手足で両腕を押さえ絡みついてくる。

「雑魚に気を取られて油断したな。調子に乗りすぎだぜ、ガキ?」

大亜細亜航空の闘技者、下田佐治。【獣人】佐治と呼ばれるサブミッション系の闘技者である。

紅「なんだ……すこしは骨のある奴がいるじゃねぇか。乗り切らせてもらうぜ、おっさん!」

おれは残りの雑魚を処理していると叫び声が聞こえた。

「うっ…うわぁぁああぁぁ!!」

「な、なんだコイツ!?」

「どこまでも追いかけてきやがる!」

「くっ、来るんじゃねええぇぇぇ!?」

悲鳴の方に目を向けると闘技者たちが車にでも撥ねられたように空を舞って落ちていく。

城「え!?なに?」

「PERFECT!!Yessss!!I did, pig man(やってやったぜ豚野郎!!)!I made a shot of KUSOTTARE BOUYA bite(くそったれボウヤどもに一発かましてやったぜ)!」

22th FAX CORPORATION所属闘技者ジェリー・タイソンが吠えている。

城「あ、あれも闘技者なんでしょうか?」

悠「面白黒人じゃねぇの?」

白シャツにはち切れそうなサスペンダーにぴっぴちのジーパン姿で鼻の下にもっさりとひげを生やした黒人が真っ白い歯をむき出しにしてギョロッと大きな目をこちらに向けた。

ジェリー「OH!!キミが次のエモノデスネ?」
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