ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【2】

ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

前に出ていくと、新たが立っていた。

新「おはよう」

悠「おはよう。どうした?」

新「用心棒だからね。迎えに来たの」

悠「そうか(襲われたあとだけど…)。けど、おれ今日は自分の学校の方に…」

新「じゃ、しゅっぱーつ」

悠「話を聞けて!をぃ!」






ー大江戸学園ー

首に包帯を巻いたままいったのが悪かった。
朝、教室に入ったとたんに輝や由真に捕まってしまった。適当に答えてやってもよかったのだが、隣の席でしゅんとした顔をしている新を見ていると、話すのはかわいそうな気がしてしまう。

休み時間後とに聞いてくるもんだから、もうめんどくさくなって昼休みには逃げ出してしまった。
ただ、部外者であり、まだ学園内に詳しくないおれはウロウロしているうちに、いつの間にか武道場にやって来ていた。

誰もいない武道場はやけに広く感じられた。
おれはふと思い立って、目の前に右京山をイメージした。想像のヤツはインファイトのスタイルで攻めてくる。

おれは拳を打つ。遅い。
やつは軽やかにパンチを避けて懐に飛び込んできてアッパー…。イメージした右京山にまるで追い付けない。

悠「次が…決着か…」

インファイトとヒット&アウェイを従えるパーフェクトボクサーに勝てるのか…と悩んでると、背後から声をかけられた。

「感心じゃないか、昼休みに特訓とは」

悠「十兵衛…指南役。いや、特訓ってもんじゃないんだけど」

十兵衛「それより、どうだ。強くなりたくなったか」

以前剣術の授業中、指南役にいわれたことを思い出す。あのとき、指南役はおれが強くなりたいと思ったときはいつでもこいといったのだ。

悠「まぁ…かも知れないっすね」

十兵衛「ふん、何だか煮えきらない返事だな。」

悠「この学園が自分が思ってたよりも危険なところだとわかったんですよ」

十兵衛「なるほど。それでもう一度稽古する気になったというのか」

悠「必要に駆られて軽くだけっすよ」

まぁ、今でも十二分に化けもん(十神将)にしごかれてはいるんだが。

十兵衛「まあいい。これを持て」

指南役はおれに木刀を渡してくる。

悠「指南役の稽古ってこっち(剣術)になるんだよな」

十兵衛「さ、構えてみろ」

悠「うっす」

おれは言われるままに正眼に構えてみる。

十兵衛「やはり力が入りすぎてる。特に肩と肘だ。そるに刀を強く握りすぎるな」

悠「うっす」

にわかに記憶が蘇ってくる。ガキの頃、梔姉さんにも同じことをいわれてたっけ。おれは蘇った記憶に身体を任せてみる。

十兵衛「構えは随分よくなったぞ。そのまま振ってみろ」

悠「うっす」

目の前の空気が切り裂かれるのを感じた。
剣を振るってこんなに気持ちいいものだったけ。

十兵衛「そうだ。いいぞ」

悠「自分でもわかりますよ」

十兵衛「稽古を続ければもっとよくなるがどうする?軽くだからもういいか?」

指南役はニヤリと笑う。
このひとはおれの答えなんか聞かなくても解ってるのだろう。
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