ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【3】

ー???:???ー

悠「……」

気になる。さっきからすっげぇ気になる。おれが自主トレを始めたら隣にやってきてずーーっとタコ踊りしている、この女。

城「……」

うにょんうにょんと手を動かしてはいるがいったい何の儀式なんだろうか。

悠「……あのさ、さっきからなにやってんの?」

城「はい、夜見さんの動きを真似てコツを掴もうとしているんです。」

悠「そのタコ踊りが?」

城「ビデオカメラにはこんな感じで映ってました。」

それは恐らくだがビデオを向けられてたから悪ふざけして他だけだと思うのだが、それにしても純粋というか不憫に思えてきた。

悠「あー、もうやめろやめろ、隣でそんなことされてたらおれが集中できない。消える腕ならおれが見せてやる。」

城「本当ですか!」

そういうと、嬢ちゃんはカメラ片手におれの前に正座した。いろいろとやりにくいがタコ踊りされてるよりはマシだった。

それからしばらく消える腕を披露し続けた。こっちも自分の可動限界などを試していく。最初は静かに見ていたのだが、ゆっくりとか右腕だけとか色々と注文をくわえてき出した。仕方なくそれに応えてやっているうちにおれのスタミナの方が尽き始めた。

悠「はぁはぁ、ちょっと……いったん休憩だ。」

城「あっ、はい。じゃあ、そのあいだ質問いいでしょうか?」

悠「アンタ、わりと容赦ないっかどん欲だな……。」

城「す、すみません。夜見さんはあまり教えてくれないので……。」

悠「教えてくれないっていうか、教える気がないだけだろ、アイツは」

城「気がついてたんですか!?」

悠「これでも色んな奴に扱かれてきてるからな、そいつがどういうタイプで何をしようとしてるのかはだいたいわかる。まぁ、まさか封禁とかいう関節自体をずらしてくるような真似をされるとは思わなかったが……。」

城「そういえば、何十%は適応しているとかいってましたけど関節が戻ってきてるんですか?」

悠「戻ってきてるじゃなくて戻してる、だ。外れるたびに微妙に位置を変えながらハメ直してる。」

城「それ、大丈夫なんですか?」

悠「大丈夫ではないだろうな。2%戻ったと思ったら外しまくって3%落ちることもある。あとは省エネだな。」

城「省エネ?」

悠「関節の限界と相談しながらの「省エネ運転」だ。身体が元に戻せない代わりに無駄な動きを極限までそぎ落としてひとつの動作にも2つ3つの意味を兼用させてる。まぁ、それでも一割程度しか復旧しないがな。」

城「ひとつの動きに二つ三つの意味を……」

悠「いっとくが真似しようと思うなよ?」

城「えっ!?」

悠「図星か……。あのな、根本的にお前はおれとお前では実戦経験、鍛錬量、くぐった修羅場の数……どれをとっても足りないんだ。もっと基礎トレしろ!基礎トレ!」

城「は、はい!頑張ります!」

そういってタコ踊りを始めそうになったので、放り投げてやった。なんでおれがこの小娘の面倒まで見るような真似してるんだか……。
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