ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【3】

ー???:???ー

このどこかわからない森の中での鍛錬(拷問)が始まって数週間が過ぎた。幸い、野宿ではなくなかなか豪華で洒落たログハウスが拠点になっている。電化製品は一通りそろっているしキッチンも広い、風呂までしっかりついている。

夜見に聞いたところ格安で売りだしていたので購入したものらしい。何でも三回ほど自殺、一度強盗殺人があったそうだが、こちとら幽霊の類より毎日ひとの事をゴミか何かのようにポンポン投げ回ってくる爺のほうが見怖いのだから。

朝いちに食事を作らされ、投げ回されて、昼になれば昼食を作らされ、投げ回され、夜になれば食事を作らされ、投げ回される日々がしばらく続いて、これは身体より(すでに壊され済み)先に心が病んでしまうのではないかと思っていたころ、姿を見ていなかった城たちがやってきた。

城「夜見さん、悠さん、見てください!ついにできました!」

おれと夜見が飯食ってるにデカい盥を置いて、例の魚取りを披露した。

蓬明「どーどすどーどす!」

夜見「ふーん」

悠「っか、なんか魚の数増えてないか?これに至っては金魚だし。」

タライの中には金魚にメダカ、果てはナマズまでいる。

メタラ「ヌルッとして掴みにくいかなって」

夜見「まぁいいか……。」

蓬明「で?コレが何のヒントだと?」

夜見「おいおい、ヒントといっただろう。たとえ、答えがあっていても意味が分かってなきゃ話にならんぞ。」

蓬明「ハァ?そんな……」

城「先の……魚の「先の動き」を鋭敏かつ正確につかむことにある……。」

夜見「小僧、補足しろ。」

悠「魚は人間より初動がはるかに速いうえに人間のように目や挙動で先を読めない。」

夜見「そうだな。魚の動きが読めれば並の人間の動きなんぞスローモーションだ。」

蓬明「やったどすお嬢!これで……」

夜見「やっと出発点に立てたって所だ。」

蓬明「え?」

メタラ「スタートライン?」

夜見「魚ができたからって完全に習得わけじゃない、この手の訓練は犬猫・野生動物に始まってハエやトンボなどの昆虫まである。」

蓬明「そ、そんな……」

メタラ「お嬢だって並の格闘家ヨリもズット強いのに……」

夜見「……お前ら、小僧とやってみろ。」

悠「は?」

夜見「三対一でいいだろう。小僧、お前は腕と足主体で相手してやれ。」

こういわれると断る選択肢などないわけだ。おれは昼飯の炒飯をかきこんで外に出た。後に続いて三人組も出てくる。

悠「よーし。いいぞ、いつでも来い。」

軽く柔軟してそういうと本当に間髪入れず蓬明が飛びかかってきた。良く鍛えられた四肢から力強い打撃や蹴りを繰り出してくるのだが、力任せすぎる。適当にさばきながら足払いで簡単にひっくり返ったところにダメ押しの一発を叩きこんだ。

蓬明「うぐっ!」

と、同時にパンパンッと発砲音が聞こえ数はつの弾丸が飛び交った。メタラの射撃だがこちらは蓬明よりもっと簡単。適当に半円を描くように距離を詰めていきながらおれは数を数えた。3.4.5……10.11.12の発砲音を聞き終えていっきに近づき両手にチョップを仕掛けて銃を叩き落とした。ついでに頭にも一発落とした。

メタラ「ぎっゃ!」

そして残るはあのお嬢ちゃん、おれが詰めるより先に間合いへ進んできた。軽く腕を振って牽制すると、一手早く身をひるがえして裏拳を避けた。

悠「ふっー……ハッ!!」

そこから、正拳、前蹴り、回し蹴りとお手本のような空手styleで城に攻撃を仕掛けていく。それなりに異種格闘相手に藻経験があるらしくこれを上手くさばいてきた。

というか、おれが攻めきれていない。最初の裏拳にしてももう一段力を込めれば一撃とはいわずともヒットはしていただろう。しかし、下手に仕留めきれずに力を込めすぎるとおれの肩が外れる。全身に施された封禁がしっかりと響いてるのだ。
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