ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【3】

ー某所:廃ビルー

闘技会絶命トーナメントの発表があり、今宵もある廃ビルである試合が開催される。

絶命トーナメント「出場者」同士の試合である。

【不夜城からの刺客】
GP(ゴールドプレジャー)グループ

VS

【極東の死神軍団】
岩美重工


ゴールドプレジャーグループは近年成長を遂げたナイトレジャー界の最大手企業。今やその業界規模は闘技会でも上位に食い込みつつある。

躍進の立役者は若き代表、倉吉理乃(くらよしりの)。夜の女王の名を欲しいままにするナイトレジャー界の革命者である。

こんな逸話がある。
あるとき、彼女の経営する店舗で酔った暴力団関係者が暴力沙汰を起こした。

そのとき、彼女がその男に手を伸ばしサッと頭を撫でた。すると、慈愛の情か、慙愧の念か、面子を何よりも重んじる極道が人目も憚らず涙した。

一切の暴力を用いず騒動を治めたこの一件は、倉吉理乃の「伝説」のひとつとして語り継がれている。


岩美重工は海洋・航空・宇宙開発あらゆる事業を展開する国内有数の大企業である。

中でも、最も力を注いでいる事業、それは……兵器製造。

率いるは日本経済界の奇人、東郷とまり。奇抜な言動とは裏腹に確かな経営手腕を持つ。同時に【死の商人】として恐れられ、危険人物としても知られている。

彼女があるテレビ番組に出演したときのこと……。

『東郷さん、実際問題としてあなたの売った武器によって大勢の人間が命を落としているわけです。そのことをどのように感じていらっしゃいますかね~?罪悪感を感じたりは……!!?』

識者の話を遮るように手がのびて、その顔を押さえつけた。

『ヘイヘイ黙れよ三下。足りねぇ脳みそに刻んどきな。包丁一本ありゃあガキでも人が殺せるんだ。アタシの仕事は兵器を売るまでさ。買った奴がどう使おうが知ったこっちゃねえんだよ!わかったかバーカ♪』

という発言を残した…。こちらの一件も東郷とまりの「奇人伝説」として語り継がれている。

本日相対する両社。

ゴールドプレジャーグループが擁する闘技者【暴君】森政士(もりまさし)。

闘技会試合戦績14勝0敗。路上仕込みの喧嘩術で勝利の山を築いたゴールドプレジャーグループ正闘技者である。

その森を難なく打ち倒し、正闘技者の座を奪った男。本日の代表闘技者、百目鬼雲山。

対する岩美重工が送りこむ闘技者は【極意拳】洪小虎(ホンシャオフー)。

現在、破竹の快進撃を続ける中国拳法家。闘技会試合通算戦績35勝1敗。

唯一の敗戦は闘技会12戦目。【滅堂の牙】との戦い。洪は滅堂の牙と対峙し、再起不能を免れた数少ない闘技者のひとりである。以来、洪は待ち続けていた。牙との再戦の機会を。
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