ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【3】
ー大江戸学園:大江戸城ー
親父が居るという話を聞いておれたちは城まで駆けた。関係ないしややこしくなるから制服とチャイナとガンマンは来るなといったが追ってきやがった。けれど、さすがに空気を読んだのか城門の前で待っていると中までは入ってこなかった。逆に言えば出てくるまで待つし、逃がさないという事かもしれないが……。
だが、小さな問題より目の前の大問題が先である。
エレベーターに乗りながらおれは息を整える。会いたいかどうかでいえば開いてくない相手と対面しなきゃいけないし、道すがら話を聞くには大問題を持ってきたのは親父ではなく別のやつで、むしろ親父も巻き込まれているのだと左近は語った。
話が見えない中、最上階に辿り着くと数人の女中が出迎えて重要な会議をすると気に使う評定の間に案内された。一声かけると詠美の返事があり、ふすまを開けた。
目に飛び込んできたのは親父たち……ではなく、三人の屈強な男だ。ひとりは中年の髭、ひとりは口元を隠してる鉄マスク、ひとりはオールバック。特にオールバックの男が……。
「……」
悠「!!」
注視していた三人「ではない」鋭い視線を感じて背中にゾワリとした、懐かしく苦々しい嫌悪感に飛び跳ねそうになった。
油の切れたブリキ人形みたいな動きで首を視線の方へと向けた。そこら居たのは老人。紋付き袴で杖をついた皺の深いじい様だが…………異質、まるで災害をひとの形に押し込めたような気配を放っている。似ている、ジジイ、小鳥遊弥一に似た気配を持っているのだ。
その老人はおれを見ると満面の笑みを向けた、まるで十代の子供が笑うような無邪気な笑顔に、身体が硬直しかけたが、それを解いてくれたのは詠美の声だった。
詠美「吉音さん、悠さん、そして他の皆様方も緊急の召集に応じてくださり感謝するわ。」
はぁっと無意識に止まっていた息を吐いて何とか平静を装う。
悠「あ、ああ。」
吉音「えーと、これってなんの呼び出しなの?あのおじいちゃんは?」
ピリッとした空気の中、吉音が軽く質問すると答えたのは老人だった。
片桐「ひょっひょっ、わしか?わしは片桐というもんじゃよ。」
悠「片桐……って、まさか」
兜馬「大日本銀行総帥片桐滅堂、日本大政界の首領(ドン)だ。」
あらゆる分野でもトップというのは存在する。そのなかでも上の上の上、あらゆる意味で真の意味でトップに君臨する男、それが片桐滅堂である。
悠「そんな大物がなんでここに?」
片桐「なんじゃ、兜馬君は話しておらんのか?」
兜馬「会長殿が突然おいでになったので説明も何もする暇なんかありませんでしたよ。」
片桐「ひょっひょっ、そうかそうか、まーあいいじゃろ、わしが来た理由、それはのう。……永らく行われていなかった「拳技会(けんぎかい)」を決定し、「拳技会会長職」をかけた「拳技絶命トーナメント」の開催を宣言する!!」
「「「!!?」」」」
悠「トーナ…メント?」
吉音「ねっ、ねっ、悠、絶命って死んじゃってない?」
片桐「左様」
吉音「わっ、聞こえてた……。」
片桐「「願う」だけで叶う望みなどたかが知れておる……「真に欲するものとは」常に「絶命」の先にある。誰でも構わん!拳技会会長の座を欲するものは各々最強と思う闘志を派遣せい!!武術家だろうが喧嘩屋だろうが殺人鬼だろうが素性は問わん!「我が牙」打ち勝ち「絶命」の先の「生」を掴み取ってみせい!!」
古木のような老人から発せられた声とは信じがたい声量で叫んだ。そして気がついた例の三人の男のうち二人がカメラを持っていることに、この宣言はここだけの話ではなく、もっと大規模に広がっているのだということだ。
兜馬「……本当に始められるんですな。」
片桐「さよう。もう弥一という障害もない。じゃが……同時にそれはとても悲しく、むなしい、ならばこそ今こそ始めるべきなのだ。」
悠「あのさぁ、いいかな?よく分かんないんだけど……そのトーナメント開催を宣言するのとここに集まった関係って何なんだよ。」
詠美「それが、そのトーナメントの場所をこの地、大江戸学園で行うとおっしゃられてるのよ。」
悠「はぁ?確かにこの島には色んな施設はあるけど……どこでする気だよ。」
片桐「ああ、大丈夫じゃよ。もうとっくにトーナメント会場も島も準備してあるし向かっておるから♪」
悠「は?」
するとカメラを回していた髭の男がタブレットをさし向けてきた画面には上空から撮影している様子の島が映っている……。しかし、何かがおかしい。
片桐「人工島じゃ。今動かしておる。」
吉音「ええっ!島が動いてるの!?」
片桐「ひょっひょっ、そうじゃよーん。いまここに向かっておる。この島から渡れるようにセッティングするつもりじゃ。」
吉音「えーと……どゆこと?」
詠美「つまりトーナメント開催時、大江戸学園を入場ゲートにして参加資格を持たないものを入れないようにしたいという話になったの。」
悠「決定済み…か。」
詠美「ええ…。必要な資材も財源もすべて手配したうえで、必要許可申請も済んでいる。……というか、片桐会長に意見できる人間なんていないでしょうけどね。」
悠「ちゃんと手回し済みか恐れ入った話だ。」
親父が居るという話を聞いておれたちは城まで駆けた。関係ないしややこしくなるから制服とチャイナとガンマンは来るなといったが追ってきやがった。けれど、さすがに空気を読んだのか城門の前で待っていると中までは入ってこなかった。逆に言えば出てくるまで待つし、逃がさないという事かもしれないが……。
だが、小さな問題より目の前の大問題が先である。
エレベーターに乗りながらおれは息を整える。会いたいかどうかでいえば開いてくない相手と対面しなきゃいけないし、道すがら話を聞くには大問題を持ってきたのは親父ではなく別のやつで、むしろ親父も巻き込まれているのだと左近は語った。
話が見えない中、最上階に辿り着くと数人の女中が出迎えて重要な会議をすると気に使う評定の間に案内された。一声かけると詠美の返事があり、ふすまを開けた。
目に飛び込んできたのは親父たち……ではなく、三人の屈強な男だ。ひとりは中年の髭、ひとりは口元を隠してる鉄マスク、ひとりはオールバック。特にオールバックの男が……。
「……」
悠「!!」
注視していた三人「ではない」鋭い視線を感じて背中にゾワリとした、懐かしく苦々しい嫌悪感に飛び跳ねそうになった。
油の切れたブリキ人形みたいな動きで首を視線の方へと向けた。そこら居たのは老人。紋付き袴で杖をついた皺の深いじい様だが…………異質、まるで災害をひとの形に押し込めたような気配を放っている。似ている、ジジイ、小鳥遊弥一に似た気配を持っているのだ。
その老人はおれを見ると満面の笑みを向けた、まるで十代の子供が笑うような無邪気な笑顔に、身体が硬直しかけたが、それを解いてくれたのは詠美の声だった。
詠美「吉音さん、悠さん、そして他の皆様方も緊急の召集に応じてくださり感謝するわ。」
はぁっと無意識に止まっていた息を吐いて何とか平静を装う。
悠「あ、ああ。」
吉音「えーと、これってなんの呼び出しなの?あのおじいちゃんは?」
ピリッとした空気の中、吉音が軽く質問すると答えたのは老人だった。
片桐「ひょっひょっ、わしか?わしは片桐というもんじゃよ。」
悠「片桐……って、まさか」
兜馬「大日本銀行総帥片桐滅堂、日本大政界の首領(ドン)だ。」
あらゆる分野でもトップというのは存在する。そのなかでも上の上の上、あらゆる意味で真の意味でトップに君臨する男、それが片桐滅堂である。
悠「そんな大物がなんでここに?」
片桐「なんじゃ、兜馬君は話しておらんのか?」
兜馬「会長殿が突然おいでになったので説明も何もする暇なんかありませんでしたよ。」
片桐「ひょっひょっ、そうかそうか、まーあいいじゃろ、わしが来た理由、それはのう。……永らく行われていなかった「拳技会(けんぎかい)」を決定し、「拳技会会長職」をかけた「拳技絶命トーナメント」の開催を宣言する!!」
「「「!!?」」」」
悠「トーナ…メント?」
吉音「ねっ、ねっ、悠、絶命って死んじゃってない?」
片桐「左様」
吉音「わっ、聞こえてた……。」
片桐「「願う」だけで叶う望みなどたかが知れておる……「真に欲するものとは」常に「絶命」の先にある。誰でも構わん!拳技会会長の座を欲するものは各々最強と思う闘志を派遣せい!!武術家だろうが喧嘩屋だろうが殺人鬼だろうが素性は問わん!「我が牙」打ち勝ち「絶命」の先の「生」を掴み取ってみせい!!」
古木のような老人から発せられた声とは信じがたい声量で叫んだ。そして気がついた例の三人の男のうち二人がカメラを持っていることに、この宣言はここだけの話ではなく、もっと大規模に広がっているのだということだ。
兜馬「……本当に始められるんですな。」
片桐「さよう。もう弥一という障害もない。じゃが……同時にそれはとても悲しく、むなしい、ならばこそ今こそ始めるべきなのだ。」
悠「あのさぁ、いいかな?よく分かんないんだけど……そのトーナメント開催を宣言するのとここに集まった関係って何なんだよ。」
詠美「それが、そのトーナメントの場所をこの地、大江戸学園で行うとおっしゃられてるのよ。」
悠「はぁ?確かにこの島には色んな施設はあるけど……どこでする気だよ。」
片桐「ああ、大丈夫じゃよ。もうとっくにトーナメント会場も島も準備してあるし向かっておるから♪」
悠「は?」
するとカメラを回していた髭の男がタブレットをさし向けてきた画面には上空から撮影している様子の島が映っている……。しかし、何かがおかしい。
片桐「人工島じゃ。今動かしておる。」
吉音「ええっ!島が動いてるの!?」
片桐「ひょっひょっ、そうじゃよーん。いまここに向かっておる。この島から渡れるようにセッティングするつもりじゃ。」
吉音「えーと……どゆこと?」
詠美「つまりトーナメント開催時、大江戸学園を入場ゲートにして参加資格を持たないものを入れないようにしたいという話になったの。」
悠「決定済み…か。」
詠美「ええ…。必要な資材も財源もすべて手配したうえで、必要許可申請も済んでいる。……というか、片桐会長に意見できる人間なんていないでしょうけどね。」
悠「ちゃんと手回し済みか恐れ入った話だ。」