ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【3】
大江戸学園:屋敷街ー
寅「別に邪魔はしねぇ。通るだけだ。」
岡っ引「い、いや、通るだけだって……ごほん!今は通行止めだ!」
寅「チッ……通行止めだか何だか知らねぇが通るだけだってんだろ。邪魔するなら……ぶっ飛ばすぞ。」
岡っ引「なっ……邪魔をしているのはそっちだろう!なんだその態度は!それに我々を誰だと!」
寅が拳を固めた。顎へ一発、それで終わり……となるはずだった、そのとき別の声が割り込んだ。
往水「はいはーい、ちょっとちょっとー、そこで何を揉めているんですかねぇ。」
岡っ引「はっ、すみません。この男が……」
寅「往水……お前が居るってのは珍しいな」
往水「あたしだってちゃーぁんとお仕事しますって。それよりも右京山さんこそ何してるんですか……。今取り込み中なんですけど。」
寅「ただ通るだけだ。人ひとり通すぐらいできるだろ。それとも力づくで通り抜けてやろうか?」
往水「あーもー……無茶苦茶なんですから。ちょっください。お奉行を呼びますから」
寅「呼ばんでいい、通せと言っとるんだ。」
往水は寅を無視して人ごみの奥へと下がった。怖いもの知らずなのか、ただ単に自分が相手をするのが嫌なのかは不明である。
少しすると今度は人ごみが割れながら女生徒がひとり近づいてくる。
想「何事かと思えば、寅君でしたか。」
寅「なんだアンタか、荒事みてぇだから朱金が指揮してるのかと思ったら。」
想「こちらは私の管轄ですから。それでどういうご用件で?」
寅「要件とかじゃねぇんだ。通らせろっていってるだけなんだ。」
往水「どうします?」
想「仕方ありませんね。ここで寅君に暴れられてしまっては余計にこじれるかもしれませんし……。」
寅「そういえば何でこんな人を動かしてる。喧嘩にしちゃあ、大げさすぎる。」
自分と悠の喧嘩の時はもっと大騒ぎになったろとツッコミを入れる人間はいなかった。
往水「いやぁ、それは……。」
往水は逢岡の方を見た。話していいものかどうかという確認だ。想は小さくため息を吐いた。
想「二重帳簿です。」
なるほど納得したと言いたげに寅は頭を振った。
寅「けど、だったら何で入り口で二の足踏んでんだ。踏み込みゃいいだろ。」
想「そうなんですが……令状が遅れてまして、踏み込めないんですよ。急がないと証拠を処分されてしまいかねないのですが……。」
寅「ふーん……。これからボケのところで飯を食おうと思って0たんだが、ちょうどいい。逢岡、飯驕れよ。そのかわり、俺が中に入れてやる。」
想「えっ、いったいどうやって。」
寅「いいから任せろ。」
そういうと、寅はその場から岡っ引と門番が睨みあっている入り口の方へと歩いていく。そして肩で風を切るように二人の間に割って入った。
岡っ引「?!」
門番「!?」
何事かと両人が目を丸くするなか、寅の腕に門番が持っていた棒が微かに当たった。
寅「おい、痛ぇじゃねぇか。どう責任取るんだ?」
門番「は、はぁ?!」
寅「人にぶつけといてなんだその態度、てめぇじゃ話にならねぇな。責任者に会わせろ。」
誰がどう聞いても無茶苦茶な要求。あっけにとられていた門番だが、すぐに憤慨して手に持った棒を振りかぶった。
門番「ふざけっ……ぎゃああぁっ!」
間髪入れず寅の足が男を腹部を蹴り飛ばした。投げられた人形のように前から後ろへと弾けて門へ激突。寅は、伸ばした足にさらに力を入れて押し潰し始めた。メリメリと歪な音と男のうめき声があたりに響く。
寅「すっ……らぁっ!」
足を離したかと思えば、小さく息を吐いて足を大きくスイングさせた。前倒れになっていく男を救い上げるように蹴り飛ばした。背後の門にぶつかり、そのまま弾き開いて転がっていく。
「な、なんだ?!」
「どうなってる!」
突然開いた出入り口に、ぶっ飛んでくる門番、何事かと邸内は混乱が広がり、岡っ引たちも呆然と見つめていた。
寅「…………おい、開いたぞ」
岡っ引「ハッ!?み、みな、今だー!」
「「「うおぉぉぉっ!」」」」
積を切ったようになだれ込んでいく岡っ引たち。
用心棒「き、貴様らぁ?!」
岡っ引たちを静止させようとリーダー格の男が出てきたが寅に胸ぐらを掴まれた。
寅「おい、テメェ。どういう了見だコラ」
用心棒「な、なんだ、何のことだ!それより奉行所が、こんな真似をして……」
寅「奉行ぉ?なんのことだ。知らねぇよ、こっちはそこに転がってる奴がよぉ。棒切れを俺にぶつけたんだよ。この落とし前、どうつけるんだっていってんだ。」
まわりの騒動をまるで意に返さず用心棒を捕えて胸元を絞め上げていく。
用心棒「ぐっ、ぐぇっ……!」
一分もしないうちに白目をむいて意識を手放す用心棒。寅はパッと手を放すと地面に転がった男のたもとから財布を抜いて中から数の枚の札を取り上げた。
寅「迷惑料は受け取ったから勘弁してやる。」
用心棒「……」
泡を吹いている男にそういって門から出てくる。当たり屋だとかカツアゲなんてものではない。ほぼほぼ強盗なのだが、それを誰も咎めないし、目も合わせず岡っ引たちはあの男は居ないものとして自分たちの仕事に従事した。
寅「これでいいだろ」
想「……善いか悪いかは口に出さないで置きます。私は右京山さんにあっていませんので。」
寅「ふん、なんでもいい。とりあえず、飯は驕ってもらうぞ。」
想「わかりました。では、後で……」
寅「今に決まってんだろ。」
想「といわれましても、まだ私は職務の真っ只中なんですが……」
寅「中村がいるだろ。」
往水「ええぇっ!?ちょ、私に丸投げというのは……」
寅「……」
往水「あーもー……分かりましたよぉ。」
想「はぁ……往水さん、すみませんがお願いします。」
寅「じゃあ、行くぞ。」
想は往水にその場を任せて小鳥遊堂へと向かうことになった。
寅「別に邪魔はしねぇ。通るだけだ。」
岡っ引「い、いや、通るだけだって……ごほん!今は通行止めだ!」
寅「チッ……通行止めだか何だか知らねぇが通るだけだってんだろ。邪魔するなら……ぶっ飛ばすぞ。」
岡っ引「なっ……邪魔をしているのはそっちだろう!なんだその態度は!それに我々を誰だと!」
寅が拳を固めた。顎へ一発、それで終わり……となるはずだった、そのとき別の声が割り込んだ。
往水「はいはーい、ちょっとちょっとー、そこで何を揉めているんですかねぇ。」
岡っ引「はっ、すみません。この男が……」
寅「往水……お前が居るってのは珍しいな」
往水「あたしだってちゃーぁんとお仕事しますって。それよりも右京山さんこそ何してるんですか……。今取り込み中なんですけど。」
寅「ただ通るだけだ。人ひとり通すぐらいできるだろ。それとも力づくで通り抜けてやろうか?」
往水「あーもー……無茶苦茶なんですから。ちょっください。お奉行を呼びますから」
寅「呼ばんでいい、通せと言っとるんだ。」
往水は寅を無視して人ごみの奥へと下がった。怖いもの知らずなのか、ただ単に自分が相手をするのが嫌なのかは不明である。
少しすると今度は人ごみが割れながら女生徒がひとり近づいてくる。
想「何事かと思えば、寅君でしたか。」
寅「なんだアンタか、荒事みてぇだから朱金が指揮してるのかと思ったら。」
想「こちらは私の管轄ですから。それでどういうご用件で?」
寅「要件とかじゃねぇんだ。通らせろっていってるだけなんだ。」
往水「どうします?」
想「仕方ありませんね。ここで寅君に暴れられてしまっては余計にこじれるかもしれませんし……。」
寅「そういえば何でこんな人を動かしてる。喧嘩にしちゃあ、大げさすぎる。」
自分と悠の喧嘩の時はもっと大騒ぎになったろとツッコミを入れる人間はいなかった。
往水「いやぁ、それは……。」
往水は逢岡の方を見た。話していいものかどうかという確認だ。想は小さくため息を吐いた。
想「二重帳簿です。」
なるほど納得したと言いたげに寅は頭を振った。
寅「けど、だったら何で入り口で二の足踏んでんだ。踏み込みゃいいだろ。」
想「そうなんですが……令状が遅れてまして、踏み込めないんですよ。急がないと証拠を処分されてしまいかねないのですが……。」
寅「ふーん……。これからボケのところで飯を食おうと思って0たんだが、ちょうどいい。逢岡、飯驕れよ。そのかわり、俺が中に入れてやる。」
想「えっ、いったいどうやって。」
寅「いいから任せろ。」
そういうと、寅はその場から岡っ引と門番が睨みあっている入り口の方へと歩いていく。そして肩で風を切るように二人の間に割って入った。
岡っ引「?!」
門番「!?」
何事かと両人が目を丸くするなか、寅の腕に門番が持っていた棒が微かに当たった。
寅「おい、痛ぇじゃねぇか。どう責任取るんだ?」
門番「は、はぁ?!」
寅「人にぶつけといてなんだその態度、てめぇじゃ話にならねぇな。責任者に会わせろ。」
誰がどう聞いても無茶苦茶な要求。あっけにとられていた門番だが、すぐに憤慨して手に持った棒を振りかぶった。
門番「ふざけっ……ぎゃああぁっ!」
間髪入れず寅の足が男を腹部を蹴り飛ばした。投げられた人形のように前から後ろへと弾けて門へ激突。寅は、伸ばした足にさらに力を入れて押し潰し始めた。メリメリと歪な音と男のうめき声があたりに響く。
寅「すっ……らぁっ!」
足を離したかと思えば、小さく息を吐いて足を大きくスイングさせた。前倒れになっていく男を救い上げるように蹴り飛ばした。背後の門にぶつかり、そのまま弾き開いて転がっていく。
「な、なんだ?!」
「どうなってる!」
突然開いた出入り口に、ぶっ飛んでくる門番、何事かと邸内は混乱が広がり、岡っ引たちも呆然と見つめていた。
寅「…………おい、開いたぞ」
岡っ引「ハッ!?み、みな、今だー!」
「「「うおぉぉぉっ!」」」」
積を切ったようになだれ込んでいく岡っ引たち。
用心棒「き、貴様らぁ?!」
岡っ引たちを静止させようとリーダー格の男が出てきたが寅に胸ぐらを掴まれた。
寅「おい、テメェ。どういう了見だコラ」
用心棒「な、なんだ、何のことだ!それより奉行所が、こんな真似をして……」
寅「奉行ぉ?なんのことだ。知らねぇよ、こっちはそこに転がってる奴がよぉ。棒切れを俺にぶつけたんだよ。この落とし前、どうつけるんだっていってんだ。」
まわりの騒動をまるで意に返さず用心棒を捕えて胸元を絞め上げていく。
用心棒「ぐっ、ぐぇっ……!」
一分もしないうちに白目をむいて意識を手放す用心棒。寅はパッと手を放すと地面に転がった男のたもとから財布を抜いて中から数の枚の札を取り上げた。
寅「迷惑料は受け取ったから勘弁してやる。」
用心棒「……」
泡を吹いている男にそういって門から出てくる。当たり屋だとかカツアゲなんてものではない。ほぼほぼ強盗なのだが、それを誰も咎めないし、目も合わせず岡っ引たちはあの男は居ないものとして自分たちの仕事に従事した。
寅「これでいいだろ」
想「……善いか悪いかは口に出さないで置きます。私は右京山さんにあっていませんので。」
寅「ふん、なんでもいい。とりあえず、飯は驕ってもらうぞ。」
想「わかりました。では、後で……」
寅「今に決まってんだろ。」
想「といわれましても、まだ私は職務の真っ只中なんですが……」
寅「中村がいるだろ。」
往水「ええぇっ!?ちょ、私に丸投げというのは……」
寅「……」
往水「あーもー……分かりましたよぉ。」
想「はぁ……往水さん、すみませんがお願いします。」
寅「じゃあ、行くぞ。」
想は往水にその場を任せて小鳥遊堂へと向かうことになった。