ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【2】

ー新宿:茶屋小鳥遊堂(裏)ー

小鳥遊堂、近くに住む学生山口正樹は後にこのときの模様をこう語っている。異常事態だったと…。

えぇ、その日はたまたま早起きしたんですけどね。やけに騒がしかったんですよ。まぁ、またかって思ってはいたんですけどね。

理由?はは、数ヵ月まえくらいだったかな。越してきたひとが居るんですけど、見た目はなんだか怪談に出てきそうな不気味な髪の男なんだけどね。話してみると気さくなひとでさぁ。茶屋をやってて美味い茶を淹れてくれるんだ。
しかも、新さんや可愛い店番がいたりしてさぁ。へへへっ。

おっと、話がそれちゃったな。その店主、小鳥遊悠の旦那と妙な髪型をした男が殴り合っていたんだよ。
え?そのくらいで異常事態にはならないだろうって?

……わかってないなぁ。
いや、確かにただの喧嘩だったら俺も驚いたりはしないよ。あれは喧嘩なんて話じゃ無かったんだ。
妙な髪型の兄ちゃんが殴りかかり、それを小鳥遊の旦那が迎撃する喧嘩っていうには不粋で格闘技っていうには荒々しいぶつかり合いだったんだ。

一度、二度と男と旦那がぶつかったあと、それが起こった。俺もさ最初は……いや、今でもなにが起こったのか理解してない。
ただ、ありのままに起こったことを話すとな…旦那と男が互いに吹っ飛んだ。

ここまではいいな?
その後だ。妙な髪型の兄ちゃんは急にその場で小刻みにステップ(ていうのか?)を始めたんだ。
そしたら一瞬……消えちまったんだ。意味がわからないだろ?俺だってわからないんだよ。ただ、一瞬消えたと思ったらパァンッとなにかが弾ける音がした。
兄ちゃんはその場でステップを刻んで、一瞬消えるたびにパァンッ!パァンッ!って音がするんだよ。

呆然としてて、四発目の音でなにが起こったのかやっと理解したんだ。

あぁ、四「発」っていったのはな、小鳥遊の旦那が殴られた回数だ。

ん?ステップを刻んでたんじゃないのかって?そうだよ。意味がわからない?
話してるとおりだよ旦那は兄ちゃんに殴られてたんだ。

ん?いやいや、解らない人だな…。取っ組み合いになったんじゃなくて……二人の距離は二、三メートルはあった。だが、冗談みたいな話だが兄ちゃんはその距離をいっきに積めて旦那を殴り付けてまた元の位置に戻っていたんだよ。

嘘なんかいってないっての、殴って戻る殴って戻るを繰り返したんだよ。それだけでも俺からしたら異常事態なんだけどな。けど、それ以上にヤバかったのは旦那さ。俺は気がつけなかったけど、旦那はその攻撃を一発受けと残りは全部ガードしてたんだよ。
普通いきなり飛んでくるミサイルみたいなパンチを防げるもんなのかなぁ?




後に多くのひとに語ることになる近くに住む学生の見た異常事態だった。
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