ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【3】

ー大江戸学園:海岸ー

「はぁっ……はぁっ……」

呼吸が荒れる。疲労から、あるいは興奮からか……。眼下に倒し伏せた巨竜を睨む。

空手、柔道、中国拳法……あらゆる武術の鍛錬を行う小鳥遊悠だが実際の勝負の時には組技や投げ技はあまり使わない。それはオールラウンダー型でも打撃に重きを置いているstyleだからである。

だが、あらゆる鍛錬を経験する中で一日も欠かさず組み技の鍛錬を継続していた。

悠は気づいていた。総合格闘技における組み技の重要性に。

誰かが言った。

『組み技の強さは、努力の量に100%比例する。』

素人のパンチが「偶然」プロボクサーに当たることは有るかもしれない。

だが、組み技に「偶然」は存在しない。
存在するのは「必然」のみ。


しかし、地面は砂、後頭部から叩きつけたが効果は薄く道玄は即身体を起こそうとした。

「ふんっ!」

「ぬっ……」

テンプル(こめかみ)へ一撃を叩きこみ。起きあがりかけた道玄の身体が再び地に落ちる。

悠は後ろに沿って道玄の左足へヒールホールドを仕掛けた。しかし、絞めが極まるよりも先に右足の踵で悠の肩を蹴り飛ばし、ずるりと足が抜けて悠の身体は大きく後ろにはね飛びかけたが右手を叩きつけて反動で前へと戻る。

「逃がすかっ!!」

道玄を起こさせまいと首めがけ右手を伸ばしたが両手で掴まれ、さらに巨木のような足で締め付けにかかってきた。メキメリと歪な音を立てて腕が上半身が潰れていく。

ガキンッと歯を食いしばり悠は下半身に力を込めて立ち上がる。当然道玄は絞め潰そうと更に絡めた足を力を込めていくが、自分の顔に影が差す。眼前に向かう足。不格好で無茶苦茶な体勢からストッピングを仕掛けたが、道玄はそれをかわし180度身体を捻り腕ひしぎから腕十字へと切り替えた。

いや、身体を捻るさいにわずかに開いた道玄の身体と地面の隙間に自らの身体を捻じ込んで瞬時にエスケープ。そして道玄の身体を無理やり引き起こして一気に逆サイドを取った。

ようやく自由になった右腕だが、それは道玄も同じこと首の裏を掴まれ地面へと押し付けられた。ガリガリとこすれる額もかまわずに首投げから脱出しようとするもゴリュッと腕が伸びてきて袈裟固めを極められ再度道玄が主導権を握る。

まだまだ力を出せるといわんばかりに道玄の絞めに力がこもるが左右の方の関節を自分で外してずるりと抜けだす悠。

組み技に次ぐ脱出に次ぐ組み技に次ぐ脱出……止まらないッ!止まらないッッ!!止まらないッッッ!!!流れるような攻防が続く!!!

悠がバックを取ればすかさず道玄が極め返す!二匹の龍が絡み合うがごとく!ふたりとも崩れない!!
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