ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【3】

ー大江戸学園:海岸ー

崩れつつある攻防の均衡。その流れを変える一審で悠は大きな攻めに出た。腰切って大ぶりのミドルキックを放つ。

「フッン!」

っと、息を吐いて胸の前で腕をクロスさせ、蹴りを受け止めた。しかし、道玄の巨体が大きく後退する。砂浜という足場も相まっているが、単純に悠の蹴りの威力を物語っている。

間髪いれずに駆けて間合いを詰める悠はスピードの乗った拳を顔面目がけてぶっ放した。

瞬間、道玄の姿がフッと目の前から消えた。巨体をかがめ、スライディングを仕掛けたのだ。カウンターくるぶしキックが悠の足を崩す。

「ガァッ!?」

前倒れになる悠。刹那、道玄の頭突きが腹に炸裂「へ」の字に曲がる体躯。さらに、無防備にさらされた顎めがけ昇竜の如く右拳が突きあがった。

しかし、向かい来る道玄の拳を左の手のひらで側面から押し、右の手のひらで自らの頬を押す。

パシィッっと静かで柔らかな音共に道玄はあらぬ方向の天を貫き、舞うように、くるりと一回転して避ける悠。

「(流され…力動流しかっ!!!?」

崩し、一撃必沈を流され仰天を露わにする龍の化身。

「ここォッ!!」

回転の勢いに身を任せさらに遠心力の勢いを乗せて悠は大きく足を振り、まだ空に浮いたままの道玄へと叩き付けた。

「ぐっ……!!」

左腕を振りおろして直撃を阻止。しかし、地面に足がついていないため力みが足りず重みとスピードの乗った蹴りに道玄は撃ち落とされた。

地面に転げ落ち、龍は、この日、初めて膝をついた。



「「「やったーー!!」」」
「バカなッ!!」

道玄の絶妙なカウンターに対しての流しからの蹴り落としに見学組が声をそろえた、がっ約一名が驚きの声をあげた。それは、寅だ。

「あれは、あの蹴りは俺(キックボクシング)の蹴りだっ!だけど違う!」

寅の技であるが、違う。似て非なるという言葉がぴったりかもしれない。どういうことか、それは動きこそはめちゃくちゃであるが結果としては寅が得意とする蹴りと化している……。

うまく説明ができない苛立ちと気持ち悪さに寅が唸っていると、その肩に大きな手がポンッと乗った。金剛が穏やかな声でいった。

「落ちつけ。」

つづけて摩耶がいった。

「んー、アレだね。どうも、道玄さんにボッコボコにされて悠くんの特性がstyleを完成に引き上げたっぽいね。」

「特……styleの完成、だと?」

寅の疑問にポツリポツリと摩耶が話しだす。
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