ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【3】

ー大江戸学園:海岸ー

「くっそ!」

二連弾針剄をなんとか受け流して、前に出ようとする。しかし、こっちの大きな挙動に比べて道玄は両腕を振るだけで龍剄をぶっ放し続けてくる。

気持ちが上がっていたのに、またも停滞。この空気はマズい……。勢いに乗りかけて出端をくじかれるのは精神的にキてしまう。

もう一度翠龍の毒を使うか?

そのわずかな、ほんのわずかな心の迷いを龍は逃さない。

「フンッ!破ッッッ!!」

向かい来る弾針剄。風の流れを変えて受け流そうとするが、誘導した風のラインから大きく逸れた。カーブを描いて横っ腹に直撃する。

「ごぇっ!!!?」

衝撃吸収ゴムの鎧を着けているにもかかわらずボーリング玉でもぶつけられたような鈍痛。そして、直撃してしまったことでおれの動きが停止する。

「泣くなよ?」

奴は確かにそういった。おれはその言葉に頭の芯がカッと熱くなる……よりも目の前の現実に戦慄した。向かい来る武骨すぎる拳。鉄拳がおれの顔面を撃ち抜いたのだ。鼻が潰れ軟骨が軋み唇が裂け首が歪む。

このまま受けきったら終わる。おれは殴られながら必死に全力で頭を後ろに振って、右足を前へと振り抜いて奴の腕を蹴り上げた。

道玄の拳は上へと、おれの上半身は下へと逸れた。そのまま地面に両手をついて一回転して立ち直った。

「どうだっゴラッ!!」

完全にやられた側のおれだが道玄へ向けて怒鳴った。対して奴は突き伸ばしたままの腕をゆっくりとおろす。つま先で蹴り上げたのにダメージは通っている素振りが見えない。

道玄は鋭い眼光でをおれを睨んでいった。

「少し……甘く見ていたか。いいだろう。小鳥遊悠、お前を敵と見做そう。」

「今まではどう見てたってんだ!!」

語気を強めるおれを気にも留めず左腕を自分の前で大きく回す。

「龍剄気功……九頭竜針剄!」

大きな円の中心を叩くと空気弾が九つ発射される。

「い゛っ!?」

これは無理。おれはがむしゃらに横に走るも竜針剄は追尾してきている。それならば地面をけり九十度方向を変える。何発かは霧散していくが、それでもまだ追尾してきているものもある。弾針剄にここまでの追尾能力を加えられるものなのか?!

おれは立ち止まって受け流す体勢に入ろうとしたが……耳を劈くような音共に突如、弾針剄は引き裂かれて空気の刃がおれを切り裂いた。

こいつは……蒼龍の爪!!
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