ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【3】

ー大江戸学園:海岸ー

今なら避ける事はできるがそうすると、目の前にいる同心に直撃してしまう。だからといって素手で受け止めることも身体に着弾するのも大惨事になることが容易に想像できる。

左近は脳をフル回転して二つの行動をとった。ひとつは愛刀の明丘居士刀(めいきゅうこじとう)を地面に突き刺した。そして、剣魂のシキサイの不可視化能力を切って硬貨能力を全開にした。

金属と金属がぶつかったようなどこか鋭くどこか鈍く重い、表現に困る破裂音。

「くっは!!」

衝撃に押し飛ばされるも間一髪で弾針剄を受け止めることに成功した。

尻もちをついている左近に同心たちが声をかけた。

「だ、大丈夫ですか!?」

「あいたた……ええ、私は何とか無事ですが……。あーあ、こりゃひどい。」

目の前に突き立っている「刀の部分」と自分が握っている「柄とつばの部分」。言葉にするならバッキリとへし折れてしまっているのだ。

ついでにシキサイもオーバーヒートを起こして形を保てなくなり霧散してしまった。

幸い、剣魂のデータは刃の部分ではなく柄の部分に集約してあるのでデリートはされないにしても、左近の斬馬刀こと「明丘居士刀」は大江戸学園のなかでも特注の特注品なので新品が届くまで時間がかかることになる。

同心たちは左近に手を伸ばした。

「立てますか?」

「はいはい、ありがとうございますね。よいしょっと。」

立ち上がって視線を折れた刃の奥へとむける。問題の二人はまだやりあっているらしい。

「あの、刀が折れたぞ」

「あれが直撃なんかしたら……」

動揺が広がるなら左近は両手をたたいて注目を集めた。

「はいはい、皆さん。今見た通り当たったら死にますからね。ここらにいたら危険なんでもっと距離を開けてください。ついでに防御型の剣魂だけでなく、剣魂の保有者は全員出しといてください。あの人らは狙ってるわけじゃないですけど周りのことを気遣ってるわけでもないですからね。」

「「「はっ!!」」」

「他の陣営にも同じように連絡。それと何人か応援を呼んできてください。これは危ないですわ。」

「「「はっ!!」」」

「あと、すいませんけど、この刀、回収しといてください。」

「わかりました。」

同心の中でも体格のいい男が二人で折れた斬馬刀を引っこ抜いて材木でも運ぶようにして移動させていく。

「まったく……ほんと、化け物みたいひとらの喧嘩は災害レベルですねぇ。」

ぽつりとつぶやく左近だが、男二人係で運ばなきゃならない鉄の塊を振り回せる左近も体外だと同心たちは内心思っていた。
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