ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【3】

ー大江戸学園:海岸ー

新発見に感動しているおれを他所に道玄は驚いた様子も見せずに弾針剄を撃つ。それで上等、こっちはさっきほどの恐れはない。右手を伸ばして、空気の弾丸を掬うように逸らして払い飛ばす。

完璧だ。

「ははっ、なんだ、やれるじゃんおれっ!」

遥かに遠かった距離が一気に縮まった気がする。全力前進、歩みを進める。狙うは道玄が弾針剄を撃つより、おれの拳が奴の横面をぶん殴れる距離まで。

「……ふっ」

そんな絶好調なおれを鼻で笑った。

「ずいぶんと余裕だな!」

吠えながらおれは前に踏みでる。道玄は小馬鹿にしたような笑みを引っ込めて、ひと言だけいった。

「それは……儂のセリフだ。」

奴の右こぶしに龍剄が込められ空気が唸る。今までより氣が多く込められている証だが、攻略法は分かっている。怖くはない。

「あっ…」

強きにもう一歩踏み込んだが、おれは一歩後ろに下がった。目に映ったのは道玄の左の拳。そちらにも弾針剄が準備されている……。

「抗ってみろ。」

ボンッ、ボンッと破裂音を響かせて向かい来る二つの空気弾。わずかに間隔がずれていてさっきと同じような受け流し方は無理だ。こっちも同じように両手を使うしかない。

左腕を酷使したくないが、そんなこと言っている場面じゃない。左手を逆手に向けて一発目の弾針剄を捕えた、腰を切って大きく身を振りながら右手でもう一発を捕える。勢いに身を任せてそのままコマのように回って弾針剄をどこかへ流し飛ばした。



そのころ、神姫の忠告を受けて左近は包囲している陣営にもっと離れるように指揮を取り直していた。

「すんません、皆さん。ここらも危ないらしいのでもっと下がってください。」

「は?これ以上?」

同心たちは首をかしげた。以前、寅との喧嘩を見ていた者も多く、下手に近づくのは危険なのは重々承知しているものの……今現在いる位置から注意して見れば二人の男が動いているのがようやくわかるぐらい離れている。

大江戸学園特有の間隔でいえば特殊な剣魂をもってでもいない限り攻撃が届くような距離ではないと思っているのだ。

「あー……皆さんの言いたいことはわかりますけどね。プロの方の忠告なんで……」

もう一度注意しようとしたとき、背後から轟音が迫ってきているのに気がついた。左近が振りかえるとバレーボールサイズの渦巻いた空気の塊が砂塵を巻き上げながら向かってきている。
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