ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【3】

ー大江戸学園:海岸ー

「……」

遂には無言でただただおれの破壊を狙って弾針剄を放つ道玄の野郎。しかし、掴むのが無理となると今はとにかく避けるしかない。

おれは大きく息を吸い込んで全身に酸素を送り込む更に加圧を加える。関節という関節にグチンッという鈍痛。翠龍の毒、発動。

地面を三度蹴り飛ばして自身に向かってくる弾針剄を避ける。

「ぐぶっ……チッ。」

口の端から酸素が漏れる。やはり、いくら大きく吸っても一息程度だと効力も持続時間も低い。今の動きを続けられるのも恐らくあと3秒前後距離を置くべきか……って、考えてる暇はない。

選んだのは前進、空気弾を発射し続ける龍へと猛進する。

「だからどうした?」

冷静に冷徹におれを正確にとらえて弾針剄を発射。直撃コース。おれはガード体勢を取らずに頭を振って上半身だけ右へと曲げた。腰からの筋が悲鳴をあげる、しかし空気弾は首をかすめて抜けていく。避けれた!!しかし、ここでこっちの翠龍の毒も切れた口から空気が吹き漏れる。

「ブハッ!!」

道玄との距離は目と鼻の先……だけど、まだ遠い!

「残念だったな」

本当に容赦がない……。スナイパーのように鋭い狙いを着けて弾針剄が発射された。距離が近くなった分、当然着弾までの間隔も短くなった。翠龍は当然連投はできない。そもそも今現在進行形で空気を吐きだしていて吸う事ができるわけがない。

死の恐怖を感じ取ると同時、おれは別の現象に気がついた。

それは弾針剄の動き。おれの顔面を正確に捉えていた空気弾がわずかに下がっている。道玄が本気で狙っていたのにそんなずれが生じるだろうか……。そして、わずかほんの少しだけ大きくなっている。まるで何かを吸い取って、あるいは巻き込んで膨れたように……。

弾針剄、吐き出されているおれの空気、膨れる……。

不思議な感覚だった。自分の中で使っていないロウソクにに火が灯されるような、空白のピースが埋まる様な不思議な感覚……。

無意識、いや、反射的だろうか。右腕が動く。向かい来る凶弾を「切る」でも「叩く」でもなく「掬う」そして「撫でる」ように斜め下から撫で救い上げたのだ。

触れるだけで肉を裂き、骨を砕き、弾け飛ぶような衝撃が襲ってきた弾針剄が羽でも払うように軽く拭き飛んでいった。

「そうか……そういうことか。」

道玄や神姫が弾針剄を軽く無効化したり弾いたりしている正体がいま分かった。空気の流れ……弾針剄は発射されるとさらに空気を巻きこんで威力を増していく半面、より高濃度に取り込もうとしてしまう。

ならば、風の道を作ってやれば弾針剄はその向きへと流れていく。

一番最初、おれの弾針剄を掴んで投げたわけじゃない、腕を振って風道(ウインドロード)を操作して吹き飛ばしただけだったんだ!!
6/100ページ
スキ