ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【3】

ー大江戸学園:海岸ー

冗談ではない。だからこそ……おれは前に踏みでた。無謀で無茶。それを乗り越えなきゃならない。

肉眼で確認できるほど高濃度の空気の弾丸。引きつける。引きつけてどうするのか?決まっているできることを全部試して、この龍剄気功に対する正解を見つけたらいい。

「うおらぁぁぁっ!」

龍剄で両手で覆い弾針剄を掴んだ。高速回転するボーリング玉でも受け止めたような重さと摩擦。ギャヂリチヂッとおれの龍剄と空気の膜を削り取っていく。

ミンチマシーンに手を突っこんでいる……ようなヴィジョンが脳裏をよぎった。腰を切って弾針剄を投げ捨てる。直後地面に着弾して砂柱が撒きあがる。

これはダメだ、掴めたとしても道玄みたいに遠くへ投げ捨てれないと……。ここでおれは最初見たものを思い出した。

なんで道玄はあんなに軽々とおれの弾針剄を掴み投げれたんだ?龍剄の扱い?経験の差?



悠が苦戦する中、雲水はその様子を満足そうに眺めていた。

「がはははっ。いい、いいぞぉ。」

ひとり盛り上がり気味の鬼をちらりと見てため息をついたのは龍の娘

「どこがですか、勝負にもなってない。」

そうだなっと即答する雲水、だが続けていった。

「勝負にはなってない、けど喧嘩はなっている。」

「一方的なリンチの間違いじゃねぇか?」

他の誰もが口に出さなかったズバリをいったのは寅だった。

「いいや、大丈夫だ。喧嘩にしなっている。道玄は道玄の意地を、悠は悠の意地をぶつけあってる。例え一方的にやられていてもな。」

「喧嘩は勝ってナンボだろ。」

吐き捨てるように毒づく寅だが、雲水は「確かに確かに」と笑ってばかりだった。

そこに全体の指揮を済ませた左近も加わる。

「ああ、皆さん。当然お揃いですよねぇ。で、どうなりました?」

軽い感じ(いつも通り)で話しかけた左近だったが返ってきたのは返事ではなく寅の睨みだった。

苦笑いしていると神姫が言った。

「ちょっといいかしら?」

「あっ、はい?」

「あそこに見えてる人らで、ここらを囲んでるのよね。」

「ええ、バッチリですよ。海の向こうから船にでも乗ってこない限り邪魔は入りませんぜ。」

「……もっと下がらせといた方がいいかもしれないわよ。。」

「……はい?」

「あのあたりはまだ十分、父さんの龍剄の射程内。狙ったりはしないだろうけど流れ弾が当たる可能性もあるわよ。」

「マジですか……。ちょっと、もう一回行ってきます。」
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