ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【3】

ー大江戸学園:海岸ー

指の先から噴き出すような痛みと手のひら全体からヂリヂリと焼ける熱傷、骨と肉に走る軋み。伸ばしている腕が下がる。自分の意思で下げるではない、力を入れているのが辛くなり下がってしまった。

たった一発でこの疲労とダメージ。直撃をもらう事は考えたくない……のだが、休憩する暇を与える気はないらしい。

「ふんっ!!」

間を置かず第弐射。

両手を使って受けても貫通するのは理解した。なら、どうするか、今は両手を酷使したくないおれは左に大きく跳躍した。ヂリッと音を立ててかすめていく弾針剄。

「余裕をもって避けたと思ったのにかすった?!避けきれない!!」

「はあぁっ!」

また撃たれた。今度右だ。反復横跳びのように着地点から元の方向へと避けるが、今度の弾針剄は足元へと着弾する。瞬間、地面が破裂して砂利や漂流物の破片が飛び散ってくる。

「くっそ、殺気の意趣返しかよ」

破片の散弾に意識を取られた一瞬、砂に足を取られた。

「うおおぉっっ!!」

咆哮のような声とともに一回り濃厚な弾針剄を発射される。確実に捉えられてる。避けるのは間に合わない。受けるのも無理となれば……って、考えてる暇もない。

とっさの判断でこっちも弾針剄を発射する。

空気弾と空気弾の衝突。ギィィィンッと耳を劈く異音。だが、おれの放った弾針剄を容易に突破した。直撃寸前に両腕でガード。威力が多少でも分散していたのが幸い、腕を左右に振り抜いて霧散させた。

「どっらぁっ!どうだコラぁっ!」

「なるほど、異様にタフなのは……それか。」

奴はおれの腕に注視した。散り散りに吹き飛んだ両袖の下から覗く腕には真っ黒なゴムが巻かれている。

「へへっ、バレちまったか」

弩躬から借りた戦車のキャタピラの対地雷用に使われる。特殊ゴム。弩躬の言葉を借りるならこれは弓であり鎧。もちろん、おれは手弓を使えるわけじゃない、だが、それでも鎧としては十二分に機能している。

おれは自分の肩口を掴んでぼろぼろになった服を破り捨てた。本気で行く。

「どれだけ優秀な道具に頼ろと貴様の肉は耐えられんぞ」

尋問タイムは早くも終わり告げ、既に何発目かわからない弾針剄が発射される。

この時点、いくつか分かったこと。おれの弾針剄と道玄の弾針剄。全部負けてる。威力、速度、射程、どれをとっても実弾と豆鉄砲ぐらいの差がある。

そして次に左腕、多分、ひびが逝ってる。威力を緩和した弾針剄であってゴムの鎧で衝撃を相当殺しても芯にひびくほどの威力。

はは……冗談じゃない。
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