ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【2】

ー大江戸学園:大通りー

寅「フッフッ……」
タタッ
金剛「…………」
タタッ

寅「……」
ピタッ

金剛「おっと……もうランニングは終わりか?」

寅「普通に俺のスピードについてきたな」

金剛「このぐらいはな」

寅「ふんっ。こっからは普通の通りだ。俺ならともかくアンタみたいなのが走ってたら目立ちすぎる」

ざわざわ……
ざわざわ……

金剛「この街でならもっと目立つもんがあるだろ。馬とか」

寅「馬にのって移動するのはあの将軍だけだ。ここでも普通に馬はおかしい」

金剛「ああ、そうなのか。」

寅「当たり前だ。車こそほぼ走ってないが、チャリやバイクはある。」

金剛「ふーん……。」

寅「……」

金剛「お前と悠の喧嘩見てたよ」

寅「ああ、視界の端に入ったよ。アンタはデカいからな」

金剛「ふんっ。なら、周りのことは目に入ってたんだな」

寅「少しはな。最後の方は……なにも見えなくなってた。ただ、目の前のやつを倒すことだけしか頭に入ってなかった」

金剛「くくっ、うらやましい」

寅「……あ?」

金剛「うらやましいといったんだ」

寅「俺が羨ましい……と?」

金剛「そうだ。」

寅「負けた俺がか」

金剛「そうだ。」

寅「…………」

金剛「…………」

寅「嫌味かっ!!」

怒号、誰しの耳にもつんざいた怒りの咆哮。
もともと、誰の目も引く巨人。そしてその巨人の腰のベルトを掴んで捻り上げ獣のような眼光をした男。

一気に剣呑な雰囲気が広がる。

金剛「さすがに喧嘩馴れしている」

普通なら「胸倉つかむ」というのが鉄則だと思われるが実は胸ぐらをつかむのは威嚇としての意味しかなく、相手を攻撃する上で有効とはいえない。殴るにしても近すぎて力が入らず、投げるにしても相手の両手が生きているので、防がれる。

胸ぐらを掴まれて注意するのは頭突きくらいだろう。

対してベルトやズボンを横からつかんで持ち上げると有効な技がないため厄介。下手に動けば引っ張られバランスを崩してひっくり返されてしまうのだ。

寅「嫌味かときいてるんだっ!」

金剛「俺は悠と喧嘩していつも決着がつかない、横槍が入る。どんな結果であれ決着がついているお前が羨ましいといったんだ。」

寅「……」

それを聞いて寅はベルトから手を離す。

金剛「いいぞ。離さなくて」

寅「なに?」

金剛「お散歩はもう充分だろう。俺達は今の続きをしたほうが……濃厚に話し合える。」

寅に向き合った金剛の巨体がさらに膨れた。

寅「ッ……」

臨戦態勢。
突き刺さる、否、潰されそうなほど圧倒的なプレッシャーに構えさせられたのだ。

金剛「いいぞ、こっ…」

言い終わる間もなく金剛の顔面の中心を寅の拳が打った。
92/100ページ
スキ