ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【2】

ー帰り道ー

悠「もう泣くなって」

新「うん…」

時刻はもう夜中に近かった。おれは銀シャリ号に乗って新の背中に身体を預けていた。

悠「さっきもいったけど、おれの満身だからな」

新「でも……でもあたしは悠の用心棒なのに」

悠「新はよくやってくれてるよ」

新「そうかな……自分じゃわかんない」

悠「解らないことを考えるな。解らないことを考えても頭いたくならぁ」

新「うん……」

悠「今日はどこいってたんだ?」

おれは話題を変えようとたずねた。

新「えっとね、ミッキーのところにいってきたんだ。」

悠「ミッ……光姫さんのところ?お前ひとりで何かごちそうになってきたんじゃあるまいな?

新「ち、違うよぉ。金ちゃんを助けてもらえるようにお願いしてきたんだ」

悠「朱金の助けって、やんごとない身分があーだこーだっていうはなしか?」

新「うん、そうだよ」

悠「光姫さんってそんな力があるのか?」

新「ミッキーはえらいから」

悠「えらいっても、お前…」

新「悠、あのね……」

悠「あー?なんだ?」

新「あのね、わたしね…」

悠「……」

長い沈黙が流れた。
銀シャリ号の蹄の音だけがぽくぽくと夜の町に響いていた。
どうでもいいが新の背中はすこぶる柔らかい。

新「やっぱり、なんでもない」

結局新は何も言わなかった。おれも追求しなかった。
悠「月が綺麗だな」

新「うん、きれいだね」

おれは新の背中越しにきれいな月を見上げながら、何だか微妙な気持ちになっていた。







ー???ー

同じ頃。
とある屋敷の倉にはいくつもの木箱が運び込まれていた。

そしてそれを満足げに見守るのは、天狗御前と天狗党幹部だった。

御前「くくく。これだけの爆薬があればさぞかし派手な花火をあげられるであろうな」

天狗党幹部B「ここにある爆薬で全校集会に使われるメインステージを吹き飛ばすことが可能です」

派手な女「これで全部ですわ。数もしっかり確かめてありますよって」

手下が最後の一箱を運び込み終わるのを見届けると、女は天狗たちに向かって帳面を差し出した。

天狗党幹部C「うむ。代金は全て前払いで払っておったな」

派手な女「ええ。頂いとります」

御前「大儀であったな、越後屋。計画成功の暁にはまた褒美を与えるぞ」

その言葉を鼻で笑う越後屋だが上機嫌の天狗御前はそれに気づかない。

越後屋「それではうちはこれで。もうお会いすることもありまへんやろ」

御前「ん?妙につれないことをいうじゃないか。俺が天下を取ったなら、まだまだこれからうまい汁を吸わせてやれるというのに」

越後屋「ここまではいろいろ商売をさせてもらいましたけど、こんで付き合いはしまいにさせてもらいます」

天狗党幹部B「どういうことだ、越後屋」
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