ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【2】

ー大江戸学園:工場跡地前ー

手を握りあったまま数十秒……。

「……」

「……」

不穏な空気が漂いだすなか、どっらともなく手を解いた。

「やりますね。」

「ふんっ。」

何事もなかったように観戦に戻るキングと鬼の息子だった。



風衝壁が断ち切られ、間合いを詰めてくる寅。

「オラァっ!」

「ぐっ」

とっさに頭を振った。奴の左拳がおれの頬をかすり抜ける。

結局のところやり合うにはインファイトで殴り合うしかないのだ。おれは右こぶしを固めて奴の顔めがけ殴りかかった。

「当たる……がっ?!」

右拳と同時に打ち出した中段左拳が寅の腹を打つ。

「さらにっ、発剄!」

「うぜぇっ!」

触れている左拳から剄を打ち込むことには成功したが本日何度目かわからない顔面にストレートを叩き込まれる。

「ぐっ……はぁっ!」

口の端から泡を吹き出しかけたが拭い捨てて構える寅。

「ブシッ……はぁっ!」

おれも鼻を片方押さえて鼻血を吹き出して拭い構える。

すると、不意に奴が笑った。

「くくっ……」

「……なに笑ってる。」

「楽しいと思ってなぁ。お前もそうだろ!悠!」

三人、三人に分かれた寅が向ってくる。今までの流れなら二体は幻、一人が本体。だがもしかしたら……全部幻の可能性もある。

それでも、とりあえず攻める。確率は三分の一、左右を無視して真ん中のに狙いを定めた。

「くらえっ!」

「チッ!」

三分の一に当たったが寸前のところで当身を躱される。猪突猛進の勢いでかかってきたのに寸前のところで避けるとかどんな反射神経だ。

しかし、気合飛ばしを当てられると思わなかったのだろう。躱した後、ようやく寅の動きが停止した。チャンス今度はこっちからだ。

おれは拳……ではなく、手を開いて振り伸ばした。掌打でも拳打でもなく……つかみ。

寅の手首を掴んだ。

「こんなもん!」

奴は振り払おうとするが、それに合わせておれも腕を振った。離さない。

「ほいっ!」

おれは掴んでいる腕をうえへ引っ張り、それと同時に右足で奴の足を払った。

「くっ!」

片足にヒットしたがもう片方には当たらず飛び跳ね避けられた。

「だから、なんなんだその超反応は……」

「離さねぇならこうだ!」

「ぐぇっ!?」

跳ね上がったついでに鳩尾に寅のつま先が突きたった。

内臓をえぐられる感覚に思わず手を放しかけたが根性でやつを地面に引きずりおろして叩き付けた。
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