ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【2】

ー大江戸学園:工場跡地前ー

力負け。言い訳をするわけじゃないが、利き腕じゃないほうだとやはり単純に力負けしている……。

目に見えておれの肘が曲がり始めた。

「そのままっ折れろ!」

「はっ、はは……ジョー…ダン、じゃねぇ!」

意地を張っても現実問題、押し切られかけている。

「減らず口は……一人前だなぁ!」

拳がさらに捻じ込まれてゴリゴリと骨が削れていくような感覚。

おれは右腕を軽く揺らす。まだ、痺れたまま……だが、このままだと本当に、

「こうなったら、一か八か……。」

「終わりだっ!」

寅の拳にさらに力が乗った瞬間、おれは自身の拳を解いて力を抜いた。身をかがめて前進する。

「とったぁっ!」

二の腕のあたりまで奴の拳に皮膚を抉られたが、寅の懐に潜り込むことに成功した。

そして左腕で奴の胴を抱きしめる。

「てめっ!離せ!」

ガッガッと肘が肩甲骨のあたりに落ちてきて痛い…。それでも慣れない態勢だからだろう。力の入りが不十分……。

これなら、いける!

「どっせえぇぇぇい!」

寅の脇腹をひっつかんで、そのまま捻りながら投げ落とす。

というか、自分ごと叩き付けてやった。

「ぐばっっ!」

「っぅ……!」

無理やり叩き付けた結果、おれ自身にも衝撃が突っ走ってくる。まぁ、おれにここまで響いてるってことは寅には相当なダメージが……。

「このっ!」

「ぐぇっ!」

突っ伏したままで裏拳を叩き込まれた。鼻に直撃して、寅の上から飛び退いた。

「やってくれるじゃ、ねーかっ。」

立ち上がってベッと唾を吐きだした。まだまだ元気なご様子だ。

おれは右手を開いて閉じてを繰り返した。もう大丈夫だ、動く。

「ちっと、本気出させてもらうぞ」

上着を引っ掴んで脱ぎ捨てる。

「てめーはいつも本気になるのがおせぇんだよ。」

獣が動く。

「そんなことはない、よっ。」

飛びかかりと同時に殴り掛かっても来たが風の衝壁で受け止める。

ガィン!

「すぅ……おおぉぉぉぉ!」

ガガガガガガガ!
ガガカガガガガ!
ガガガガガガガ!

某オラオラさん並のラッシュ。

「ちょ、マジか……!」

力技で風衝壁が押し返されてる。
片手ではだめだ、両手でこっちからも押し返す。

「いつまでも同じ技が通じると思うなっ!」

「っ!?」

寅は腰をひねり鋭角に放ったアッパーがやすやすとおれの風壁を切り裂いた。
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