ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【2】

ー大江戸学園:工場跡地前ー

一番最初に放った広域高射程の蒼龍剄が二人の戦いを見守っていた雲山たちの方へ飛んでいく。

「おっと」

直撃寸前に雲山は両手で龍剄を挟み潰し、灯は棍で弾き、豊久は太刀で叩き斬る。

「ここまで飛んでくるんだ。何だかんだでちゃんと龍剄練れてたんだね。悠君。」

「うむ……威力は上々ですね。」

「空気を斬ったのは初じゃ。しかし、これではひとは殺せん。」

抜いた太刀をくるりと回して鞘に納める。

「雲山さん!」

「ここでしたか。」

「風君、雷君。ご苦労様です。」

「「いえいえ、それより……」」

三人の向いている先で戦っている二人。

「ええ、どうやら、ああいう事になってしまいました。」

「どうなったら」

「ああいう流れに」

「「なるんです?」」

風と雷は同じ動作で首をかしげる。

「……さぁ、私には見当がつきませんが、楽しそうなので問題ないでしょう。」


~~


三連の蒼龍爪。避けるのは困難と、寅のとった行動はシンプル。

「はぁぁ!」

ショートアッパーから左ジャブ、右ジャブとコンビネーションで蒼龍爪を叩き砕いた。

「マジか?!」

「いくら速くても軽いんだよ!」

止まっていた進行が再び始まる。
さらに、直線じゃなく左右ジグザグに移動してくる。

「くっそ……狙いが定まらない……。なら、大振りに……」

「遅ぇ!」

前進してくる寅の姿が二つに増える。気合飛ばし……。片方は幻、実体はどっちだ……いや、考えても仕方ない両方だ!!

「特大蒼龍の爪!!」

右足を太ももから大きく振りだして衝撃の刃を打ち放った。広域でならどっちにも当たる。例え実体にの寅に避けられたとしても判断ができる。

そう思った矢先、ふたりの寅に龍剄が直撃……と、同時に両方が霞のようにかき消える。

「なっ……」

「多重気合飛ばし、だ。」

左側面から寅の拳が見えた。
とっさに右腕でガードする。ゴッと、肉と骨に響く一撃。

「痛っ……。なろっ!」

反射的に左拳を放つが、軽々に避けられた。

「遅ぇ、遅ぇ、遅すぎんだよ!!」

おれの一撃を避けてカウンターに三発ぶつけ返してきた。

横面、肩に胸……こいつ、ここまで拳を速く打てるのかよ。このままだと、マズい。おれは、顔を両手でガードしつつ膝を打ち上げた。

しかし……

「読めてるんだよ!」

「ぐぁっ!」

おれの膝にスピードが乗る寸前に肘を振り下ろして太ももを穿たれた。強制停止して身体がガクンッと下がった。
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