ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【2】

ー大江戸学園:工場跡地前ー

吉音「とぉーちゃーく。」

詠美「報告を聞いてきたけど……予想以上の現状ね」

辺り一面には壊れた木偶の残骸。

想「吉音さんに徳河さん!」

詠美「想さん、ご苦労様。現状を聞かせてもらえるかしら」

想「はい。敵の首領と思われる風魔を包囲していましたが、逆に包囲される形で木偶が出現。その後は、さらにそれを囲うように火盗改の援軍が入り……」

詠美「乱戦状態になってしまったと……」

想「はい…。幸い、町の方には被害がないですが」

詠美「わかりました。ところで、風魔は?」

久秀「逃げたみたいよ」

吉音「あ、ひーちゃん」

想「松永さん、ご無事でしたか」

久秀「当然でしょ。優秀な用心棒を用意しておいたしね。」

宗矩「あはは。そうでもないですよ。」

吉音「誰?」

久秀「宗矩(むねのり)よ。久秀の古い友人」

宗矩「まぁまぁ、おばさんのことはいいじゃない。それよりも、なーんか、妙なことになってるよ」

吉音「妙なこと?今以上に?」

宗矩「あはは。確かにね。」

久秀「それでどうなってるの?」

宗矩「はいはい。小鳥遊の坊やと右京山の坊やが闘ってるんだよね。」

「「「は?」」」

宗矩「いや、だから、坊や二人が闘ってる」



~~



「はぁぁ!」

細かなショートジャブが弾丸のように放たれる。

おれは地面をしっかりと踏みしめて両腕を前面に構えてガードする。スピードを重視したジャブは躱すことは困難。下手に避けるよりは受けた方がまだマシ……。

ただ、当然受け続けるのも得策ではない。速さを重視していて軽い打撃とはいえ、打撃は打撃。殴られ続けて肉が腫れ骨が軋む。

「ぐっ、ぅ……。」

だが、今は耐える。打撃の切れ目を探るために……。

「ふっ…」

僅かに寅が笑ったような気がした。

次の瞬間、打撃の雨が止んだ。硬く固めた拳が風を切って向かってくる。ガードごと壊すつもりのストレート。

「ここだぁ!」

おれはガードを解いて、右手の甲で向かってくる寅の拳を受け流し、カウンターに左拳を叩き込む。

「このぐらいっ!」

目の前にいた寅の姿が右に逸れていく。おれの受け流しに力負けするほど寅は軽くはない、ということは……。

「とったぁ!」

「っ!!」

おれは大きく開脚して頭高を一気に下げた。頭すれすれに何かが過ぎて髪の毛数本を抉りそっていく。

足先、あんな無茶苦茶な角度から蹴りを浴びせてきたのだ。判断が遅れていたら今頃、頭蓋に穴があいていたかもしれない……。
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