ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【2】

ーかなうの養成所ー

新「あたしのせいで、悠にケガをさせちゃった…」

悠「いや、この髪に着いてる血は怪我じゃないから平気だって」

新「悠にケガをさせちゃった……」

悠「新!」

新「……!?」

悠「お前のせいなら、おれは全力でお前を批難してる。っか、悪いのは天狗党だろ?」

新「……うん」

悠「今度あいつらが現れたら、派手に凝らしめてやってくれ。それがお前の仕事だろ?」

新「ゆ……悠っ!!」

新の奴は急に抱きついてきた。

悠「おいおい……って、痛っ!?」

新がおれの上半身をがくがく揺らすもんだから、むちうちの首に響いた。

新「ご、ご、ご、ごめん!!」

悠「もういいから、謝るな。おれは謝るのも謝られるのも嫌いなんだ。……っか、泣くな!お前の涙と鼻水のせいでシャツの肩がびちゃびちゃだよ…。」

新「うう……ごめんなひゃい」

かなう「口の中は切れてたけど、歯は折れてなかった。殴られて軽い脳震盪(のうしんとう)を起こしたんだろう。ようするにたいしたことない。手当ても済んでる。養成所はいつも場所が足りないんだ。お前らはとっとと帰れ」

悠「へいへい…(厳しいわぁ)」

新「ホントに悠は大丈夫?」

かなう「バカ、私の腕を信用しないのか?」

新「ごめんなさい」

かなう「まぁ、こいつは見た目より鍛えてあるみたいだし治療もほとんどいらなかった。けど、とにかく今は帰れ。で、今度はちゃんと送ってやるんだぞ」

新「はい…」

悠「いいよ。ひとりで帰れる」

かなう「自分で自分の身を守れなかったくせにか?」

悠「うむむ。今はなにをいっても言い訳にしかとられないか…」

「おーい、かなうー。さっきの…」

そこに現れたのは、さっき助けてくれた金棒少女だった。

「おお、無事だったか。えっと……」

悠「小鳥遊悠だ。さっきは助かった。ありがとうな」

新「悠を助けてくれてありがとう…」

「礼なんかいいっていいって。たまたま通りがかったところに悪党の臭いがしたんでね」

悠「へぇ…」

かなう「あ、こいつは鬼島桃子。南町の長屋で自由気ままに暮らしてる浪人だ。ま、要するに穀潰しだな。」

桃子「だれが穀潰しだ!ちゃんと便利屋として働いてるんだぞ!」

かなう「ああ、分かった分かった。声がでかい。ここは養成所で他の患者だっているんだからな」

桃子「おっと……これは悪かった」

悠「桃子……鬼島桃子って学園二大剣士の?」

桃子「えっと……いやまぁそうなのかな?」

はにかむように認める鬼島。

悠「なるほど、それは強いはずだ」

新「そんなに?あたしも見たかったなぁ」

悠「今度、礼するからうちの店に来てくれ。」

桃子「店に?」

悠「おう。南町の「小鳥遊堂」って茶屋」

桃子「あ、最近開店したばかりの茶屋だよな?」

悠「ああ、そうだ。」

桃子「なら知ってるぞ。あたいの家はそのすぐ近所だよ」

悠「そうなんだ。だったら是非来てくれ。」

桃子「おう、今度お邪魔させてもらうぜ。」
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