ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【2】

ー元発電施設:内部ー

風魔「ぐぉ……ぉっ」

大太刀の刃が数本の機械義手をまとめて叩き斬り落とした。

豊久「チィッ、仕留めそこなった!」

狙って義手を断ってのではなく、本当に狙っていたのは風魔本体らったらしい。

つまり、逆を言えば風魔は完全な奇襲攻撃を間一髪で避けたのだ。

機械義手を断たれた結果、バランスが崩れて風魔は地面に落ちていく……が、ベリリッと胸元から服を突き破って二本の腕が伸びて自分を抱くように肩を掴むと何かを引きちぎった。

どうやら機械義手を身体に固定していた器具か何からしく脱皮でもするようにベロリっと脱ぎ捨てて、着地する。

風魔「…………」

ついに生身の身体を現した風魔。やはり人間であるらしく腕の数は二本だ。

灯「くっ!せぃっ!」

動けるようになった灯が即座に棍を拾って振るう。

風魔「ふはっはっ。」

トンボを切って灯のひと振りを避ける。しかも、笑いながらだ。タンッタンッと二度三度とバク転で距離を開けた。

悠「逃げる気か!」

風魔「あったあった。」

風魔は機械義手が握ったままの鉄の棒を拾い上げると、その中から八双だけを抜き取ると即座に組あげる。

長さにして……一メートル前後だろうか、バトンよりは少し長く、今まで振り回していた物よりは短い片手で震えるサイズだ。

灯「はぁ……ふぅ……」

ふと、灯を見ると酷い汗だ。それも尋常ではないほどの滝汗が綺麗な顔を伝っていっている。

悠「灯、もしかしてお前……なんかヤバいダメージ負ってないか?」

灯「大丈夫……です。」

そうはいうものの棍を地面に突いて立っている。

悠「おい」

雲山「灯くん、無茶は良くない」

おれが止めるより先に雲山が肩を貸した。いや、抱え上げたという方が正しいな。

豊久「後は任せい!」

寅「そうだな。こっちはまだまだ元気なのがいるんだ」

じりじりと戦闘狂が風魔との距離を詰め始める。

風魔「興が冷めた」

寅「……あ?」

風魔「灯が来ないなら興ざめだ」

豊久「ぬかせい!」

飛びかかるように豊久が抜身の刀で切りかかった。

風魔「ふんっ」

避けるわけでなく八双棍で正面から受け止めた。しかし、打ち合ったはずなのに激突音は低い。

豊久「おぉっ……お?」

風魔「力だけは一人前、か」

そして次の瞬間、一瞬にして豊久の身体が空を舞って風魔の真後ろに投げ飛ばされた。

悠「豊----!」

豊久「なんのっ!」

頭から投げ飛ばされたがすぐに立ち上がる。

悠「あ。元気だ…」

寅「お前と一緒でアレも死なないな」
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