ｰ元発電施設:内部ｰ

灯「ふっ……はっ。」

楓馬の正面を陣取り迫りくる機械義手の猛攻を棍で受け流し続ける灯。

風魔「いい動きだ」

灯「負けるわけにはいきませんから……!」

風魔「ならば抗い、反旗を記せ。」

上下左右の十字に義手が襲いかかる。

灯「くっ」

寅「ここだっ!」

豊久「せえぇぇぃっ!」

左右の二本は豊久と寅が叩き伏せる。しかし、痛みというものを感じない機械義手だ。叩き伏せたところですぐに押し返し、二人にも襲い掛かる。

残った二本はもちろん灯を狙ったままだ。

灯「せいっ!」

棍を縦に回転させて捩じるように払い、一本を踏みつけた。そこへ目がけ棍を突き立てる。

ガィンッと硬いもの硬いものがぶつかる音がするも棍にも義手にも傷はついていない。

風魔「見事、見事。だが、無意味」

弾き飛ばした腕が大きく弧を描いて灯の横腹に突き当たった。

灯「くっ!!」

棍をばらして間一髪のところで打撃を防ぐものの体重の軽い灯はそのまま押し飛ばされてしまう。

風魔「くくっ、はははっ!」

同じように四方で応戦している、他の者たちも弾き飛ばした。

想「くっ!一本一本がまるで意思を持っているようですね……!」

朱金「うぜー!本体はあいつなのに何でこっちまでみえてるんだよ!!」

想「忍のなせる業ということでしょうか」

朱金「あんな忍者がいるかよ!!」

想「銀二さんのことを思えば……なくもない気はしますが」

朱金「……あれは例えに出すなよ」

風魔「余裕だ、な」

ほぼ背後にいるはずの朱金と想の会話が聞こえているのか、風魔がそうつぶやくと義手が伸びてくる。

朱金「ええい!バケモンめ!!」

想「来ますよ!」

目の前寸前まで伸びてきた義手がピタリと動きを止めた。

風魔「む?」

悠「いっせーーーのぉぉぉっ!」

魁人「うおぉぉぉぉ!!」

雲山「はあぁぁぁぁ!!」

一本の腕を三人で引っ掴み同時に大きく振りかぶった。三鬼の力で引っ張られた結果、風魔の身体がほかの機械義手が勢いよく空を舞う。

悠「このまま叩き付けてやる」

さらに力を込めて背負い投げの態勢にとる三人だが、風魔は慌てた様子もなく天井をつかんで投げ飛ばされるのを阻止した。

風魔「今のは驚いた。しかし、無意味」

豊久「それは!」

灯「どうでしょうか!」

引っ張られ伸び切った機械義手に豊久の大ぶりの一撃と全体重を乗せて棍を突き立てる灯。

一点集中の強撃を二つ、さすがの機械義手も耐え切れなくブチチチッと音を立ててそこから引きちぎれた。

風魔「むっ……。」

伸びたゴムが伸縮するようにちぎれた腕が暴れながら元に戻る。

悠「よっし!まずは一本!」

魁人「悠さん、張り切りすぎないで下さいよ。死んじゃいますから」

雲山「鬼状態でなら力負けはしないな。」

風魔「くくっ、はははっ。文字通り一本取られたか」

ちぎれた腕をほかの手が掴むと肩から引っこ抜いて投げ捨てる。一本壊れたところでやはり影響はないらしい。