ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【2】
ー大江戸学園内ー
だが、おれは地面を踏みつけた。
倒れそうになる肉体を両足で固定する。ガクガクする奥歯を噛み締めた。
開ききった手のひらをこぶしに作り替えて、がむしゃらに打った。
「なっ!?」
こぶしに伝わるなにかを殴った感触。
狙ったわけでもない、ただだだ偶然だが右京山の顔面にヒットしたようだ。
歪む視界に吹っ飛ぶ右京山を見たが、ヤツはすぐに立ち上がり、おれは力みと脳の揺れ響いて膝をついてしまう。
「先生!くそ、お前らやってしまえ!」
大人しくしていた天狗達が向かってくる。ここまでかと、覚悟を決めた瞬間……雄叫びが響いた。
「おりゃああぁぁ!」
続いて空を割く轟音。
そして突風。
「ぐわあああっ!!」
最後に天狗党の悲鳴が聞こえた。
「な、なんだ?」
歪む視界の焦点を合わせるとおれの目の前には吹き飛ばされた天狗の一匹がぶっ倒れている。
「ひとーつ、人気のない夜道!ふたーつ、不審な天狗面!みーっつ、見つけた悪党共を!」
そこにはでたらめな数え歌を歌いながら、身の丈ほどもある金棒を軽々と振り回す、野性味溢れる少女の姿があった。
金棒が風を切り轟々と唸り、その迫力にじりじりと後ろに下がる天狗たち。
「退治てくれよう……桃子さん!」
「ひっ、ひいいっ!?」
「うわあああっ!」
数え歌のクライマックスとともに振り下ろされた一撃でまとめて二、三人が吹っ飛んだ。
「こ、この……覚えてろ!」
最後に残った一人が捨てぜりふを吐いて逃げ出した。しかし、天狗のいく手を巨大な物体が阻んだ。吹き飛ばされて気を失う天狗。
「悠!」
聞きなれた声が耳に届く。
「あぁ、やっぱりあれは銀シャリ号か……」
新が銀シャリ号の背中から飛び降りるのが見えた。
「悠!悠!」
新がおれの名前を呼んでいる。声が涙で緩んでいた。
「なんだ、泣くなよ。大丈夫……だって」
急に意識が遠退いた。
ー???ー
悠「う……ううん」
かなう「気がついたか?」
首をひねると白衣が見えた。同時にビキリッと痛みが走る。
悠「あいたた……かなうさん?」
かなう「ああ。そしてここは養成所だ。頭が血まみれだと思ったが傷ひとつなかったぞ。首はむち打ちだがすぐ良くなる。安心しろ」
顎を打たれて気を失ったんだ。
悠「かなうさん、新のヤツは?」
かなう「新?ここにいるぞ」
首をひねって見ると、そこには唇を噛んで瞳いっぱいに涙をためた新の姿があった。
新「ごめんね……ごめんね、悠。あたし、用心棒なのに守ってあげられなくって……」
悠「いや、おれの慢心だな。天狗どうこうじゃなく……」
新「ううん、あたしがちゃんと送っていけばよかったんだよ……」
悠「もう、済んだことだ。これ以上気にするなって」
だが、おれは地面を踏みつけた。
倒れそうになる肉体を両足で固定する。ガクガクする奥歯を噛み締めた。
開ききった手のひらをこぶしに作り替えて、がむしゃらに打った。
「なっ!?」
こぶしに伝わるなにかを殴った感触。
狙ったわけでもない、ただだだ偶然だが右京山の顔面にヒットしたようだ。
歪む視界に吹っ飛ぶ右京山を見たが、ヤツはすぐに立ち上がり、おれは力みと脳の揺れ響いて膝をついてしまう。
「先生!くそ、お前らやってしまえ!」
大人しくしていた天狗達が向かってくる。ここまでかと、覚悟を決めた瞬間……雄叫びが響いた。
「おりゃああぁぁ!」
続いて空を割く轟音。
そして突風。
「ぐわあああっ!!」
最後に天狗党の悲鳴が聞こえた。
「な、なんだ?」
歪む視界の焦点を合わせるとおれの目の前には吹き飛ばされた天狗の一匹がぶっ倒れている。
「ひとーつ、人気のない夜道!ふたーつ、不審な天狗面!みーっつ、見つけた悪党共を!」
そこにはでたらめな数え歌を歌いながら、身の丈ほどもある金棒を軽々と振り回す、野性味溢れる少女の姿があった。
金棒が風を切り轟々と唸り、その迫力にじりじりと後ろに下がる天狗たち。
「退治てくれよう……桃子さん!」
「ひっ、ひいいっ!?」
「うわあああっ!」
数え歌のクライマックスとともに振り下ろされた一撃でまとめて二、三人が吹っ飛んだ。
「こ、この……覚えてろ!」
最後に残った一人が捨てぜりふを吐いて逃げ出した。しかし、天狗のいく手を巨大な物体が阻んだ。吹き飛ばされて気を失う天狗。
「悠!」
聞きなれた声が耳に届く。
「あぁ、やっぱりあれは銀シャリ号か……」
新が銀シャリ号の背中から飛び降りるのが見えた。
「悠!悠!」
新がおれの名前を呼んでいる。声が涙で緩んでいた。
「なんだ、泣くなよ。大丈夫……だって」
急に意識が遠退いた。
ー???ー
悠「う……ううん」
かなう「気がついたか?」
首をひねると白衣が見えた。同時にビキリッと痛みが走る。
悠「あいたた……かなうさん?」
かなう「ああ。そしてここは養成所だ。頭が血まみれだと思ったが傷ひとつなかったぞ。首はむち打ちだがすぐ良くなる。安心しろ」
顎を打たれて気を失ったんだ。
悠「かなうさん、新のヤツは?」
かなう「新?ここにいるぞ」
首をひねって見ると、そこには唇を噛んで瞳いっぱいに涙をためた新の姿があった。
新「ごめんね……ごめんね、悠。あたし、用心棒なのに守ってあげられなくって……」
悠「いや、おれの慢心だな。天狗どうこうじゃなく……」
新「ううん、あたしがちゃんと送っていけばよかったんだよ……」
悠「もう、済んだことだ。これ以上気にするなって」