ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【2】

ー元発電施設:内部ー

豊久「せえぇぇぇい!」

ガイィィィン!っと、豊久の叫び声にも引けを取らないほどの金打音。

その音からはどれだけの力で打ち込まれたか想像がつかないほどだが……

風魔「おお、怖い怖い。」

不気味に笑みを浮かべ斬撃を受け止める風魔。

豊久「ぬしゃ、ホン(本当)に人か?」

刃引きしてあるとはいえ、渾身の力で振られた大太刀の一撃。籠手で受けても骨を砕きかねないものを、時折手のひらで受け止める風魔に豊久は純粋に疑問をぶつけた。

風魔「どうだろうな。だが、それはこちらが問いたいが?」

怪しむとか恐怖するとかではない。ただ、ただ純粋に戦闘し、純粋に質問する豊久もまた、はたから見れば人ならざるものといえるかもしれない。

豊久「おいはひとじゃが、戦場に出たら人に有らず鬼よ。ただただ戦場で暴れる鬼ガキじゃ!」

話の最中にも空気すらも切り裂きそうな一刀断ち。風魔の頭上から真っ二つにする……がっ

風魔「くくっ、まったく、人の世は愉快よ。」

目の前では、はらりと布が床に舞落ち、豊久の背後に立つ風魔。

豊久「ふんっ!」

驚きもせず脊髄反射に刀を横振りに一回転。風魔はその刃をサマーソルトでひらりと躱す。

風魔「見事、見事。」

豊久「かかっ、忍術か。初めて見たわ!しかも、その体躯でなんという軽業。見事、見事じゃ!」

まるで互いを褒め合うように会話する二人。しかし、どっちも殺気が溢れ、虎視眈々と殺す機会を狙いあっている。

侍に置いて命のやり取りは一瞬。されど、豊久は侍の中でも特質。殺気を殺さない。殺せないではない、殺さないのだ。さらに死地へと飛び込んでいく。異質なのだ。

風魔「なれば……こういうのはどうだ。」

風魔は腕を高く伸ばすと一気に振り下ろした。同時に腕が大きくたゆんで鞭のように豊久を打つ。

豊久「なんぞ!」

さすがといえる反応。刀で伸びてきた腕を弾く。

風魔「くくっ。」

豊久「ぬっ!」

弾いた刀に違和感、何かに引っ張られている。飛んできたのは腕、となればその先には手がある。風魔の手が刃を掴んでいるのだ。

風魔「いい刀だ、な」

豊久の力に負けず劣らず伸びた腕で刀を奪おうとする風魔。

豊久「そんなに欲しかったら。くれてやっど!」

引っ張り合っていた刀を投げつける。急に離されたことにより伸びきっていた腕が自信に向かって飛んでいく。

風魔「ならばもらっておこう」

しかし、掃除機のコードのようにたわみが元に戻り目の前でぴたりと停止した。

豊久「気が変わった!やらんど!!」

風魔「ぐっ!!」

刀に気を取られ過ぎて豊久の進軍に気が付くのが一瞬遅れた風魔。飛び込むようながむしゃらな勢いで殴りつける。

豊久「おっしっ!!」

殴り飛んでいった風魔を見て、腕を突き上げる。さらに、そこに落ちてきた刀をしっかりとキャッチした。

風魔「……ぺっ、やりおるわ」

豊久「おうおう、血が出た。やっばり人間ぞ。奇妙な術をつがっても人間なら倒せるが!!」

勝利を確信したように豊久は大きく笑った。
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