ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【2】

ー元発電施設:内部ー

豊久「降りてこいち。いつまでも高いところばおってもどうにもならんぞ」

風魔「くくっ」

風魔は低く笑うと、機材の上から飛び降りて豊久の前に立つ。細く長いというより分厚くでかい、ガッチリとした身体つきの豊久が一回りほど小さく見えるほどだ。

寅「あの野郎……。いきなりたたき切りやがった」

灯「突発的戦闘能力はとても高いですね。豊久君は。」

想「そのようですね。我々もはやく倒してしまいましょう」

寅「ああ……けど、正直やりにくい。」

木偶人形改【……】

スピードこそはボクシングスタイルの寅が有利だが、武術特有の受けと距離を恐れぬ人形という性質。それらに加えて鋭利な鉤爪と龍剄もどき。

攻防一体で隙がない。

灯「本来なら赤龍の力は地、足を浮かせれば発雷は防げるのですが。機械仕掛けとなると自由自在なのがネックですね。」

想「島津さんのように一瞬で倒す……のが一番なのでしょうね。」

灯「あれは常人には真似できないでしょうけどね」

寅「なら、ヒット&アゥエイ。当てられずに当てていけばいい」

木偶人形【……】

すり足で距離を詰めにかかる木偶、対して寅は自ら敵の死地へと踏み込んだ。左右から挟み込むように鉤爪が閉じる。

寅「そいっ!」

上半身を背後に大きくそらして鉤爪を紙一重で避け、右足で木偶の腹部を蹴り飛ばす。

木偶人形改【……】

当然、木偶は痛がりはしないが大きく後退する。

寅「せいっ!!」

蹴り上げた足を地面に落とし、その反動で上半身を起こした。さらにそこから半回転し、木偶の頭部めがけハイキックを当てた。

木偶人形改【……】

連続の攻撃に木偶も反応が遅れ始める。一度攻勢に出れたなら寅のスピードは容易に木偶の出鼻を凌駕する。

寅「っと……!」

しかし、ここで寅は飛び退いて距離をあけた、瞬間バチチッと放電した。

どうやら爪に発雷の仕掛けがあるらしい。

想「さすが寅さん……。あの木偶にも動きが対応していますね。」

灯「想さんも油断しないようにしてください。」

想「はい、灯さんもご注意を」

灯「はい……そろそろ私も、本気で行きますから」


豊久「……」

風魔「……」

豊久「なんぞ、こうして対してみればみるほど、人の気配がせんな」

風魔「くくっ、我は人に有らず。混沌の風」

豊久「なにをいうとーかわからん。じゃが、化け物でも人でも機械でも断てば同じじゃ。」

風魔「風は斬れんぞ」

豊久「斬ってみんとわからんじゃろ。なんでも試してみるんが島津の男じゃ!」

豊久の横薙ぎの一刀。
風魔はそれを両腕でガードする。ギャギギッと硬いもの同士がぶつかる歪な音が劈いた。

風魔「なんという馬鹿力、か。」

豊久「硬い籠手じゃ、な。」
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