ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【2】

ー大江戸学園内ー

「ふっ……危ない、危ない。もう少しでいいの貰うところだった。さすがだな、秋葉原闘路ランキング№1」

余裕の表情で奴はいう。
おれは打たれた左の頬を擦りながらいった。

「大したことねぇよ。No.1なんて形だけだし。っか、アンタ…ここの生徒じゃないみたいだけど……名前は?」

「右京山。右京山(うきょうやま)だ」

「右京が名字で名前が山?」

「右京山が名字だ。」

「じゃあ、名前は?」

「別に答えてやる義務はないだろ」

なんだかやりにくい男だ。無駄だとは思ったけど一応聞いてみた。

「んじゃ、名前は答えなくてもいいから、このまま、さよならってことにならないか?殴ったんだし、気は済んだだろ」

右京山は首を左右に振った。わかっていたけど、答えはNOらしい。

「気が済むとかは俺の判断じゃなくあっちの天狗の判断だ。」

おれは視線を左右に振った。両方の道は天狗達が立ち並んで肉のバリケードを作っている。
いくら逃げ足に自信があるおれでも目の前の右京山を突破して、天狗共を掻い潜るのは不可能だった。

ヤツらは気も済んでない上にどうあってもおれを逃がさないつもりらしい。

おれがため息をつくと、右京山がいった。

「っーか、正直いえば俺もこういう形でじゃなくちゃんとタイマンでが良かったんだが……。まぁ、しかたないよな。俺もお前も喧嘩屋だ。さぁ、構えろよ。小鳥遊。」

どんな形の出会いでも喧嘩しなくちゃならないのは間違ってる気がする……だが、このままではリンチになるだけだ。

おれは両手を顔の高さに挙げ、肘を折りファイティングポーズをとった。
薄ら笑いを浮かべていた右京山の顔が誰の目から見ても解るくらい不機嫌に歪む。

眉間のシワなんか楊子でも挟めるんじゃないかというくらい深い。
おっかない顔だ。

「…なんのつもりだ?俺にボクシングでやろうってのか?」

「目には目を、歯には歯を…ボクシングにはボクシングってな。」

「なら、勝手に死ね。」

ヤツはそういって、再び蛇行するような動きで、数メートルは有った距離を一気に縮めてくる。
おれの背中は既に壁に触れているのでこれ以上は下がれない。
だから、おれも打って出た。

ヤツはさっきと同様におれのふところに潜り込んくる、読み道理だ。

蛇行で前のめりになり、ボディジャブかアッパーを狙うのがヤツのパターン。ベッタベタのインファイター。

おれはカウンターで合わせるようにヤツの横面に左フックを仕掛けた。

左のこぶしをしっかりと握りしめた。
踏み出した右足を軸に、腰を軽く落とて右に捻り切り戻す。
遠心力が掛かり、こぶしを重心に腕から肩が連動して筋肉のすじが伸びていく。
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