ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【2】

ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

悠「……誰も来ない」

久秀「お客が来ないのはいつものことでしょ」

伊都「あ、悠くーん。暇なんでしたらマニキュア塗ってくださる?」

悠「…………百歩譲って久秀がいるのはわかるがなんで大神さんがいるの?」

伊都「拝神夜ですわ」

悠「大神さん」

伊都「一度ちゃんと調教しないといけないみたいですわね。」

久秀「久秀が順を追ってやっていってるのだから横やりはいれないでほしいわね。」

悠「順を追って調教されてるのおれ?!」

左近「ちょいとお邪魔しますよ!」

悠「いらっしゃい」

左近「……え?」

悠「なんだよ」

左近「普通に招かれたもんで…」

悠「客なんだろ?」

左近「えーと……」

悠「客じゃねーなら有り金おいてでていけーーー!」

左近「わー、無茶苦茶だ」

久秀「うちの馬鹿が悪いわね。何か御用?」

左近「よかった話が通じるひと……」

悠「そいつのが話が通じそうで通じない相手だけどな」

伊都「いわれてましてよ?」

久秀「伊都も同じでしょ」

伊都「あら、失礼ですわね。私はお金次第でちゃんと話を聞きますわ」

左近「あたしもそういう生き方してたはずなんですけどねぇ…」

悠「左近の場合はあっちもこっちも手を出し過ぎたうえで、上司運がなくなったんだろ」

左近「あはは……はぁ…」

悠「それで何頼む?」

左近「小鳥遊さん、やさしくするなら最後まで優しくしましょーよ」

悠「性別男はダメだ」

左近「……この人を連れてきたんですよ」

男「失礼すう。お前が小鳥遊悠か」

悠「そうだけどアンタは」

豊久「今日からせわんなる。島津豊久(しまずとよひさ)じゃ。よろしゅうたのみもす!」

悠「アンタが道玄のおっさんと雲水のおっさんのいってた奴か」

豊久「おじき方には親父共々世話ンなっている。恩を返すのが薩摩の心得じゃ。」

悠「はぁ…」

豊久「というわけじゃ。よろしゅうな!」
ガシッ…ミシシッ
悠「あ、力強い。めっちゃ痛い…」

伊都「暑苦しいタイプですわね。」

久秀「ついでに愚直馬鹿な気もするわ」

悠「お前らなぁ…」

豊久「あの、女子(おなご)は?」

悠「片方はうちの従業員、片方は一応客」

左近「それじゃあ、あたしはここいらで失礼しますね。」

久秀「ゆっくりしていきなさいよ。」

左近「いやー、他の仕事もあるんで、またゆっくりとお茶いただきにきますよ」

伊都「逃げたわね。」

久秀「まぁ、いいいわ。それでお豊」

豊久「なんぞ」

久秀「ここで暮らすのよね」

豊久「そういう話になっとる」

久秀「ふーん、なら仕事はしてもらうわよ」

豊久「力仕事なら任せい。」

悠「うち茶屋なんだけどなぁ…」

豊久「なら、用心棒をしてやる」

悠「用心棒もいるんだよな。将軍だけど」

伊都「腕に自信はあるみたいですわね。」

豊久「俺(おい)の刀は薩摩の刀法。一撃になんもかんも込め後のことなぞ考えん」

悠「……その一撃が外れたり避けられたら?」

豊久「さぱっと死せい。黄泉路の先陣は誉じゃ」

悠「こいつは間違いなく戦闘狂だわ。今のだけで分かった」
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