ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【2】

ー久秀の工場:試験場一階ー

悠「ダッシャア!」

寅「はぁっ!」

悠と寅は同時に自分の前に立つ自動人形を叩き壊す。

悠「やっぱり、機械は嫌いだ」

寅「そもそも機械と戦うことなんてそうていしてねーっての。」

倒れているオートマタを踏み潰してとどめを刺す。

悠「灯は……」

灯「ふふっ。あははっ。」

自動人形【……】

まるで舞でも踊っているようにオートマタの攻撃を避け続けている。

悠「なんか怖いな」

寅「……」

灯「あ、そっち終わりました?」

悠「ああ、大丈夫か?」

灯「ご心配ありがとうございます。すぐに終わらせますから。」

そういうと腰にぶら下げている袋から数本の棒状のものを取り出した。

バラバラだったものが一振りで一本の坤へと変化する。

寅「なんだ今の……」

悠「多節坤とか三節坤は中に糸が通ってて先を引っ張ると棒状になる仕掛けがあるんだよ。ただ、三節にしろ重さとかを考えると節が多くなるほど扱いが難しくなる。」

灯「よっ……と」

棒を地面に突き立て、高跳びの要領で大きく跳躍する。弧を描き、オートマタを飛び越えかけたその瞬間、坤を振り下ろし、その勢いのまま一回転し、着地すると……自動人形は真っ二つに裂けた……。

悠「マジか…」

灯「いやー、結構硬いですね。」

汚れを払うように一振りすると一本の棒はバラバラに分裂してコンパクトになった。

寅「アンタ……投げ専門じゃなかったんだな」

灯「対人戦では投げのほうを多用してますよ。坤はほら……相手が悪いと死んじゃいますから。」

比喩ではなく、事実。機械を真っ二つにできるのだ。人間ならさらに容易だろう。

寅「おい、久秀。聞こえてるか?」

久秀『何かしら。』

寅「もう三体出せ。ただし、狙うのは……灯だけだ」

悠「おい、寅。なにいってる」

寅「それぐらい余裕なんだろ。見せてくれよ」

灯「いやぁ、お見せするほどのものでもないですけどね。でも、せっかくリクエストいただいたので……いきます。」

新たに現われたオートマタに飛び込んでいく灯。三体の包囲に自ら入り込んだと思ったら、それを通り過ぎる。

オートマタ一体からいびつな音、よく見れば首の接合部分から何かが生えていた。坤だ。走り抜ける際に貫いたのか、それとも走り抜けた後に背後から刺したのかはわからない。

ただ、わかるのは三体のうち一体がすでに壊されていることだ。そこからもほぼ一瞬、一瞬で決着がついた。突き立っている棒を両手でつかんで横に力いっぱい薙ぎ払う。刺さったままだった自動人形の首と近くにいた別の自動人形の首が撥ねられた。

振りぬいた勢いを殺さずに身体ごと一回転して今度は逆方向から三体まとめて足の部分を薙ぎ払う。二体は頭部と足を切断され、残り一体はまだ動いているものの上半身でしか行動できない。しかし、それもほんの数秒、上から振り下ろされた一撃で叩き潰される……。

寅「……強ぇ」

悠「なぁ、寅。知ってるか」

寅「何をだよ」

悠「棒を振り回す猿のことをなんていうか」

寅「は?」

悠「それはな……斉天大聖孫悟空っていうんだぞ」

灯「壊すこと前提で暴れるのは……楽しいですね。ふふっ。」
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