ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕

ー大江戸学園:旧工場施設ー

護りという枷を外して鬼は前に出るしかし、立ちふさがる木偶の数は膨大。ゾンビ映画のいちシーンのように群がり続けている。

風魔「鬼よ。ここまで来てみろ」

中央付近を陣取っていた風魔は高く跳躍する。木偶たちを踏み台にして、更に奥へと移動する。

そのまま逃げ切るのかと思いきや、壁際で停止して立ち止った。ここで相手をする……ここまで来れたらなと挑発しているようだ。

雲山「シイィィィィ!」

雄たけびのような呼吸と共に鬼は開いていた手に閉じ込めた。何を?握りしめたのだ。何を?力を……。敵を掴む投げることを放棄した。敵を叩き砕くことを選んだ。

突き放つ拳、それだけで数体の木偶のパーツが欠損する。崩れ落ちる先に第二撃、第三撃にが更にパーツを破壊していく。

前へ、前へ、前進(まえ)へ、前進(まえ)へ!
……。

第一陣を突破し、第二陣へ差し掛かろうとした、そのとき……鬼の拳が貫く前に木偶が爆ぜた。飛びかう破片をとっさに腕でガードする。

一体だけではない、二体、三体、四体……複数体の人形が自爆して飛び散る破片が雲山に直撃する。

雲山「っ……」

風魔「どうした鬼よ。調子はどうだ?満身創痍だな。」

両腕で顔や首、致命傷になる部位を覆いガードしたものの。身体には破片が突き刺さっていた。

久秀「自爆型木偶……やっぱりそっちも作ってたのね。それに……」

針や刃、明らかに木偶のパーツではないものが雲山の身体に突き立っている。対人地雷と同じ仕掛けだ。

風魔「地獄の針山の鬼か?ククッ」

雲山「ハッガッ……ハァーーー。これがどうした。能弁垂れてねぇで来いよ。かかって来い。」

身体を振るい突き立ったものを払い落す。鮮血が霧のように吹くも、構わず前進する。

風魔「素晴らしい。やはり、人間は素晴らしい…」

雲山「うっおっおおおぉっぉぉぉ!」

大振りも大振り全力で敵打ち崩すさまは斧や鉈、そういうもので叩き切る、なぎ倒す様にも見える。

久秀「……まさに、鬼かしらね」

ダンジョー『ジョー』

風魔「なんという男だ。ククッ」

雲山「敵が幾千ありとても突き破れ!突き!砕せ!!」

戦列を散らせて後方へ、後方へ……。
ハリケーンは小さな爆発では止められない。とまるワケが無いのだ。

無数の木偶を屠り、ついに鬼は敵の眼前へと辿りついた。

風魔「見事……見事。しかし……」

何かを言いかけた風魔の顔面に鬼の拳が放たれた。風魔もその拳を受け止めている。

雲山「語るに……及ばず!」

風魔「善い。なれば拳で語ろうぞ。」

下段から真上に腕が飛んだ。いや、伸びたのだ。

雲山「そんな小細工がいつまでも通じるか!」

円を描くように上半身を揺らし、カウンターに左ストレートを叩きこむ。風魔は独楽のように回って拳を避けた。

その遠心力で伸びた腕が鞭のように雲山の胴体を払う。服は抉っても強固な肉の鎧には傷一つ付いていない。

風魔「ククッ。固いな」

雲山「その腕……へし折ってやる。そのためには…………命を捨てる。」

上着を脱ぎ捨て、雲山は鬼状態を発動した。
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