ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました

ー大江戸学園・露天街ー

声をかけられて振り返ると、そこには三人の女の子がいた。背丈や顔つきの幼さからみて、たぶん乙級の生徒だろう。

由真「どうしたの、あなたたち?」

釵の女の子「あの、あるお店を探してるんです……だが」

リボンの女の子「このお店なんですけど~」

そういって彼女がこちらに差し出したのはおれも見覚えがあるガイドブック、ミトランだった。

由真「どれどれ……」

由真が少女の広げているガイドブックをのぞきこむ。ここは任せよう。
学園島(こっち)の場合、おれじゃ道案内にならない。

悠「何の店を探してるんだ?」

釵の女の子「美味しいお茶が飲めるお店なんです……だぜ」

さっきから妙な話し方をする子だな。
無理矢理語尾を変えてるというか。

悠「茶ならうちの店に…」

兎髪留の女の子「「ねずみや」という店なんでござるよ」

悠「げっ…」

由真「な~んだ。わ・た・し・の・店じゃん」

リボンの女の子「あらら、そうなのですか?」

由真「そうよ。いらっしゃいませ、お客様♪」

悠「……いつも、混んでるから入れないかも」

兎髪留の女の子「それはホントでござるか!」

悠「そのときは隣の…」

由真「大丈夫よ、わたしが連れて帰るんだからテーブルのひとつくらいはいつでも開けられるわ」

釵の女の子「そいつは助かる~」

由真「案内するからついていらっしゃい」

リボンの女の子「ありがとうございます~」

由真「それじゃ小鳥遊。わたしはお客様たちを「ねずみや」まで案内しないといけないので」

悠「……とっとこ、もといとっとと、行けばいいだろ」

由真「ここであったのも何かの縁だし特別にミニスイーツを一皿サービスするわね」

兎髪留の女の子「うわ~やったでござる」

釵の女の子「そ、それは、ありが……かたじけない」

リボンの女の子「うれしいですわ~」

由真は三人を引き連れ、いってしまった。

そしてぽつんと残されたおれ。

悠「く、悔しくなんかないんだかなら!」

「すまない」

悠「あー?」

再び声をかけられた。

笠の少女「少し、尋ねたいことがあるんだが…」

そこに立っていたのは笠を目深に被りマントをまとった少女だった。
彼女はえらく抑えた声で言うと、懐に手をいれてなにかを取りだそうとしている。

悠「茶ならうちの…」

笠の少女「お茶?何の話だ?」

悠「あ、美味しい茶を出す店は探しないんだな。」

笠の少女「ああ。今のところは…。それより、この男を知らないか?」

悠「あー?」

差し出されたのは写真だった。そこには学園の制服を着た少年が写っていた。
一応じっくりと見せてもらったがもちろん覚えの無い顔だ。

悠「悪い。わからないな。」

笠の少女「……そうか。それじゃ」

悠「あ、ちょっと」

笠の少女「……何?」

悠「おれ、小鳥遊堂っていう茶屋をやってるんだけど茶でもどうだ?まだ開店したばかりで客が少なくてな」

笠の少女「私には関係ないことです」

悠「あ、そう…」
100/100ページ
スキ