ー夏休み編ー命を燃やせ、今がその時だ
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「はあぁぁぁっぁぁッ……。準備は……できた。」
ヤツは抜き取った繊維を手放すと溶けたように見えなくなった。おれはこぶしを静かに握った。おそらく、柏のボケが引き千切ったのは制御糸(リミットライン)だろう。アイツの握力は異常、日常生活を送るためにはどうしても支障が出る。なので腕の中から後背に糸を通した。握力にブレーキをかけるために、だが……ヤツはその最後のリミットを外してしまった。
バリバリと皮膚が裂ける音とともに両肩、二の腕へと亀裂が走っていく。背中の疵がバックリと開いて表まで登ってきたのだろう。胸の逆十字傷からも血が噴き出している。このまま放っておけば出血多量でぶっ倒れてくれるかも知れないと期待も脳裏によぎったが、ヤツの目を見て甘い希望は投げ捨てた。殺気だけならまだしも冷静を持つ眼光。あくまでもおれの見解だが……崇や氷室さんのようなタイプは本気でキレた時は溢れんばかりに感情を露わにするんじゃないかと思っている。だが、この野郎はハラワタが煮えくりかえり、血液がマグマのように沸騰して、血管がブチ切れるほど怒りを呑みこむと……脳みその芯から冷え固まる。氷ってものは……一見脆いがそれは水の分子の隙間にまざりものがあるからそこで割れる。氷の分子結合の強さは本来鋼の三倍。
そして、なにより手負いの獣ほど厄介なものはない。おれは殴られすぎて警鐘のみたく痛みが止まらない頭で考える。悪魔(ばけもの)を倒すの英雄……。それは亮が決めてくれた。なら、今おれの目のまえに居るのは悪魔のような人間。小鳥遊柏だ。どう動くべきかと……。やつの足は片方が完全に折れている。機動力は落ちているはずだ。だから、そこを突くはずだった――
「遅せぇっ!!」
声が耳に届いとき既にヤツはおれの懐に潜り込んでいた。ドッ…と腹部にかかる衝撃。殴られたのではなく貫かれた。素手で肉体を、息をする間もない気がつくとヤツは刺した手をひっこ抜いた。おれはそれと同時に失った。なにを?あばら骨をだ。折る、砕くじゃないぶっこ抜きやがったのだ体内から直接……。
「あ゛っ……てっ…めっ……!!」
「ははっ!ははははっ!!!」
上等な骨付き肉みたいなあばら骨をおれの目のまえで握砕する。まだ血が通った骨からはおもしろいくらいに鮮血が飛び散っておれと柏の顔に飛び散った。肉体的な激痛と精神的な絶望が混ざり混ざって穴のあいた腹から脳に突きあげてくる。それでもおれの身体は一つの行動へ移ってくれた。痛みばかりでいっぱいいっぱいになっている脳みその奥に埋もれている本能。
【目のまえで笑いやがっているクソボケの顔を潰す】
無意識と本能が融合して振り抜いた拳はヤツの顔を打った。手応えは上々。しかし、倒れない。血と何かしらの体液と砕けた骨の欠片にまみれた手を振ってくる。射線上にあるのは首だ。もし当たったら頸椎をブッこ抜かれる。それでなくても動脈を掻っ切られかねない。おれは無我夢中で手を伸ばした。ヤツの手を掴む。
「はっ!俺と握力で勝負する気かっ!」
血唾を撒きながらヤツは叫んでもう片方の腕も突き付けてきた。条件反射にそっちも掴んでやった。腹の穴を塞ぐものが無くなって生命の滴が零れていくのがわかった。だが、もう引けない。重機にでも潰されてるんじゃないかとイメージする圧が両手にかかる。負けじと力を込めて握り返すも焼け石に水でおれの手は見る見るうちに圧し負けて手首から曲がっていく。力めば力むほど腹から血が噴き出すし、敵の十指が皮膚に食い込んできた。
ヤツはうすっ気味悪く笑った。悪魔の笑みだ。
「このままっ……両手を千切ってやるよっ!」
有言実行とでもいったらいいのか、ヤツの言葉通りにおれの手首が裂け始め出している。ほんの一瞬でも油断したら、力を抜いたらチョコレートを折るよりも容易く両手はへし折れるだろう。おれは歯を食いしばったままいった。
「ぐぐぐぅッッ……てっ……るっ!」
「あー?なんだ?なにいってやがるっ?命乞いか?」
「手なんて、くれ、ってやるっ!」
おれは左手の力みをゼロにした、瞬間なんというか本当に簡単に手首から折れた。手のひら自体は握り潰れてゴムの玩具みたくぐしゃぐしゃになってる。でも、これでいい……
「きさっ……!」
何か叫んでいるが耳には入らない。左手を捨てた代わりにヤツはバランスを崩してくれた。片足で突っ立って力んでたんだからそうなるのも当たり前だけどな。もうこれしかおれに武器は残っていない。満身創痍のおれは上半身を引いて頭を全力で振りおろした。何がしたいのか何が狙いなのか察した柏は身体をねじって避けようと弄するがおれたちはまだ手をつないだままなのだ。腕を引いてヤツをリードする正面に向くように、おれの渾身の頭突きにつっこんでくるようになっ!
ガチュッ!
確かにそんな音がしたと思う。派手さも、美しさもない、力任せで、歪で、原始的な喧嘩。おれは首をあげて、手を離していった。声は出てなかった気がする。唇も動いていなかった気もするがおれの本心をヤツに伝えたのだ。
「柏、愛してるぜ。大っ嫌いだけどな」
「ふんっ、気持ち悪いんだよ」
倒れていく間際にヤツはそう答えた気がする。受け止めてやりたいがおれも限界だったし、なにしろ左手は無くなってしまったのでどうしようもない。
「はぁ……っ。はぁ……っ、はぁ、勝ったっ、ぞ。馬鹿野郎」
あとはコイツを引きづってここから脱出するだけだ。すると、不意に視界がガクンッと下がってしまった。そして次の瞬間地面が起き上ってくる。おれは直感した。あぁ、これは膝をついて、前倒れになってるんだと、これは……まずいな…………ちからがはいらないし、いしきがと――――――
To be continued……
ヤツは抜き取った繊維を手放すと溶けたように見えなくなった。おれはこぶしを静かに握った。おそらく、柏のボケが引き千切ったのは制御糸(リミットライン)だろう。アイツの握力は異常、日常生活を送るためにはどうしても支障が出る。なので腕の中から後背に糸を通した。握力にブレーキをかけるために、だが……ヤツはその最後のリミットを外してしまった。
バリバリと皮膚が裂ける音とともに両肩、二の腕へと亀裂が走っていく。背中の疵がバックリと開いて表まで登ってきたのだろう。胸の逆十字傷からも血が噴き出している。このまま放っておけば出血多量でぶっ倒れてくれるかも知れないと期待も脳裏によぎったが、ヤツの目を見て甘い希望は投げ捨てた。殺気だけならまだしも冷静を持つ眼光。あくまでもおれの見解だが……崇や氷室さんのようなタイプは本気でキレた時は溢れんばかりに感情を露わにするんじゃないかと思っている。だが、この野郎はハラワタが煮えくりかえり、血液がマグマのように沸騰して、血管がブチ切れるほど怒りを呑みこむと……脳みその芯から冷え固まる。氷ってものは……一見脆いがそれは水の分子の隙間にまざりものがあるからそこで割れる。氷の分子結合の強さは本来鋼の三倍。
そして、なにより手負いの獣ほど厄介なものはない。おれは殴られすぎて警鐘のみたく痛みが止まらない頭で考える。悪魔(ばけもの)を倒すの英雄……。それは亮が決めてくれた。なら、今おれの目のまえに居るのは悪魔のような人間。小鳥遊柏だ。どう動くべきかと……。やつの足は片方が完全に折れている。機動力は落ちているはずだ。だから、そこを突くはずだった――
「遅せぇっ!!」
声が耳に届いとき既にヤツはおれの懐に潜り込んでいた。ドッ…と腹部にかかる衝撃。殴られたのではなく貫かれた。素手で肉体を、息をする間もない気がつくとヤツは刺した手をひっこ抜いた。おれはそれと同時に失った。なにを?あばら骨をだ。折る、砕くじゃないぶっこ抜きやがったのだ体内から直接……。
「あ゛っ……てっ…めっ……!!」
「ははっ!ははははっ!!!」
上等な骨付き肉みたいなあばら骨をおれの目のまえで握砕する。まだ血が通った骨からはおもしろいくらいに鮮血が飛び散っておれと柏の顔に飛び散った。肉体的な激痛と精神的な絶望が混ざり混ざって穴のあいた腹から脳に突きあげてくる。それでもおれの身体は一つの行動へ移ってくれた。痛みばかりでいっぱいいっぱいになっている脳みその奥に埋もれている本能。
【目のまえで笑いやがっているクソボケの顔を潰す】
無意識と本能が融合して振り抜いた拳はヤツの顔を打った。手応えは上々。しかし、倒れない。血と何かしらの体液と砕けた骨の欠片にまみれた手を振ってくる。射線上にあるのは首だ。もし当たったら頸椎をブッこ抜かれる。それでなくても動脈を掻っ切られかねない。おれは無我夢中で手を伸ばした。ヤツの手を掴む。
「はっ!俺と握力で勝負する気かっ!」
血唾を撒きながらヤツは叫んでもう片方の腕も突き付けてきた。条件反射にそっちも掴んでやった。腹の穴を塞ぐものが無くなって生命の滴が零れていくのがわかった。だが、もう引けない。重機にでも潰されてるんじゃないかとイメージする圧が両手にかかる。負けじと力を込めて握り返すも焼け石に水でおれの手は見る見るうちに圧し負けて手首から曲がっていく。力めば力むほど腹から血が噴き出すし、敵の十指が皮膚に食い込んできた。
ヤツはうすっ気味悪く笑った。悪魔の笑みだ。
「このままっ……両手を千切ってやるよっ!」
有言実行とでもいったらいいのか、ヤツの言葉通りにおれの手首が裂け始め出している。ほんの一瞬でも油断したら、力を抜いたらチョコレートを折るよりも容易く両手はへし折れるだろう。おれは歯を食いしばったままいった。
「ぐぐぐぅッッ……てっ……るっ!」
「あー?なんだ?なにいってやがるっ?命乞いか?」
「手なんて、くれ、ってやるっ!」
おれは左手の力みをゼロにした、瞬間なんというか本当に簡単に手首から折れた。手のひら自体は握り潰れてゴムの玩具みたくぐしゃぐしゃになってる。でも、これでいい……
「きさっ……!」
何か叫んでいるが耳には入らない。左手を捨てた代わりにヤツはバランスを崩してくれた。片足で突っ立って力んでたんだからそうなるのも当たり前だけどな。もうこれしかおれに武器は残っていない。満身創痍のおれは上半身を引いて頭を全力で振りおろした。何がしたいのか何が狙いなのか察した柏は身体をねじって避けようと弄するがおれたちはまだ手をつないだままなのだ。腕を引いてヤツをリードする正面に向くように、おれの渾身の頭突きにつっこんでくるようになっ!
ガチュッ!
確かにそんな音がしたと思う。派手さも、美しさもない、力任せで、歪で、原始的な喧嘩。おれは首をあげて、手を離していった。声は出てなかった気がする。唇も動いていなかった気もするがおれの本心をヤツに伝えたのだ。
「柏、愛してるぜ。大っ嫌いだけどな」
「ふんっ、気持ち悪いんだよ」
倒れていく間際にヤツはそう答えた気がする。受け止めてやりたいがおれも限界だったし、なにしろ左手は無くなってしまったのでどうしようもない。
「はぁ……っ。はぁ……っ、はぁ、勝ったっ、ぞ。馬鹿野郎」
あとはコイツを引きづってここから脱出するだけだ。すると、不意に視界がガクンッと下がってしまった。そして次の瞬間地面が起き上ってくる。おれは直感した。あぁ、これは膝をついて、前倒れになってるんだと、これは……まずいな…………ちからがはいらないし、いしきがと――――――
To be continued……