ー夏休み編ー命を燃やせ、今がその時だ
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英雄はもうなにもかもを出しきっていた。目蓋を開け続けるのも難しいのか、糸の切れた人形のように重力に身を任せて崩れていくなか最後の気力を振り絞って唇をわずかに動かした……。
「みんな……サンキュ……」
おれは亮を抱きしめた。熱い、周りの熱なんかよりもずっとずっと熱い男を抱きしめる。
「よくやった。お前は最高だよ。」
感動に浸りたい場面だが、頭上からは次々に鉄板や機材が降ってきて、視界に映る物は紅蓮の炎に包まれていた。一刻も早く脱出しないと全員バーベーキューになってしまうだろう。
ボケがっ……。
その声に気がついた紅が叫んだ。
「悠っ!!」
アレだけの技をまともに受けて悪魔はまだ立ち上がってきた。その身体にはしっかりと十字に裂けた烙印が残っている。おれは亮を抱きしめたまま、ヤツからひきはがすように後ろに下がっていった。
「…柏やっぱり…お前は強いな。亮ですらお前の肉体は砕き切れなかった。「悪魔」しかぶっ壊せなかった。」
「はぁはぁ……なにッ、を言ってやがる……。」
いつものすまし顔も疲労と苦痛に歪み肩で息をする。我が身を崩壊するほど力んで硬化してひび割れた岩肌の様だった皮膚も締りが解除されていつもの柏の姿に戻っていく。だが、どうじに無理矢理力づくで止血していた効果も薄れ裂けた部分はもちろん、英雄に着けられた無数の傷から鮮血が吹き出していた。おれは柏から目線を逸らさずに叫んだ。
「紅!千夜を連れて動けるか!」
「あ、ああ大丈夫だ!」
「くっ……離せ、ひとりで、歩ける…」
頑なに紅の手を借りるのを拒む千夜だが振り払うこともできないほど弱っているらしく、紅は無視して肩に腕をまわした。腹に穴があいて自分だって限界のくせにサムズアップサインをおれに向けてきた。それを確認しておれは亮をそっと横に反らしていった。
「カゲコ!亮を連れて紅達と一緒に脱出しろ!」
「っ、あたいに命令してんじゃねーよ!」
悠の隣にパッと現れた(居た)影子は両腕で受け止めるも体格差もあって抱えるという真似はできずに大きなヌイグルミにしがみついている子供みたいな恰好で文句を言っている。
「悪いな……短い付き合いだかお前には世話になった。これが多分最後の頼みだ、行ってくれ。」
自分的に最大の感謝と謝罪を込めたつもりでいった。すると、唯一ケガをしていない尻に鈍痛が走った。端的に言うと蹴られたのだ。おれは突如起こったことが何なのか理解できずに振り向いた。目を充血させ怒りに満ちたカゲコの顔にギョッとする。
「死ぬみたいな言い方すんな!お前は最初っから勝手すぎるんだよ!馬鹿ッ!バーカッッ!!」
「え、えぇ……」
まさか怒鳴られるとは誰が思うものか……。呆気に取られてるとカゲコはおれを睨みで黙らせてから、その奥の人物に視線を向けた。
「柏さん……あたいは……」
「今日は最悪の日だな。匣に裏切られ、ただの雑魚に追い込まれ、送り込んだ駒のひとつは寝がえりか……。」
柏は顔を伏せて低く笑う。
「ッ……あたいは、柏さんに受けた恩は忘れてませんからっ!」
もっと言いたいことがあっただろう、ぶつけたい気持ちもあったのだろう。しかし、カゲコはそれだけ言いきると亮を引きずりながら、火が回ってない通路に消えていく。その後に続いていく紅がいった。
「悠、死ぬなよ!」
何も言わずにおれは拳を突きあげた。これで、残るはおれと柏の二人だけだ。パチパチと火の粉が舞って、今にも崩れそうな柱を見上げていった。
「いいのか消火しなくて?このままだと全焼どころか大火事になるぞ」
柏は伏せていた頭をあげた。
「お前が心配することじゃない。ついでだお前の死体も火葬にしてここを墓にしてやる。安心して死ね。」
「減らず口が止まらないよなぁ。お前は亮に負けてるんだ。これ以上はイタズラに傷を広げるだけだぞ。それこそお前の嫌いな泥試合だ」
柏は笑う。なぜ、笑えるのかが分からなかった。コイツは見極めと決着のつけ方はさっぱりしている男だ。負けと分かったら即時撤退で気を見て倍返してくるタイプだ。だから、このまままだ続けるような事はないと思っていたが……次の瞬間、とんでもない行動に出た。見えない何かを抱きしめるように両腕をクロスさせて自分の二の腕に指を突き立ててている。そしてバッと両手腕をひらくと血肉にまみれた指に何かが引っかかっている。肉眼で捉えられたのはほぼ偶然だった、燃えている火を反射しているピアノ線なんかよりも細い蜘蛛の糸みたいな極細な何かを引っこ抜いたのだ。それも、二の腕の内部(なか)から…。
「みんな……サンキュ……」
おれは亮を抱きしめた。熱い、周りの熱なんかよりもずっとずっと熱い男を抱きしめる。
「よくやった。お前は最高だよ。」
感動に浸りたい場面だが、頭上からは次々に鉄板や機材が降ってきて、視界に映る物は紅蓮の炎に包まれていた。一刻も早く脱出しないと全員バーベーキューになってしまうだろう。
ボケがっ……。
その声に気がついた紅が叫んだ。
「悠っ!!」
アレだけの技をまともに受けて悪魔はまだ立ち上がってきた。その身体にはしっかりと十字に裂けた烙印が残っている。おれは亮を抱きしめたまま、ヤツからひきはがすように後ろに下がっていった。
「…柏やっぱり…お前は強いな。亮ですらお前の肉体は砕き切れなかった。「悪魔」しかぶっ壊せなかった。」
「はぁはぁ……なにッ、を言ってやがる……。」
いつものすまし顔も疲労と苦痛に歪み肩で息をする。我が身を崩壊するほど力んで硬化してひび割れた岩肌の様だった皮膚も締りが解除されていつもの柏の姿に戻っていく。だが、どうじに無理矢理力づくで止血していた効果も薄れ裂けた部分はもちろん、英雄に着けられた無数の傷から鮮血が吹き出していた。おれは柏から目線を逸らさずに叫んだ。
「紅!千夜を連れて動けるか!」
「あ、ああ大丈夫だ!」
「くっ……離せ、ひとりで、歩ける…」
頑なに紅の手を借りるのを拒む千夜だが振り払うこともできないほど弱っているらしく、紅は無視して肩に腕をまわした。腹に穴があいて自分だって限界のくせにサムズアップサインをおれに向けてきた。それを確認しておれは亮をそっと横に反らしていった。
「カゲコ!亮を連れて紅達と一緒に脱出しろ!」
「っ、あたいに命令してんじゃねーよ!」
悠の隣にパッと現れた(居た)影子は両腕で受け止めるも体格差もあって抱えるという真似はできずに大きなヌイグルミにしがみついている子供みたいな恰好で文句を言っている。
「悪いな……短い付き合いだかお前には世話になった。これが多分最後の頼みだ、行ってくれ。」
自分的に最大の感謝と謝罪を込めたつもりでいった。すると、唯一ケガをしていない尻に鈍痛が走った。端的に言うと蹴られたのだ。おれは突如起こったことが何なのか理解できずに振り向いた。目を充血させ怒りに満ちたカゲコの顔にギョッとする。
「死ぬみたいな言い方すんな!お前は最初っから勝手すぎるんだよ!馬鹿ッ!バーカッッ!!」
「え、えぇ……」
まさか怒鳴られるとは誰が思うものか……。呆気に取られてるとカゲコはおれを睨みで黙らせてから、その奥の人物に視線を向けた。
「柏さん……あたいは……」
「今日は最悪の日だな。匣に裏切られ、ただの雑魚に追い込まれ、送り込んだ駒のひとつは寝がえりか……。」
柏は顔を伏せて低く笑う。
「ッ……あたいは、柏さんに受けた恩は忘れてませんからっ!」
もっと言いたいことがあっただろう、ぶつけたい気持ちもあったのだろう。しかし、カゲコはそれだけ言いきると亮を引きずりながら、火が回ってない通路に消えていく。その後に続いていく紅がいった。
「悠、死ぬなよ!」
何も言わずにおれは拳を突きあげた。これで、残るはおれと柏の二人だけだ。パチパチと火の粉が舞って、今にも崩れそうな柱を見上げていった。
「いいのか消火しなくて?このままだと全焼どころか大火事になるぞ」
柏は伏せていた頭をあげた。
「お前が心配することじゃない。ついでだお前の死体も火葬にしてここを墓にしてやる。安心して死ね。」
「減らず口が止まらないよなぁ。お前は亮に負けてるんだ。これ以上はイタズラに傷を広げるだけだぞ。それこそお前の嫌いな泥試合だ」
柏は笑う。なぜ、笑えるのかが分からなかった。コイツは見極めと決着のつけ方はさっぱりしている男だ。負けと分かったら即時撤退で気を見て倍返してくるタイプだ。だから、このまままだ続けるような事はないと思っていたが……次の瞬間、とんでもない行動に出た。見えない何かを抱きしめるように両腕をクロスさせて自分の二の腕に指を突き立ててている。そしてバッと両手腕をひらくと血肉にまみれた指に何かが引っかかっている。肉眼で捉えられたのはほぼ偶然だった、燃えている火を反射しているピアノ線なんかよりも細い蜘蛛の糸みたいな極細な何かを引っこ抜いたのだ。それも、二の腕の内部(なか)から…。