ー夏休み編ー命を燃やせ、今がその時だ
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「きったないなァ……お前。ブチ切れたフリしてえらく打算的じゃねぇか。そんなに最後まで我が身が大事か」
臨戦というか殺気自体を収め切り、亮を見下ろした。その目はゴミを見る眼だった。触りたくもない其処に存在しているのが不浄で不要一刻も早く無くなったらいい。一瞥し終えると柏はペッと唾を吐きかけた。それでも亮は何も反応はない。傷を抑えてただ俯いたままだった。
「……俺は……」
「うす汚くて目が腐るわ。そのクソ臭い血にまみれてゆっくり野垂れ死ね。それが似合いだ。」
悪魔の興味は完全に失せたらしくゴミから背を向けて歩きだした。今一度自身の筋肉を膨張させているらしく、背中の疵が大きくなった。メキメリとエイリアンが変貌を遂げていくような不気味な音が鳴っていた。辺り中に火の手が広まっているが……こうなったら悠を殺しに行くつもりなのだろう。
亮は裂けた胸を押えて泣いていた。痛み、恐怖、苦悩、恥。あらゆる気持ちが脳裏と心を犯していっているのだろう。しかし、心音は鳴っている。トク……トクン……トクンッと……。
「お……俺…は俺は…」
亮にだけ声が聞こえた。匣の声。まるで呪文を詠唱するかのような声。
『悪魔は……カシワは純粋に不純物(まざりもの)が一切ない……なにも持たぬ故に強く…………そして脆い。』
息を吸って一歩前に進んだ瞬間、悪魔の右腕が、皮膚が硬化してひび割れた岩肌のような腕からボトリと何かが落ちた。
「……あ゛?」
亮は自分の右腕を目のまえにかかげた。指の一本動かしても痛いはずの右手を見つめて呟く。
「……俺ができることはたった一つしか……ねーから……」
少し離れた場所で同じように柏も自分の右腕を見た。失っているのだ。硬化皮膚が削げ落ちて流血している。傷を負っているのだ。
「!!なっ!?貴様なにをッ――」
悪魔はふり返りゴミを睨んだ。しかし、居ない。逃げられたかと気配を探ろうと思った瞬間、不意に背中を誰かに触られたことに気がつく。誰かではない、分かっている。今この場で動けるのは……ヤツだと。弾き飛ばすッと悪魔が破壊行動に出ようと――ッ
「八極角打頂肘……ッ!!」
「グァッ!!」
裂けて中身が見えている疵口に激痛が飛びこんだ。今まで演技でしか悲鳴を上げなかった悪魔の口が苦痛吐き出した。衝撃に吹き飛びそうになり上半身がカグンと震えたが悪魔は踏みとどまる。受けた力を背面から吸収し、衝撃を利用し上半身をひねって亮の横っ面に肘をぶつけた。自分の打ち出した技の力がほぼそのまま返ってきたのを受けて弾け飛んでいった。火の壁を突き抜けて鉄骨の塊にぶつかる。メタルプレートの破片やパイプが容易に背中を抉り疵つけた。
ひと目に見て重症な量の血をドロドロと流しはするも亮は起き上った。
「ガハッ!!はぁはぁぁ……」
ガクガクと全身を震わせ痛がる亮の姿こそは瀕死のガキ。しかし、今しがた自分の身に起きたことに得体の知れぬ気配を感じ、悪魔はいった。
「き、さま……なにをやった?」
「はぁはぁ……俺が……できることは……1個しかねーから」
亮は震える身体で、目からこぼれる涙も口からしたたる血を拭わず。悪魔を睨んだ。その時、スピーカーから声が落ちてきた。今度は亮にだけでなく柏の耳にも音が届く。
『与えられた者が与えられていたことに気付くのは稀だ。けれども与えていた方はしばしば命を削ってなにかを伝えているものさ……。』
「匣?んっ……?」
悪魔は自分の目を擦った。右と左を見て何かを確かめたあと、改めて亮を見直す。声が漏れた……。
「馬鹿……なッ」
亮は腕を上げて拳を突き付ける。その目にもう涙は無い。恐れも捨て、闘士としての覚悟に満ちている。
「俺はみんなの力を借りるしかできることねーから」
悪魔の目に映るのは亮『だけ』ではない。火が踊りトレードマークのオサゲ髪を揺らして紅が拳を突き付けて立っている。紅だけではない、千夜が好戦的に睨みながら、摩耶が腕を組んで、氷室が眼鏡をかけ直し……。ここに居るはずがない奴ら、そこでくたばっている奴ら、ありえない奴らが亮の側に確かに「見える」のだ。
「これは……まさっ……!?」
亮が足を大きく振り上げて落とした。その一連の動作はまるで千夜そのもの……踵が地面を打つ衝撃で散らばっているあらゆる残骸が跳ね上がる。宙に舞う鉄塊、ガラス、パイプを悪魔目掛け蹴り飛ばした。
「くっ、こんな小細工がッ!!」
力み直し皮膚は再硬化する。硬くなった悪魔の手の前に障害物は無い。向かい来る全てを弾き落としていくが、最後に飛んで来たモノが顔に当たる。やり方こそは違うが超至近距離ソバット……亮は悪魔の顔を踏みつけくるりと猫三寸に反転して着地した。
猫の三寸返りとは言わずと知れた柔道家西郷四郎の得意技だ。下駄の上から恐ろしく低空でとんぼを切り、寸分違わず下駄に着地。いや、下駄を掃いてしまう「猫の三寸返り」。その技を応用して柔道に生かした西郷四朗は、あたかも高所から落下する猫が必ず反転して着地するかのごとき伝説の技である。
亮はそこからノーモーションで悪魔の腹へ拳を叩きこんだ。ダメージの有無は不明だが怒濤の連続攻撃に悪魔は踏ん張り耐えることが出来ず後ろに吹き飛んで大向けに倒れた。
臨戦というか殺気自体を収め切り、亮を見下ろした。その目はゴミを見る眼だった。触りたくもない其処に存在しているのが不浄で不要一刻も早く無くなったらいい。一瞥し終えると柏はペッと唾を吐きかけた。それでも亮は何も反応はない。傷を抑えてただ俯いたままだった。
「……俺は……」
「うす汚くて目が腐るわ。そのクソ臭い血にまみれてゆっくり野垂れ死ね。それが似合いだ。」
悪魔の興味は完全に失せたらしくゴミから背を向けて歩きだした。今一度自身の筋肉を膨張させているらしく、背中の疵が大きくなった。メキメリとエイリアンが変貌を遂げていくような不気味な音が鳴っていた。辺り中に火の手が広まっているが……こうなったら悠を殺しに行くつもりなのだろう。
亮は裂けた胸を押えて泣いていた。痛み、恐怖、苦悩、恥。あらゆる気持ちが脳裏と心を犯していっているのだろう。しかし、心音は鳴っている。トク……トクン……トクンッと……。
「お……俺…は俺は…」
亮にだけ声が聞こえた。匣の声。まるで呪文を詠唱するかのような声。
『悪魔は……カシワは純粋に不純物(まざりもの)が一切ない……なにも持たぬ故に強く…………そして脆い。』
息を吸って一歩前に進んだ瞬間、悪魔の右腕が、皮膚が硬化してひび割れた岩肌のような腕からボトリと何かが落ちた。
「……あ゛?」
亮は自分の右腕を目のまえにかかげた。指の一本動かしても痛いはずの右手を見つめて呟く。
「……俺ができることはたった一つしか……ねーから……」
少し離れた場所で同じように柏も自分の右腕を見た。失っているのだ。硬化皮膚が削げ落ちて流血している。傷を負っているのだ。
「!!なっ!?貴様なにをッ――」
悪魔はふり返りゴミを睨んだ。しかし、居ない。逃げられたかと気配を探ろうと思った瞬間、不意に背中を誰かに触られたことに気がつく。誰かではない、分かっている。今この場で動けるのは……ヤツだと。弾き飛ばすッと悪魔が破壊行動に出ようと――ッ
「八極角打頂肘……ッ!!」
「グァッ!!」
裂けて中身が見えている疵口に激痛が飛びこんだ。今まで演技でしか悲鳴を上げなかった悪魔の口が苦痛吐き出した。衝撃に吹き飛びそうになり上半身がカグンと震えたが悪魔は踏みとどまる。受けた力を背面から吸収し、衝撃を利用し上半身をひねって亮の横っ面に肘をぶつけた。自分の打ち出した技の力がほぼそのまま返ってきたのを受けて弾け飛んでいった。火の壁を突き抜けて鉄骨の塊にぶつかる。メタルプレートの破片やパイプが容易に背中を抉り疵つけた。
ひと目に見て重症な量の血をドロドロと流しはするも亮は起き上った。
「ガハッ!!はぁはぁぁ……」
ガクガクと全身を震わせ痛がる亮の姿こそは瀕死のガキ。しかし、今しがた自分の身に起きたことに得体の知れぬ気配を感じ、悪魔はいった。
「き、さま……なにをやった?」
「はぁはぁ……俺が……できることは……1個しかねーから」
亮は震える身体で、目からこぼれる涙も口からしたたる血を拭わず。悪魔を睨んだ。その時、スピーカーから声が落ちてきた。今度は亮にだけでなく柏の耳にも音が届く。
『与えられた者が与えられていたことに気付くのは稀だ。けれども与えていた方はしばしば命を削ってなにかを伝えているものさ……。』
「匣?んっ……?」
悪魔は自分の目を擦った。右と左を見て何かを確かめたあと、改めて亮を見直す。声が漏れた……。
「馬鹿……なッ」
亮は腕を上げて拳を突き付ける。その目にもう涙は無い。恐れも捨て、闘士としての覚悟に満ちている。
「俺はみんなの力を借りるしかできることねーから」
悪魔の目に映るのは亮『だけ』ではない。火が踊りトレードマークのオサゲ髪を揺らして紅が拳を突き付けて立っている。紅だけではない、千夜が好戦的に睨みながら、摩耶が腕を組んで、氷室が眼鏡をかけ直し……。ここに居るはずがない奴ら、そこでくたばっている奴ら、ありえない奴らが亮の側に確かに「見える」のだ。
「これは……まさっ……!?」
亮が足を大きく振り上げて落とした。その一連の動作はまるで千夜そのもの……踵が地面を打つ衝撃で散らばっているあらゆる残骸が跳ね上がる。宙に舞う鉄塊、ガラス、パイプを悪魔目掛け蹴り飛ばした。
「くっ、こんな小細工がッ!!」
力み直し皮膚は再硬化する。硬くなった悪魔の手の前に障害物は無い。向かい来る全てを弾き落としていくが、最後に飛んで来たモノが顔に当たる。やり方こそは違うが超至近距離ソバット……亮は悪魔の顔を踏みつけくるりと猫三寸に反転して着地した。
猫の三寸返りとは言わずと知れた柔道家西郷四郎の得意技だ。下駄の上から恐ろしく低空でとんぼを切り、寸分違わず下駄に着地。いや、下駄を掃いてしまう「猫の三寸返り」。その技を応用して柔道に生かした西郷四朗は、あたかも高所から落下する猫が必ず反転して着地するかのごとき伝説の技である。
亮はそこからノーモーションで悪魔の腹へ拳を叩きこんだ。ダメージの有無は不明だが怒濤の連続攻撃に悪魔は踏ん張り耐えることが出来ず後ろに吹き飛んで大向けに倒れた。