ー夏休み編ー命を燃やせ、今がその時だ
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ドンッ……とゴムの塊りが高い所から落ちたような音が聞こえた。あとはゴウンゴウンと機械が稼働する音が支配する。無言の中、最初に口火を切ったのは紅の軽い口調だった。しかし、臨戦態勢のままだ。
「上手く……いったのか?亮、手応えは?」
亮はたっぷりと間をおいてからいった。
「……手応えはあった。確実に急所を打てたはずだ。」
千夜と紅は亮の顔……ではなく、殴った手に視線を向けた。ひび割れた陶器のような傷が拳骨の手首まで広まって血を流している。殴る行為を続けていれば傷が出来たり、腫れて膨らんでしまうことは当然ある。しかし、どういう握り方をし、どういう打ち方をすればあんな奇妙な傷が出来るのか亮に比べ圧倒的に喧嘩経験のある二人でも理解(わから)なかった。
ただひとつ理解していたのは匣という女は亮の拳なら戦線をひっくり返せれるかもしれないと助言したこと……。つまりは悪魔を倒しきれる武器は亮が持っているということになる。三人が黙していると。突然声が聴こえた。どこか心理を逆なでして不安を煽りそうな独特の声。
『きひきひひ、見せてもらったよ。それで、何をジッーとしているんだい。』
わっ!っと三人は驚きの声を上げる。声の主は匣、しかし本人は既に安全な場所に避難している。だが、三人にはハッキリと声が伝わっていた。
「突然喋んなっ!」
叫んだ千夜の声にすぐにレスポンがあった。
『きひひひっ。そんなに大声出さなくてもこっちは聞こえてるよ。とりあえず音声は届いてるみたいだねぇ。さすがボクの発明だねぇ。きひひっ』
亮と紅そして千夜には匣からある仕掛けが施されていた。それはインカムとGPS。ただし、驚くのはそのサイズだった。マイクロSDサイズにも満たない超極小サイズのチップ。そのふたつを鎖骨に置いて特殊なテープで張りつける。これで匣は監視カメラからの映像だけでなくGPSで位置を観測できるようになっていた。また、特製インカムは骨振動を利用し匣の声は三人にしか聞こえずに話せるという仕掛けだった。これの残念なことは極限まで小型化したため携帯のようにバッテリーを付属出来ないので稼働期間は一時間と持たないし一度作動するとオンオフの切り替えは出来ない完全な使い切りなことであるそうだ。驚きなのは性能より価格だ。ひとつの開発費が数千万。つまり……三人で約億円の使い捨てアイテム。
三人は思わず自分の鎖骨を撫でてしまった。一生かかっても持てない額の物が着いているのだから……だが、そんなことを無視して匣は続けた。
『きひひ。さぁ、君たちの自由タイムは終わりだ。今からはボクの指示で本当の悪魔狩りをしてもらう。まさかとはあの程度で本当に勝てたとは思っていないよねぇ?』
考えなかったわけではない。紅がいった。
「でもよ、ここからでも相当な高さがあるぜ。それにまったく何の反応がないぞ。」
『そりゃ、待ってるんだよ。仄暗い底でねぇ……。むしろ、君らは早く降りた方が良いでないと下から鉄パイプでも投げられたら貫かれるよ。』
三人は頷きあって悪魔が落ちていった地の底へと飛びおりた。高さは目測で見積もっても十メートルはある。一度の落下で降りれる距離ではない。そこらのパイプや鉄筋に掴まりつつ最下層までたどり着くと、ベルトコンベアが精錬されたアリの行列のように動きまわっていた。いくつも流れていく段ボールや何かの機材(?)。
鉄と油の匂いがこもっている。熱量もなかなかのものだ。
三人の耳に匣の声が響いた。
『呆けるな。彼はカメラの位置なんて把握している。ボクからは見えてないんだ。三人が互いに背中を守らないと死ぬ……よ?』
そのひと言で三人はスイッチを切り替えた。悪魔が落下したと思われる位置には壊れた手すりの破片が散らばって入るものの本人はいない……。死角から奇襲が来るかもしれないと三人は神経を研ぎ澄ませていた。しかし、悪魔をその期待を裏切って現れた。
「遅かったな。」
全員が声のした方に向く……。悪魔は立っていた。落下際にひっかけでもしたのか上着はボロボロになってところどころ肌が見えていた。しかし、三人が気になったのはその後ろだった。最初はゴミの山に見えたが……すぐに違うと分かった。大小様々な銃やナイフ、刀、ワッペンに勲章、看板にボロボロの服、靴、動物の骨、子供の玩具のようなものまである……。
悪魔は冷徹な声でいった。
「これは俺の戦利品だ。軍人、格闘家、野生動物……色んな奴から手に入れた。」
三人はこの時初めて――この柏(おとこ)につきまとう。不気味な気配の「正体」を理解した。悠や今までの闘ってきた敵たちとは全く違う……「守らぬ者」「与えぬ者」ただひたすらの「奪う者」。その瞬間、脳裏にある言葉がよぎった。
逃げろ!逃げろ!逃げろ!
あらゆる悪を司る魔の聖典が魂を地獄へと引きずり堕としてしまうその前に!
「上手く……いったのか?亮、手応えは?」
亮はたっぷりと間をおいてからいった。
「……手応えはあった。確実に急所を打てたはずだ。」
千夜と紅は亮の顔……ではなく、殴った手に視線を向けた。ひび割れた陶器のような傷が拳骨の手首まで広まって血を流している。殴る行為を続けていれば傷が出来たり、腫れて膨らんでしまうことは当然ある。しかし、どういう握り方をし、どういう打ち方をすればあんな奇妙な傷が出来るのか亮に比べ圧倒的に喧嘩経験のある二人でも理解(わから)なかった。
ただひとつ理解していたのは匣という女は亮の拳なら戦線をひっくり返せれるかもしれないと助言したこと……。つまりは悪魔を倒しきれる武器は亮が持っているということになる。三人が黙していると。突然声が聴こえた。どこか心理を逆なでして不安を煽りそうな独特の声。
『きひきひひ、見せてもらったよ。それで、何をジッーとしているんだい。』
わっ!っと三人は驚きの声を上げる。声の主は匣、しかし本人は既に安全な場所に避難している。だが、三人にはハッキリと声が伝わっていた。
「突然喋んなっ!」
叫んだ千夜の声にすぐにレスポンがあった。
『きひひひっ。そんなに大声出さなくてもこっちは聞こえてるよ。とりあえず音声は届いてるみたいだねぇ。さすがボクの発明だねぇ。きひひっ』
亮と紅そして千夜には匣からある仕掛けが施されていた。それはインカムとGPS。ただし、驚くのはそのサイズだった。マイクロSDサイズにも満たない超極小サイズのチップ。そのふたつを鎖骨に置いて特殊なテープで張りつける。これで匣は監視カメラからの映像だけでなくGPSで位置を観測できるようになっていた。また、特製インカムは骨振動を利用し匣の声は三人にしか聞こえずに話せるという仕掛けだった。これの残念なことは極限まで小型化したため携帯のようにバッテリーを付属出来ないので稼働期間は一時間と持たないし一度作動するとオンオフの切り替えは出来ない完全な使い切りなことであるそうだ。驚きなのは性能より価格だ。ひとつの開発費が数千万。つまり……三人で約億円の使い捨てアイテム。
三人は思わず自分の鎖骨を撫でてしまった。一生かかっても持てない額の物が着いているのだから……だが、そんなことを無視して匣は続けた。
『きひひ。さぁ、君たちの自由タイムは終わりだ。今からはボクの指示で本当の悪魔狩りをしてもらう。まさかとはあの程度で本当に勝てたとは思っていないよねぇ?』
考えなかったわけではない。紅がいった。
「でもよ、ここからでも相当な高さがあるぜ。それにまったく何の反応がないぞ。」
『そりゃ、待ってるんだよ。仄暗い底でねぇ……。むしろ、君らは早く降りた方が良いでないと下から鉄パイプでも投げられたら貫かれるよ。』
三人は頷きあって悪魔が落ちていった地の底へと飛びおりた。高さは目測で見積もっても十メートルはある。一度の落下で降りれる距離ではない。そこらのパイプや鉄筋に掴まりつつ最下層までたどり着くと、ベルトコンベアが精錬されたアリの行列のように動きまわっていた。いくつも流れていく段ボールや何かの機材(?)。
鉄と油の匂いがこもっている。熱量もなかなかのものだ。
三人の耳に匣の声が響いた。
『呆けるな。彼はカメラの位置なんて把握している。ボクからは見えてないんだ。三人が互いに背中を守らないと死ぬ……よ?』
そのひと言で三人はスイッチを切り替えた。悪魔が落下したと思われる位置には壊れた手すりの破片が散らばって入るものの本人はいない……。死角から奇襲が来るかもしれないと三人は神経を研ぎ澄ませていた。しかし、悪魔をその期待を裏切って現れた。
「遅かったな。」
全員が声のした方に向く……。悪魔は立っていた。落下際にひっかけでもしたのか上着はボロボロになってところどころ肌が見えていた。しかし、三人が気になったのはその後ろだった。最初はゴミの山に見えたが……すぐに違うと分かった。大小様々な銃やナイフ、刀、ワッペンに勲章、看板にボロボロの服、靴、動物の骨、子供の玩具のようなものまである……。
悪魔は冷徹な声でいった。
「これは俺の戦利品だ。軍人、格闘家、野生動物……色んな奴から手に入れた。」
三人はこの時初めて――この柏(おとこ)につきまとう。不気味な気配の「正体」を理解した。悠や今までの闘ってきた敵たちとは全く違う……「守らぬ者」「与えぬ者」ただひたすらの「奪う者」。その瞬間、脳裏にある言葉がよぎった。
逃げろ!逃げろ!逃げろ!
あらゆる悪を司る魔の聖典が魂を地獄へと引きずり堕としてしまうその前に!