ー夏休み編ー命を燃やせ、今がその時だ
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逆側で、もうひとりの男も身を削りながら攻めていた。紅、秀でた戦術を持たぬと思われがちだが彼はオールラウンダーの才があった。長モノを手のように扱い。恵まれた体躯に勘の良さ、喧嘩屋としては勿体ないといえる技才を持っていた。そんな男の拳は軽くない。しかし……悪魔には通じない。当たっていないわけではない、横面を肩を胸を撃っているのだ。
それにも関わらず、まるで鉄板でも殴っているような感覚と手応えにわずかな違和感。弾かれるたびに自分の腕の肉を削がれているからじゃない。なぜだか、この男には……決定打が通らないのだ。何かを殴った際、これは効いたという手応えが何発かに一発は必ずある。虎戌琥崇はそれを意図的に狙えると言うが、これではまるで逆だ。意図的に決定打だけを弾き捌いているとしか思えなかった。その時、二人はハッと匣の言葉を思いだす。
『きひひ、カシワ君の強さの源は手の力。握力だ。けどねぇ、それ以上に彼が得意としているのは防御とカウンターだよ。きひ、その顔は信じてないみたいだね。でもまぁいいよ、どうせ信じなくてもきっと闘えば嫌でも分かるはずだから……というか、君らも見たことあるはずだけどねぇ。僕のフィアンセ悠も使っているはずだよ。』
フラッシュバックする殴った瞬間――いや、殴られた瞬間に力を抜いて衝撃を奪う受け技。
「そうかこれはっ……!」
「打撃吸収か!」
決定打ははたき落とし、それ以下の打撃はわざと身で受け止めたように見せかけ肩や胸板、或いは顔からでも、その一瞬一瞬筋肉を弛緩させて衝撃を吸収する。これではわずかなダメージも与えられず、肉を削がれ続けてしまう。
「まるで羽虫だな。ちょろちょろしているだけで……イラつくんだよぉぉッ!!」
「ガッ?!」
「ぐっ!!」
悪魔の咆哮と同時に紅は手首を千夜は足首を捉えられ、とてつもない握力で締められた。二人の顔に痛みの皺が刻まれる。一度捕まってしまえばもう終わり。粉砕まで残り一秒……のところで二人は外側へと身体を振った。急に総荷重が後方へと掛かり柏の腕が背後によじれる。
「なッァ?!その程度で離すかァァ!!」
羽交いになっても悪魔は決しって握力を緩めなかった。メシメシッと骨と肉が軋む音が聞こえるほどに圧がかかっているも、二人は攻め手を止めなかった。紅は潰せるなら潰せと言わんばかりに凶悪な笑みを浮かべて左拳を振りかぶった。千夜も同様だった。砕いてみろただし、テメェの命は貰う。自重を支えている残った一本足で地面を蹴り、着地のことを考えず飛び空中で身体を九十度旋回させた。
「背後からならっ!」
「吸収しきれないだろっ!」
千夜のつま先が悪魔の後頭部を、紅の拳が首を打ちつける。真後ろからしかも、二人同時の渾身の強撃を人体の数ある急所と呼ばれる部位に当てられ、両手を離した。突き飛ばされたような格好で柏はとっさに目のまえの手すりを掴んだ。
「うおおぉっ!!」
空中に放たれた千夜が地面に激突し、転がり落ちそうになったがメタルプレートの網目を掴んで何とか這いあがるのを横目に、紅はすぐに両の拳を今一度強く固めた。水の入ったビニール袋をアスファルトに擦りつけて吹きだす霧状に血が舞った。数分打ち合っただけなのにボロボロになった拳をヤツの背中に叩きこんだ。
「ぐッっ!!」
「後ろ向いてりゃ攻撃しねぇとでも思ったのかよ。」
血濡れた男の言葉に悪魔はいった。
「てめっ……卑怯だろっ!!」
「はっ?戦隊ヒーローものしらねぇの?怪人はヒーローにフルボッコされるのが決まりだろ。」
千夜が起き上っていった。
「紅……!容赦……すんなよ!」
「ははっ、命乞いなら聞いてやろうぜ……聞くだけだけどなっ!」
二対一で不良の真髄と言わんばかりに千夜と紅は容赦ない蹴りと拳ぶつけた。振り向く間を与えず、ただ、ただ、暴撃を浴び続ける柏の身体が手すりに押し潰れていく。
「きさっ……まらっ!!」
悪魔が足掻きとばかりに振りかえろうと渾身の力で手すりを握ったその時……。ピタリっと嘘のように打撃が止んだ。さすがに何事かとふり返っ悪魔の、その目に映ったのは――
「やっと……借りが返せるぜ。」
「貴様ッ……!!」
千夜と紅のあいだで岡崎亮が居た。腰を落とし正拳突きの構えの姿勢。亮はいった。
「初めてあった時の借り……返したぜっ!!」
突く側の拳を脇の下まで引き、同時に突き手と逆側の手は正拳を前に出した形もしくは受けの形をとる。引き手とした拳を腰の回転を切り返しつつ、対象までまっすぐ突き出した。理想的かつ空手王道の一撃必殺の正拳が悪魔の鳩尾を貫く。
「ぐ…ぉっ……。」
ガードも打撃を吸収できた様子もなく。まっすぐに深々と突き刺さった正拳の威力は凄まじかった。柏の身体を支えていた手すりが車両事故が起こったように歪み、それでもなお負荷がかかったらしくついにはバチンッと鋭い音を立てて折れた。悪魔は抵抗する様子もなく落下(お)ちていく。
それにも関わらず、まるで鉄板でも殴っているような感覚と手応えにわずかな違和感。弾かれるたびに自分の腕の肉を削がれているからじゃない。なぜだか、この男には……決定打が通らないのだ。何かを殴った際、これは効いたという手応えが何発かに一発は必ずある。虎戌琥崇はそれを意図的に狙えると言うが、これではまるで逆だ。意図的に決定打だけを弾き捌いているとしか思えなかった。その時、二人はハッと匣の言葉を思いだす。
『きひひ、カシワ君の強さの源は手の力。握力だ。けどねぇ、それ以上に彼が得意としているのは防御とカウンターだよ。きひ、その顔は信じてないみたいだね。でもまぁいいよ、どうせ信じなくてもきっと闘えば嫌でも分かるはずだから……というか、君らも見たことあるはずだけどねぇ。僕のフィアンセ悠も使っているはずだよ。』
フラッシュバックする殴った瞬間――いや、殴られた瞬間に力を抜いて衝撃を奪う受け技。
「そうかこれはっ……!」
「打撃吸収か!」
決定打ははたき落とし、それ以下の打撃はわざと身で受け止めたように見せかけ肩や胸板、或いは顔からでも、その一瞬一瞬筋肉を弛緩させて衝撃を吸収する。これではわずかなダメージも与えられず、肉を削がれ続けてしまう。
「まるで羽虫だな。ちょろちょろしているだけで……イラつくんだよぉぉッ!!」
「ガッ?!」
「ぐっ!!」
悪魔の咆哮と同時に紅は手首を千夜は足首を捉えられ、とてつもない握力で締められた。二人の顔に痛みの皺が刻まれる。一度捕まってしまえばもう終わり。粉砕まで残り一秒……のところで二人は外側へと身体を振った。急に総荷重が後方へと掛かり柏の腕が背後によじれる。
「なッァ?!その程度で離すかァァ!!」
羽交いになっても悪魔は決しって握力を緩めなかった。メシメシッと骨と肉が軋む音が聞こえるほどに圧がかかっているも、二人は攻め手を止めなかった。紅は潰せるなら潰せと言わんばかりに凶悪な笑みを浮かべて左拳を振りかぶった。千夜も同様だった。砕いてみろただし、テメェの命は貰う。自重を支えている残った一本足で地面を蹴り、着地のことを考えず飛び空中で身体を九十度旋回させた。
「背後からならっ!」
「吸収しきれないだろっ!」
千夜のつま先が悪魔の後頭部を、紅の拳が首を打ちつける。真後ろからしかも、二人同時の渾身の強撃を人体の数ある急所と呼ばれる部位に当てられ、両手を離した。突き飛ばされたような格好で柏はとっさに目のまえの手すりを掴んだ。
「うおおぉっ!!」
空中に放たれた千夜が地面に激突し、転がり落ちそうになったがメタルプレートの網目を掴んで何とか這いあがるのを横目に、紅はすぐに両の拳を今一度強く固めた。水の入ったビニール袋をアスファルトに擦りつけて吹きだす霧状に血が舞った。数分打ち合っただけなのにボロボロになった拳をヤツの背中に叩きこんだ。
「ぐッっ!!」
「後ろ向いてりゃ攻撃しねぇとでも思ったのかよ。」
血濡れた男の言葉に悪魔はいった。
「てめっ……卑怯だろっ!!」
「はっ?戦隊ヒーローものしらねぇの?怪人はヒーローにフルボッコされるのが決まりだろ。」
千夜が起き上っていった。
「紅……!容赦……すんなよ!」
「ははっ、命乞いなら聞いてやろうぜ……聞くだけだけどなっ!」
二対一で不良の真髄と言わんばかりに千夜と紅は容赦ない蹴りと拳ぶつけた。振り向く間を与えず、ただ、ただ、暴撃を浴び続ける柏の身体が手すりに押し潰れていく。
「きさっ……まらっ!!」
悪魔が足掻きとばかりに振りかえろうと渾身の力で手すりを握ったその時……。ピタリっと嘘のように打撃が止んだ。さすがに何事かとふり返っ悪魔の、その目に映ったのは――
「やっと……借りが返せるぜ。」
「貴様ッ……!!」
千夜と紅のあいだで岡崎亮が居た。腰を落とし正拳突きの構えの姿勢。亮はいった。
「初めてあった時の借り……返したぜっ!!」
突く側の拳を脇の下まで引き、同時に突き手と逆側の手は正拳を前に出した形もしくは受けの形をとる。引き手とした拳を腰の回転を切り返しつつ、対象までまっすぐ突き出した。理想的かつ空手王道の一撃必殺の正拳が悪魔の鳩尾を貫く。
「ぐ…ぉっ……。」
ガードも打撃を吸収できた様子もなく。まっすぐに深々と突き刺さった正拳の威力は凄まじかった。柏の身体を支えていた手すりが車両事故が起こったように歪み、それでもなお負荷がかかったらしくついにはバチンッと鋭い音を立てて折れた。悪魔は抵抗する様子もなく落下(お)ちていく。