ー夏休み編ー命を燃やせ、今がその時だ
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激戦地から遠く離れた東京副都心池袋のアンダーグラウンドバー『ラスタ・ラヴ』。離れた島からの闘士の炎が映像ながら飛び火した若者たちのボルテージは最高潮をはや数時間キープしたままでいた。地図にも載らない離れ小島で行われているバトルの映像を盗み無料動画サイトへ送り続けていた男の手がピタリと止まる。
夏の夜しかもエアコンをかけているとはいえ人の熱気が籠るなかでビッグサイズの黒いパーカを着て頭からすっぽりとフードをかぶっているその男は烏哭禅。関東一のハッカーとも噂されるS・ウルフの参謀であり現実が仮想、電子の世界が現実であると本気で語る男。そんな彼の淡白な表情に影が出来ていた。普段から顔色が良い方ではない奴ではあるが、しかめっ面をすることは非常に珍しい。
VIPルームに集まっている面々はみな動画の方に釘づけになっていたがキングの眼はしっかりと気がついていた。
「禅、どうかしたか?」
鋭く尖った氷柱のような声に禅は細い顎先を小さく前後させてうなずいた。しかし、問いには答えず耳に着けているイヤホンマイクに集中している。
「……どういう……こと…です?」
どうやら、誰かと話しているらしい。それでもキング・崇の声を無視して話すほどの相手が存在するのだろうか。ノートパソコンに集中していた皆の視線がはらはらと禅へと移る。
「……はい……はい……。」
それでも、なお電子の賢者は通話を切ろうとせずに、その表情は険しさと影を増していくばかりだった。彼の相づちする様子を眺めているとテーブルを叩いて立ちあがった。
「なん……だとっ!」
普段大声を出さない禅が癇癪を起し、その場に居る全員が目を見開いて、ただただ終始眺めているしかなかった。動画よりも唇を噛んで唸る禅の方が見ごたえがあるのかもしれない。指が真っ赤になるほど握った拳を解いて、ゆっくりと席に着いて、やっと口を開いた。その声は苦虫を奥歯ですり潰したかのように渋い。
「崇……さん、すみ……ません。ちょっ……と……こちらへ…来て……いただけま……すか。」
「どうした?」
本郷が動こうとしたがキングはソレを右手で制して立ちあがった。他の者も動くなと目で合図を送り禅の側まで歩いて立ち止まる。
「これを……耳に……」
禅は耳に着けていたのとは別のイヤホンマイクを崇に差し出した。さっと指で髪をかきあげ装着するとノイズ混じりの女の声が聞こえてくる。
『きひ……ひ、聞こえているかな?』
キングはジッと禅に視線をおくると、うなずき返してた。返事をしろということらしい。短く息を吐いてガキの王様は淡々といった。
「聞こえている。お前は誰で、何の用だ」
『きひひ、そういっぺんに質問しないでくれたまえ。僕のほうは時間がないんでねぇ。きひひひっ。』
「時間が無い?話したいから俺を呼びつけたんだろ。用件をいわないなら失せろ」
『きひ、きひひひっ。いやいや、これは失礼したねぇ。では、用件を言おう。まずはここまでのハッキングをしていた人ご苦労様でした。といってもぉ……僕がわ・ざ・と・ハッキングできるようにしておいたからね。きひひひ』
かんに触るような笑い声と分かりやすい嫌味まがいの挑発。顔色のよくない禅の頬が僅かに赤みをさしている。怒り……もしくは恥じているのかも知れない。崇はいった。
「切るぞ」
『小鳥遊悠』
通話を切れっと出そうとしたハンドサインが止まる。崇と禅は声に集中した。
『彼はコンゴウに勝つのは無理だろう。それでもカシワを目指すのをやめようとしない。どうだろう、ボクと取引しないか?』
「続けろ」
『僕らがタカナシカシワを倒してあげる。だから、キミ達はタカナシ悠を止めろ。』
禅は疑問する……この局面で小鳥遊柏を倒す手立てがあるのかということ、そして仮に止めるとしてもその方法だ。映像は見ていても手出しはおろか声の届く場所でもない。一瞬の間にあらゆる可能性を考慮する電子の賢者に対してキングの判断と決断は瞬間だった。
「断る。」
研ぎ澄まされた日本刀で竹を真っ二つにしたような英断のひと言。
『きひ、きひひひっひひひっひひ。』
通話の主は返答をどう捉えたのか笑っていた。とても、楽しそうに笑い続ける。数十秒間、狂った甲高い笑い声に耐えていると不意に水を打ったよに止まった。
『ココクタカシ、まさか悠の死を中継するつもりかい?』
「質問ばかりだな……まずはお前が何者か答えて、何をするつもりか答えたらどうだ。」
どちらが優位な立場というわけではない……っが、キングは媚びない、そして引かないのだ。しかし、向こうからの返答内容には流石の王様も目を見開いた。
『確かに自己紹介が遅れたね。僕の名前は八雲匣。タカナシ悠の許婚いわゆる……フィアンセさ。きひひひっ』
夏の夜しかもエアコンをかけているとはいえ人の熱気が籠るなかでビッグサイズの黒いパーカを着て頭からすっぽりとフードをかぶっているその男は烏哭禅。関東一のハッカーとも噂されるS・ウルフの参謀であり現実が仮想、電子の世界が現実であると本気で語る男。そんな彼の淡白な表情に影が出来ていた。普段から顔色が良い方ではない奴ではあるが、しかめっ面をすることは非常に珍しい。
VIPルームに集まっている面々はみな動画の方に釘づけになっていたがキングの眼はしっかりと気がついていた。
「禅、どうかしたか?」
鋭く尖った氷柱のような声に禅は細い顎先を小さく前後させてうなずいた。しかし、問いには答えず耳に着けているイヤホンマイクに集中している。
「……どういう……こと…です?」
どうやら、誰かと話しているらしい。それでもキング・崇の声を無視して話すほどの相手が存在するのだろうか。ノートパソコンに集中していた皆の視線がはらはらと禅へと移る。
「……はい……はい……。」
それでも、なお電子の賢者は通話を切ろうとせずに、その表情は険しさと影を増していくばかりだった。彼の相づちする様子を眺めているとテーブルを叩いて立ちあがった。
「なん……だとっ!」
普段大声を出さない禅が癇癪を起し、その場に居る全員が目を見開いて、ただただ終始眺めているしかなかった。動画よりも唇を噛んで唸る禅の方が見ごたえがあるのかもしれない。指が真っ赤になるほど握った拳を解いて、ゆっくりと席に着いて、やっと口を開いた。その声は苦虫を奥歯ですり潰したかのように渋い。
「崇……さん、すみ……ません。ちょっ……と……こちらへ…来て……いただけま……すか。」
「どうした?」
本郷が動こうとしたがキングはソレを右手で制して立ちあがった。他の者も動くなと目で合図を送り禅の側まで歩いて立ち止まる。
「これを……耳に……」
禅は耳に着けていたのとは別のイヤホンマイクを崇に差し出した。さっと指で髪をかきあげ装着するとノイズ混じりの女の声が聞こえてくる。
『きひ……ひ、聞こえているかな?』
キングはジッと禅に視線をおくると、うなずき返してた。返事をしろということらしい。短く息を吐いてガキの王様は淡々といった。
「聞こえている。お前は誰で、何の用だ」
『きひひ、そういっぺんに質問しないでくれたまえ。僕のほうは時間がないんでねぇ。きひひひっ。』
「時間が無い?話したいから俺を呼びつけたんだろ。用件をいわないなら失せろ」
『きひ、きひひひっ。いやいや、これは失礼したねぇ。では、用件を言おう。まずはここまでのハッキングをしていた人ご苦労様でした。といってもぉ……僕がわ・ざ・と・ハッキングできるようにしておいたからね。きひひひ』
かんに触るような笑い声と分かりやすい嫌味まがいの挑発。顔色のよくない禅の頬が僅かに赤みをさしている。怒り……もしくは恥じているのかも知れない。崇はいった。
「切るぞ」
『小鳥遊悠』
通話を切れっと出そうとしたハンドサインが止まる。崇と禅は声に集中した。
『彼はコンゴウに勝つのは無理だろう。それでもカシワを目指すのをやめようとしない。どうだろう、ボクと取引しないか?』
「続けろ」
『僕らがタカナシカシワを倒してあげる。だから、キミ達はタカナシ悠を止めろ。』
禅は疑問する……この局面で小鳥遊柏を倒す手立てがあるのかということ、そして仮に止めるとしてもその方法だ。映像は見ていても手出しはおろか声の届く場所でもない。一瞬の間にあらゆる可能性を考慮する電子の賢者に対してキングの判断と決断は瞬間だった。
「断る。」
研ぎ澄まされた日本刀で竹を真っ二つにしたような英断のひと言。
『きひ、きひひひっひひひっひひ。』
通話の主は返答をどう捉えたのか笑っていた。とても、楽しそうに笑い続ける。数十秒間、狂った甲高い笑い声に耐えていると不意に水を打ったよに止まった。
『ココクタカシ、まさか悠の死を中継するつもりかい?』
「質問ばかりだな……まずはお前が何者か答えて、何をするつもりか答えたらどうだ。」
どちらが優位な立場というわけではない……っが、キングは媚びない、そして引かないのだ。しかし、向こうからの返答内容には流石の王様も目を見開いた。
『確かに自己紹介が遅れたね。僕の名前は八雲匣。タカナシ悠の許婚いわゆる……フィアンセさ。きひひひっ』