ー夏休み編ー技と力と策
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「お前はそうだろうな。分かっていたよ、お前はどれだけ強くなっても心の底では非情になりきれない……。気は優しくて力持ちとは良くいったものだな。」
褒められている気がしない。いや……きっと、嫌味でいっているに違いなかった。なんと返事をしていいのか分からず金剛は黙っていると、気にした様子もなく柏は喋りつづけた。
「だか、俺としては別にそんなことはどうでもいいんだ。大事なことは……金剛、お前はどっちだ?俺の敵の友は味方か?それとも敵か?摩耶と闘った奴は風前の灯だ。それでもお前は……奴と、小鳥遊悠をやれるか?」
悪魔からの問い。金剛は両の拳と拳をぶつけあった。
「とうぜんだ。俺だって何の考えも無くお前についたわけじゃない。仮に手負いの悠でも悠だ。油断できる相手じゃない。俺の出せる全力で迎え撃つだけだ。」
非情になれるかどうかというの別でも、悠と喧嘩したいという気持ちには嘘偽りはなった。摩耶の割り込は予想の外ではあったもののあんな喧嘩を見て滾らないわけがない。状況が状況だったら画面越しじゃなく肉眼で見たかった。その衝動を抑え込み今ここにいる。
真剣さは伝わったのか柏は尖ったあごの先を僅かに振った。そして、テーブルの上に何か黒くて硬い物を投げた。ガシャガシャと音を立てて回転するソレを指で止めた。無骨なそれは銃、迫力と質感から察するに本物だった。触れていた指を即座に外す。
柏がいった。
「そう怯えるな」
「な、なんだ、レプリカか」
「本物のグロックだ。撃っても足のつかないな」
それはつまり違法の品という事。
「お前の本音を聞けて良かった。もし、闘えないというのならこの銃で撃たらず得なかったからな……。」
冗談や脅しじゃなく本気、一歩間違えばこの男は平然とトリガー引いていただろう。日曜日のつぎが月曜日であるように確実に、絶対に……。もっとも身近にドレットノート(恐怖の根源)を再確認した一瞬だった。
「奴はすぐここまでたどり着くだろう。金剛、お前の出番だ。お前の決着をつけて来い」
「あぁ……そうさせてもらう。」
扉を開けて出ていこうとしたその時、風を切る音がした。首目掛けて飛んで来た銀刃を太い指で挟みつけて受け止める。それは殺意の籠った投擲刃、颯天が使っていた例の銀の鱗。金剛はゆっくりと振り返る。それをぶつけて来た男を見るために。
パチパチ……大きな拍手が二度鳴った。
「パーフェクト。合格だ金剛。今ここにAAA特別訓練の卒業を授与する。さぁ、行け……最後までその調子で悠にぶつけて来い。」
手荒い賞賛を受け止めて今度こそ本当に部屋を出た。ひとり残った悪魔は手を組んで立体映像として映る悠の姿を見つめた。訝しむように……そして、一文字に紡がれていた口の端が高くつり上がる。…………悪魔は笑った。
「くくっはははははっ。」
声をあげて笑い。自分のジャケットの襟元をおもむろに撫でた。指先に何かが触れてソレを指の腹に着けて目のまえに持ってくる。数ミリサイズのゴミのようなそれは盗聴器、恐らくは匣が仕掛けたのだろう。親指と人差し指の腹で押しつぶして、粉々になったものを地面に捨てた。
「どいつもこいつも……自分の策が、自分の行動が想定外だろうと思って動いてやがる。愚かしくて愉快だ、稲葉の横やり、匣の裏切り、何もかもが予想通りだ。踊れ踊れ、踊れ踊れ……俺の手のなかで、圧倒的な力で蹂躙してやれ金剛。」
キーボードを操作すると光っていた電子機器が橋から順に機動停止していく。悪魔もついに動き出した。金剛と悠の喧嘩を見るつもりも勝敗にも興味はない。どちらが勝っても、我が元へ片方が現れる。金剛ならばそのまま褒美でも治療でも受けさせてやればいい。だが、もし……悠だったならそこで完膚無きままに握り潰す。それだけの事だった。
真夜中までは時間がまだまだある、夜はこれからだ、一夜の夢は深く、本当の祭りはここから、これから始まるのだ。
褒められている気がしない。いや……きっと、嫌味でいっているに違いなかった。なんと返事をしていいのか分からず金剛は黙っていると、気にした様子もなく柏は喋りつづけた。
「だか、俺としては別にそんなことはどうでもいいんだ。大事なことは……金剛、お前はどっちだ?俺の敵の友は味方か?それとも敵か?摩耶と闘った奴は風前の灯だ。それでもお前は……奴と、小鳥遊悠をやれるか?」
悪魔からの問い。金剛は両の拳と拳をぶつけあった。
「とうぜんだ。俺だって何の考えも無くお前についたわけじゃない。仮に手負いの悠でも悠だ。油断できる相手じゃない。俺の出せる全力で迎え撃つだけだ。」
非情になれるかどうかというの別でも、悠と喧嘩したいという気持ちには嘘偽りはなった。摩耶の割り込は予想の外ではあったもののあんな喧嘩を見て滾らないわけがない。状況が状況だったら画面越しじゃなく肉眼で見たかった。その衝動を抑え込み今ここにいる。
真剣さは伝わったのか柏は尖ったあごの先を僅かに振った。そして、テーブルの上に何か黒くて硬い物を投げた。ガシャガシャと音を立てて回転するソレを指で止めた。無骨なそれは銃、迫力と質感から察するに本物だった。触れていた指を即座に外す。
柏がいった。
「そう怯えるな」
「な、なんだ、レプリカか」
「本物のグロックだ。撃っても足のつかないな」
それはつまり違法の品という事。
「お前の本音を聞けて良かった。もし、闘えないというのならこの銃で撃たらず得なかったからな……。」
冗談や脅しじゃなく本気、一歩間違えばこの男は平然とトリガー引いていただろう。日曜日のつぎが月曜日であるように確実に、絶対に……。もっとも身近にドレットノート(恐怖の根源)を再確認した一瞬だった。
「奴はすぐここまでたどり着くだろう。金剛、お前の出番だ。お前の決着をつけて来い」
「あぁ……そうさせてもらう。」
扉を開けて出ていこうとしたその時、風を切る音がした。首目掛けて飛んで来た銀刃を太い指で挟みつけて受け止める。それは殺意の籠った投擲刃、颯天が使っていた例の銀の鱗。金剛はゆっくりと振り返る。それをぶつけて来た男を見るために。
パチパチ……大きな拍手が二度鳴った。
「パーフェクト。合格だ金剛。今ここにAAA特別訓練の卒業を授与する。さぁ、行け……最後までその調子で悠にぶつけて来い。」
手荒い賞賛を受け止めて今度こそ本当に部屋を出た。ひとり残った悪魔は手を組んで立体映像として映る悠の姿を見つめた。訝しむように……そして、一文字に紡がれていた口の端が高くつり上がる。…………悪魔は笑った。
「くくっはははははっ。」
声をあげて笑い。自分のジャケットの襟元をおもむろに撫でた。指先に何かが触れてソレを指の腹に着けて目のまえに持ってくる。数ミリサイズのゴミのようなそれは盗聴器、恐らくは匣が仕掛けたのだろう。親指と人差し指の腹で押しつぶして、粉々になったものを地面に捨てた。
「どいつもこいつも……自分の策が、自分の行動が想定外だろうと思って動いてやがる。愚かしくて愉快だ、稲葉の横やり、匣の裏切り、何もかもが予想通りだ。踊れ踊れ、踊れ踊れ……俺の手のなかで、圧倒的な力で蹂躙してやれ金剛。」
キーボードを操作すると光っていた電子機器が橋から順に機動停止していく。悪魔もついに動き出した。金剛と悠の喧嘩を見るつもりも勝敗にも興味はない。どちらが勝っても、我が元へ片方が現れる。金剛ならばそのまま褒美でも治療でも受けさせてやればいい。だが、もし……悠だったならそこで完膚無きままに握り潰す。それだけの事だった。
真夜中までは時間がまだまだある、夜はこれからだ、一夜の夢は深く、本当の祭りはここから、これから始まるのだ。