ー夏休み編ー技と力と策
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島中の映像を見まわしたが、その三人だけはどこにも映っていなかった。柏がいう。
「恐らく……匣が拉致ったんだろう。そして地下かどこかに監禁している。まぁ、そんな奴らのことはどうでもいい。光臣」
名を呼ばれ、抜いていた刀を鞘に納めて柏の正面に立った。操られた人形のようにゼロフレームで膝を折って跪いく。
「小鳥遊悠を始末してきます」
「違う」
悪魔は一蹴する。その答えは予想外。傅いていた光臣のこうべがあがった。
「お前は稲葉達を抑えて来い。今問題なのは悠じゃなく、氷室薫あの男だ。万が一に割りこまれのだけは避けたい。いや、避けたいじゃない。避けなければならない。光臣……俺の命令に不服があるか?」
「いえ、我が主の命を遂行するのが私の役目、我が喜びでございます。」
光臣はあげた頭を深く下げ直した。その様子を後ろで見ていたがどう考えても異常だった。この数週間、柏の下で色々な奴と知り合った。誰も彼もひと癖、ふた癖ある連中だったがそのなかでこの石田光臣の忠誠心は常軌を逸していた。仮に今すぐここで死ねと命令されたら喜んで自分から刀で首を落としかねない……そんなB級サイコ映画みたいな真似を実行する狂人なのだ。それを指揮するのが柏という悪魔。悪魔と狂信者……おぞましい主従関係だ。
その悪魔は命令を下した。
「さぁ、行け。あの一団を止めて来い」
「御意っ!」
鎖から解き放たれた猟犬は獲物を目指して飛び出していった。ここが地下じゃなかったら窓を突き破って出ていっていたかもしれない。呆れを通りこして呆然としている金剛の肩を叩いて柏がいった。笑いを含んだ声だ。
「哀れな男だろ。」
「哀れっていうのか……あれ?柏にご奉仕できて嬉しいですって尻尾振ってるじゃないか」
「アイツは哀れさ。自分がない、空っぽな男だ……。奴が既婚者という話しを覚えてるか?」
「あぁ、衝撃的過ぎて忘れられない。」
「確かに既婚者だという言葉だけなら意外かもしれない。だが、こう付け加えたらどうだ……俺が命令した。あの女と結婚しろ、政略結婚しろ。案の定……あいつはキッチリと命令に従った。結婚来、新婚生活はおろか初夜も式も無し、旅行などありえない。」
聞いていて哀れなのは嫁さんじゃないかと思った。あの男が優しい言葉を一度でもかけたり、告白というかプロポーズするという絵が全然浮かばなかった。
「俺を軽蔑するか?」
「さぁな……俺はアンタらの関係や仕事を軽蔑したり尊敬したりできる物差しを持っていない。」
「図体のわりに中身の小さい男だ。まぁ……何を言われても別に気にはしなかったが。一応それでも結婚した光臣と奴の妻には俺から指輪を送ってやった。日本でエンゲージリングといえば金が普通だが、プラチナの物をな。」
軽くいったがきっと値段は桁が一つか二つ違うのだろうと金剛は考えた。婚約指輪の相場なんて分かってはいないが、俗にいう給料三カ月分だろうか。
「なぜ俺がそんな真似をしたか分かるか?」
首を振った。間入れずに柏は続ける。
「光臣は装飾品は一切身に着けない。ピアスはおろかタトゥーもな。だから、婚約指輪なんて発想がなかった。俺も無視してやっても良かったが流石に嫁を憐れんでな。俺からの贈り物として渡してやった。そうすれば光臣はソレを着ける絶対にな……。逆を言えば例え妻が選んで買っても着けはしないしゴミといって捨てる可能性が高い。」
無茶苦茶な話しだ。夫婦といういみが本当になり立っていない。いくら政略結婚でもおかしすぎる。地味に胸くその悪さを感じつつ金剛はいった。
「だけど、あの男が指輪をしている姿なんか見たことないぞ。」
「首にいつもひもを巻いているだろあの先に吊るしてある。」
いわれたが見たことなかった。なにせ光臣の身体は病的に細い骨の上に搾った筋肉を埋め込んでいるような身体だ。首に何か巻いていたとしてもよっぽど馬鹿みたいにドデカイネックレスでなければ鎖骨まで垂れさがってしまって服で隠れてしまう事だろう。
「奴の弱点は俺だ。仮に俺が死ねば、やつも遅かれ早かれ餓死して死ぬ。命令を下す者がいないと生きていけない哀れで弱い生き物だ……。」
マップには外に出て走っていく哀れな狂犬が走っている映像が映し出される。きっと最後の最後まであの男は走りまわって息絶えるのだろう。
「この際だからいうが……悠のことだって恨んだりは決してしない。どんな立場になっても俺と悠はダチだ。」
殴られる、奥歯を食いしばって覚悟をしたが、予想外に拳も蹴りも飛んでこなかった。けれど、どこから何か投げてくる可能性がある。ぶつけられてもいいように気張りながら柏の後姿を目線だけで追う。
「恐らく……匣が拉致ったんだろう。そして地下かどこかに監禁している。まぁ、そんな奴らのことはどうでもいい。光臣」
名を呼ばれ、抜いていた刀を鞘に納めて柏の正面に立った。操られた人形のようにゼロフレームで膝を折って跪いく。
「小鳥遊悠を始末してきます」
「違う」
悪魔は一蹴する。その答えは予想外。傅いていた光臣のこうべがあがった。
「お前は稲葉達を抑えて来い。今問題なのは悠じゃなく、氷室薫あの男だ。万が一に割りこまれのだけは避けたい。いや、避けたいじゃない。避けなければならない。光臣……俺の命令に不服があるか?」
「いえ、我が主の命を遂行するのが私の役目、我が喜びでございます。」
光臣はあげた頭を深く下げ直した。その様子を後ろで見ていたがどう考えても異常だった。この数週間、柏の下で色々な奴と知り合った。誰も彼もひと癖、ふた癖ある連中だったがそのなかでこの石田光臣の忠誠心は常軌を逸していた。仮に今すぐここで死ねと命令されたら喜んで自分から刀で首を落としかねない……そんなB級サイコ映画みたいな真似を実行する狂人なのだ。それを指揮するのが柏という悪魔。悪魔と狂信者……おぞましい主従関係だ。
その悪魔は命令を下した。
「さぁ、行け。あの一団を止めて来い」
「御意っ!」
鎖から解き放たれた猟犬は獲物を目指して飛び出していった。ここが地下じゃなかったら窓を突き破って出ていっていたかもしれない。呆れを通りこして呆然としている金剛の肩を叩いて柏がいった。笑いを含んだ声だ。
「哀れな男だろ。」
「哀れっていうのか……あれ?柏にご奉仕できて嬉しいですって尻尾振ってるじゃないか」
「アイツは哀れさ。自分がない、空っぽな男だ……。奴が既婚者という話しを覚えてるか?」
「あぁ、衝撃的過ぎて忘れられない。」
「確かに既婚者だという言葉だけなら意外かもしれない。だが、こう付け加えたらどうだ……俺が命令した。あの女と結婚しろ、政略結婚しろ。案の定……あいつはキッチリと命令に従った。結婚来、新婚生活はおろか初夜も式も無し、旅行などありえない。」
聞いていて哀れなのは嫁さんじゃないかと思った。あの男が優しい言葉を一度でもかけたり、告白というかプロポーズするという絵が全然浮かばなかった。
「俺を軽蔑するか?」
「さぁな……俺はアンタらの関係や仕事を軽蔑したり尊敬したりできる物差しを持っていない。」
「図体のわりに中身の小さい男だ。まぁ……何を言われても別に気にはしなかったが。一応それでも結婚した光臣と奴の妻には俺から指輪を送ってやった。日本でエンゲージリングといえば金が普通だが、プラチナの物をな。」
軽くいったがきっと値段は桁が一つか二つ違うのだろうと金剛は考えた。婚約指輪の相場なんて分かってはいないが、俗にいう給料三カ月分だろうか。
「なぜ俺がそんな真似をしたか分かるか?」
首を振った。間入れずに柏は続ける。
「光臣は装飾品は一切身に着けない。ピアスはおろかタトゥーもな。だから、婚約指輪なんて発想がなかった。俺も無視してやっても良かったが流石に嫁を憐れんでな。俺からの贈り物として渡してやった。そうすれば光臣はソレを着ける絶対にな……。逆を言えば例え妻が選んで買っても着けはしないしゴミといって捨てる可能性が高い。」
無茶苦茶な話しだ。夫婦といういみが本当になり立っていない。いくら政略結婚でもおかしすぎる。地味に胸くその悪さを感じつつ金剛はいった。
「だけど、あの男が指輪をしている姿なんか見たことないぞ。」
「首にいつもひもを巻いているだろあの先に吊るしてある。」
いわれたが見たことなかった。なにせ光臣の身体は病的に細い骨の上に搾った筋肉を埋め込んでいるような身体だ。首に何か巻いていたとしてもよっぽど馬鹿みたいにドデカイネックレスでなければ鎖骨まで垂れさがってしまって服で隠れてしまう事だろう。
「奴の弱点は俺だ。仮に俺が死ねば、やつも遅かれ早かれ餓死して死ぬ。命令を下す者がいないと生きていけない哀れで弱い生き物だ……。」
マップには外に出て走っていく哀れな狂犬が走っている映像が映し出される。きっと最後の最後まであの男は走りまわって息絶えるのだろう。
「この際だからいうが……悠のことだって恨んだりは決してしない。どんな立場になっても俺と悠はダチだ。」
殴られる、奥歯を食いしばって覚悟をしたが、予想外に拳も蹴りも飛んでこなかった。けれど、どこから何か投げてくる可能性がある。ぶつけられてもいいように気張りながら柏の後姿を目線だけで追う。