ー夏休み編ー技と力と策
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「ねぇ……悠くん。覚えてる?僕たちはこうして出会ったんだよ。なんの因果か、運命か今も同じように拳を重ね合ってる。僕は今ものすっごく幸せだよ……。悠君――」
何かを言いかけた摩耶の言葉を遮って俺はいった。
「摩耶、因果も運命も関係ない。摩耶がそうしたいと思ったからこうなった。っていうか……ありがとう。」
摩耶は目を大きく見開いた。一瞬口元が緩んだが、すぐに一文字に閉じる。
「ずるいな……僕が言おうとしたこというんだから。」
「もっと言いたいことはあるぜ?」
「じゃあ、それは勝った方が言おう」
「あぁ、そうしよう」
「うん、そうしよう」
互いに相手を見据えた。ふたまわりは小さな摩耶だが、俺の目に映るのは黒と白の水自由自在に容を変化させて、時には鋭く、時にはぶ厚く変貌を遂げて襲いかかってくる。世界の始まりから今までを記憶し続けた武の歴史をその身に刻んだ摩耶に俺は震えがきた。武者ぶるいと強がる。だって、それが俺の心からの本心だ。これが本当のラスト……拳を握った。小指から薬指、中指と順に各指の根元へと折っていく、そして今度は人差し指から順に折りたたみ仕上げは親指で絞める。力を掴み、握り込む。掴んだ力を……打ちこむ。人類最古にして最強の武器。武の歴史に力の歴史で対抗する。
「すぅぅぅぅ……!」
「はぁぁぁぁ……!」
二人の間を一枚の花弁が落ちていく。それが地につく瞬間……悠と摩耶の背後の地面が抉れた。拳骨が顔面を打つ音はいましがたの武器対決の音を遥かに凌駕した轟音だった。
あらゆる急所が集中する顔面のド中心をぶち抜いた俺の拳。摩耶のビグンッと大きく身体を跳ねた。何とはいわないが俺の拳に液体が伝ってボタボタと落ちていく。おれは笑った
「……摩耶、お前の勝ちだわ」
おれは血を噴き出して顔に突きたてた拳が力なくズレ落ちる。摩耶の拳は上腹部のほぼ中央に、当てている。その拳をそっと外した瞬間おれは前倒れになった。摩耶は両手を広げて抱きしめて支えてくれる。
寸剄。摩耶はこの局面まで氣を練りに練っていた。防御にも回復にも使わずに圧縮に圧縮し、濃厚にした極上の功氣剄。それを最後の最後でとき放った。外傷こそないものの体内へ打ちこまれた氣は既に潜んでいた翠龍の氣依を吹き飛ばし爆ぜた。その勢いは体内だけに済まず悠の背中の服は弾け飛んでいた。
顔が潰れて口の中も切れているであろう摩耶は喋りにくそうに口を動かした。
「敵を……倒して、最後に立っ……て、いた者が勝者…………じゃない、笑えた奴が勝者だよ……。悠、くんっ……やっぱり強いよ悠くん、は…。」
自分の腕のなかで微笑む悠が本物の勝者だと伝えて小さき勇敢な強者は、勝者を抱きしめたまま仰向けに倒れた。花弁が舞う。二人を包み込むように……。
シンっと静まり返るビオプラートドーム。蚊帳の外状態だった三人の少女は誰からとなく駆けだした。倒れている漢二人は生きてるのかと恐ろしい想像が脳裏によぎる中、ざっと悠が摩耶を片手でだき抱えて立ちあがった。
「師匠!」
「悠くん!」
「悠!」
飛び交う黄色い声におれは返事をする。
「はぁ……ごふっ……。駒裡さん」
「はひゅい!」
「摩耶の治療頼むわ。」
おれはボロボロの布切れに化した上着とインナーシャツを脱いで背中に挟むようにして木にもたれかけさせた。殴ったのはおれだが鼻は折れて唇は切れて血まみれのぐちゃぐちゃだ。白いというより青白い首筋に手を当てたトクトクっと脈は有る死んではない。良かった。応急手当さえすればすぐに動けるようになるだろう。
「摩耶くんの治療はしますけど悠くんも座ってください!!私もう、ほんとうに死んじゃうんじゃないかって……」
堰が切れたようにボロボロと涙の玉をこぼしながら訴えてくる彼女におれは苦笑いした。
何かを言いかけた摩耶の言葉を遮って俺はいった。
「摩耶、因果も運命も関係ない。摩耶がそうしたいと思ったからこうなった。っていうか……ありがとう。」
摩耶は目を大きく見開いた。一瞬口元が緩んだが、すぐに一文字に閉じる。
「ずるいな……僕が言おうとしたこというんだから。」
「もっと言いたいことはあるぜ?」
「じゃあ、それは勝った方が言おう」
「あぁ、そうしよう」
「うん、そうしよう」
互いに相手を見据えた。ふたまわりは小さな摩耶だが、俺の目に映るのは黒と白の水自由自在に容を変化させて、時には鋭く、時にはぶ厚く変貌を遂げて襲いかかってくる。世界の始まりから今までを記憶し続けた武の歴史をその身に刻んだ摩耶に俺は震えがきた。武者ぶるいと強がる。だって、それが俺の心からの本心だ。これが本当のラスト……拳を握った。小指から薬指、中指と順に各指の根元へと折っていく、そして今度は人差し指から順に折りたたみ仕上げは親指で絞める。力を掴み、握り込む。掴んだ力を……打ちこむ。人類最古にして最強の武器。武の歴史に力の歴史で対抗する。
「すぅぅぅぅ……!」
「はぁぁぁぁ……!」
二人の間を一枚の花弁が落ちていく。それが地につく瞬間……悠と摩耶の背後の地面が抉れた。拳骨が顔面を打つ音はいましがたの武器対決の音を遥かに凌駕した轟音だった。
あらゆる急所が集中する顔面のド中心をぶち抜いた俺の拳。摩耶のビグンッと大きく身体を跳ねた。何とはいわないが俺の拳に液体が伝ってボタボタと落ちていく。おれは笑った
「……摩耶、お前の勝ちだわ」
おれは血を噴き出して顔に突きたてた拳が力なくズレ落ちる。摩耶の拳は上腹部のほぼ中央に、当てている。その拳をそっと外した瞬間おれは前倒れになった。摩耶は両手を広げて抱きしめて支えてくれる。
寸剄。摩耶はこの局面まで氣を練りに練っていた。防御にも回復にも使わずに圧縮に圧縮し、濃厚にした極上の功氣剄。それを最後の最後でとき放った。外傷こそないものの体内へ打ちこまれた氣は既に潜んでいた翠龍の氣依を吹き飛ばし爆ぜた。その勢いは体内だけに済まず悠の背中の服は弾け飛んでいた。
顔が潰れて口の中も切れているであろう摩耶は喋りにくそうに口を動かした。
「敵を……倒して、最後に立っ……て、いた者が勝者…………じゃない、笑えた奴が勝者だよ……。悠、くんっ……やっぱり強いよ悠くん、は…。」
自分の腕のなかで微笑む悠が本物の勝者だと伝えて小さき勇敢な強者は、勝者を抱きしめたまま仰向けに倒れた。花弁が舞う。二人を包み込むように……。
シンっと静まり返るビオプラートドーム。蚊帳の外状態だった三人の少女は誰からとなく駆けだした。倒れている漢二人は生きてるのかと恐ろしい想像が脳裏によぎる中、ざっと悠が摩耶を片手でだき抱えて立ちあがった。
「師匠!」
「悠くん!」
「悠!」
飛び交う黄色い声におれは返事をする。
「はぁ……ごふっ……。駒裡さん」
「はひゅい!」
「摩耶の治療頼むわ。」
おれはボロボロの布切れに化した上着とインナーシャツを脱いで背中に挟むようにして木にもたれかけさせた。殴ったのはおれだが鼻は折れて唇は切れて血まみれのぐちゃぐちゃだ。白いというより青白い首筋に手を当てたトクトクっと脈は有る死んではない。良かった。応急手当さえすればすぐに動けるようになるだろう。
「摩耶くんの治療はしますけど悠くんも座ってください!!私もう、ほんとうに死んじゃうんじゃないかって……」
堰が切れたようにボロボロと涙の玉をこぼしながら訴えてくる彼女におれは苦笑いした。