ー夏休み編ー技と力と策
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俺は杖代わりにしている刀を今一度正眼に構えたが、両手で支える刀が急に重くなった。見えない力に押されたかのように刀身が静かに下がっていく。切っ先は地面について構えているというより支えているような形だ。摩耶がいった。
「もう、刀を構える元気も無いみたいだね。」
「…………」
俺は左手を柄から離した。腰を落とし、右手のみで握る刀を左腰に携え。空いている左手はツバの前に添える。居合。鞘がないため抜き身ではあるが居合の型に構えた。摩耶の顔色が変わる。互いの間合いは約二間。三尺は有る琨を使っている摩耶には有利な距離であるからこそ突きに徹していられた。抜き身の俺が取れる理想的で唯一通る行動は突きを弾き返して、その隙に間合いを詰めて斬り込むことだ。時間をかけて一撃、一撃を迎撃していけばいつかは来る隙を狙うはず……。だった、だが、今は違う。捌き続けてたらじり貧で先に潰れるのは俺だ。ならば、この手、この一手しかないのだ。次の摩耶の攻め手もろとも叩き斬る。弾き断つでは間に合わない。琨もろとも本人を斬るのだ。
「悠くん。まさか、出来ると思ってるの?僕が穿つ琨の位置を見定めたうえ、その数センチしかない先端を数ミリの刃の腹で捉えて払い抜けるなんて?」
摩耶は俺の身体のどこを狙ってもいい、当たればそこは壊れるだろう。対して俺は全長180センチオーバーの表面全てに気を配り、銃弾のような速度で迫ってくるペットボトルの蓋をひとまわり大きくした程度しかない穂先を狙う。無理難題、なんとも部の悪い賭けだ。それでもこれしかない、これで決めるしかないのだ。
「出来るか、出来ないかじゃない……やってやる。」
「……カッコイイね。なら、僕もカッコつけるよ。」
摩耶は琨を自分の首の高さまで掲げた。それは俺の胸の高さ……。そして、構えも大きく変わった。左手で琨の中ほどを握って右こぶしを逆の根元にセットする。巨大な矢を装填して弓みたいだ。
「極点突破琨崩拳……崩拳で琨を打って、心臓を狙う。」
「随分と優しいな。」
「優しくはないでしょ。殺すっていってるんだから」
「ははっ……安心しろ。お前には殺されてやらないし、死んでやらないから。」
俺たちは静かに笑った。そして、いつしか声は消えた。忘れていたがここはドームのなか。制御管理された空調の風がときおり桜の枝を優しく揺らしはらはらと花弁が舞う。互いの心音が聞こえてきそうなほど相手に集中し合うなか、その時を待つ。ゼロからヒャクになる瞬間、爆発するそのタイミングを捉える。
「……」
「……」
「……」
「……」
膨張に膨張した時が破裂した。ボヒュッとミサイルが発射したような音が耳に届いた頃には数十センチのところまで穂先が近づいていた。俺も弾ける。肩が、腰が、全身の筋という筋が軋みブチチッと千切れる音とともに刀身を抜いた。レプリカ(刃引き)でも添えていた左手の肉を断ち、肉轢く手応えのあと硬いものにあたる衝撃刀もろとも右手が引っこ抜かれそうな衝撃。それでも引けない!へし折れるほど奥歯を食いしばり、足が裂けるほど地面を踏みしめ、砲琨を切り裂いた。
「ぐっ!」
「がっ!」
生木を引き裂く旋律と金属の千切れる騒音の果て一刀両断されパックリと開きになった琨とそのはるか後方でひゅんひゅんと音を切って刀身が地面に突き刺さった。結果は……相殺。
柄のみを握った俺は真横に居る摩耶に言った。
「どうするよ……。」
「互いに立ってるね……。」
立っている。立ってはいるが精神も肉体もボロボロの二人だった。もう十分戦った、手を取り合って互いの健闘をたたえ合っても誰も文句は言わない。それほど熾烈で激闘だった。悠は摩耶の決闘を受けた、摩耶も自身の強さを知らしめた。それでいいじゃないか……決着は引き分け。二人を引き目に見ていた駒裡たちはそう思っていたが、期待は裏切られた。
俺は手に持った柄を捨てていった。
「もう、小細工も何も無しだ。摩耶…………一撃だ。一撃勝負をしよう。」
「そう……だね。そうしよう。」
俺と摩耶は同時に一歩踏み出した。そしてふり返り合った。大人と子供程の体格差がある二人はゆっくりと腕を伸ばして拳のさきとさきをコツンと軽くぶつけた。
「もう、刀を構える元気も無いみたいだね。」
「…………」
俺は左手を柄から離した。腰を落とし、右手のみで握る刀を左腰に携え。空いている左手はツバの前に添える。居合。鞘がないため抜き身ではあるが居合の型に構えた。摩耶の顔色が変わる。互いの間合いは約二間。三尺は有る琨を使っている摩耶には有利な距離であるからこそ突きに徹していられた。抜き身の俺が取れる理想的で唯一通る行動は突きを弾き返して、その隙に間合いを詰めて斬り込むことだ。時間をかけて一撃、一撃を迎撃していけばいつかは来る隙を狙うはず……。だった、だが、今は違う。捌き続けてたらじり貧で先に潰れるのは俺だ。ならば、この手、この一手しかないのだ。次の摩耶の攻め手もろとも叩き斬る。弾き断つでは間に合わない。琨もろとも本人を斬るのだ。
「悠くん。まさか、出来ると思ってるの?僕が穿つ琨の位置を見定めたうえ、その数センチしかない先端を数ミリの刃の腹で捉えて払い抜けるなんて?」
摩耶は俺の身体のどこを狙ってもいい、当たればそこは壊れるだろう。対して俺は全長180センチオーバーの表面全てに気を配り、銃弾のような速度で迫ってくるペットボトルの蓋をひとまわり大きくした程度しかない穂先を狙う。無理難題、なんとも部の悪い賭けだ。それでもこれしかない、これで決めるしかないのだ。
「出来るか、出来ないかじゃない……やってやる。」
「……カッコイイね。なら、僕もカッコつけるよ。」
摩耶は琨を自分の首の高さまで掲げた。それは俺の胸の高さ……。そして、構えも大きく変わった。左手で琨の中ほどを握って右こぶしを逆の根元にセットする。巨大な矢を装填して弓みたいだ。
「極点突破琨崩拳……崩拳で琨を打って、心臓を狙う。」
「随分と優しいな。」
「優しくはないでしょ。殺すっていってるんだから」
「ははっ……安心しろ。お前には殺されてやらないし、死んでやらないから。」
俺たちは静かに笑った。そして、いつしか声は消えた。忘れていたがここはドームのなか。制御管理された空調の風がときおり桜の枝を優しく揺らしはらはらと花弁が舞う。互いの心音が聞こえてきそうなほど相手に集中し合うなか、その時を待つ。ゼロからヒャクになる瞬間、爆発するそのタイミングを捉える。
「……」
「……」
「……」
「……」
膨張に膨張した時が破裂した。ボヒュッとミサイルが発射したような音が耳に届いた頃には数十センチのところまで穂先が近づいていた。俺も弾ける。肩が、腰が、全身の筋という筋が軋みブチチッと千切れる音とともに刀身を抜いた。レプリカ(刃引き)でも添えていた左手の肉を断ち、肉轢く手応えのあと硬いものにあたる衝撃刀もろとも右手が引っこ抜かれそうな衝撃。それでも引けない!へし折れるほど奥歯を食いしばり、足が裂けるほど地面を踏みしめ、砲琨を切り裂いた。
「ぐっ!」
「がっ!」
生木を引き裂く旋律と金属の千切れる騒音の果て一刀両断されパックリと開きになった琨とそのはるか後方でひゅんひゅんと音を切って刀身が地面に突き刺さった。結果は……相殺。
柄のみを握った俺は真横に居る摩耶に言った。
「どうするよ……。」
「互いに立ってるね……。」
立っている。立ってはいるが精神も肉体もボロボロの二人だった。もう十分戦った、手を取り合って互いの健闘をたたえ合っても誰も文句は言わない。それほど熾烈で激闘だった。悠は摩耶の決闘を受けた、摩耶も自身の強さを知らしめた。それでいいじゃないか……決着は引き分け。二人を引き目に見ていた駒裡たちはそう思っていたが、期待は裏切られた。
俺は手に持った柄を捨てていった。
「もう、小細工も何も無しだ。摩耶…………一撃だ。一撃勝負をしよう。」
「そう……だね。そうしよう。」
俺と摩耶は同時に一歩踏み出した。そしてふり返り合った。大人と子供程の体格差がある二人はゆっくりと腕を伸ばして拳のさきとさきをコツンと軽くぶつけた。