ー夏休み編ー技と力と策
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払えば長刀、振れば太刀、突けば槍。そう語られたこともある琨。素人が操ればただの棒きれと同じだが、摩耶は違っていた八極拳は槍術にもルーツする拳法。彼は踏み込んだ。その体躯からは放たれたとは思えないほど超速の突きが向かってきた。
「ぬんっ!」
斜め下に刀を振った、刃の腹が突き向かう琨を弾き落とす。両手で柄を握っていなかったら弾かれてたのは俺のほうだっただろう。一歩前に出で切りこもうとしたが、摩耶は既に手中に琨をたぐり寄せて第二波を撃ってきた。踏み出した足を引いて今度は下から上へと弾きあげた。隙がない。弾いてからのコンマ数秒で琨を再装填し連打してくる奴の間合いに漬けこめる隙がまるでなかった。俺は一進一退しながら縦横無尽に襲い来る琨を弾き続ける。長期戦を強いられて不利になるのは摩耶だが今は違う。放たれてくる琨は一回一発が非常に重く迅い。弾くだけでもギリギリだ。一瞬でも集中が切れたら弾かれるのは俺の刀だ。最悪……貫かれる。
「くっ…はっ!」
降り注ぐ流星のような琨を弾きつづけける俺。アクション映画のワンシーンにも負けないほどの殺陣(たて)。ただし、これは本当に命がけ肩で息をし始める俺、ボタボタと汗が滝のように流れ落ちて顔を滴る。ここにきて琨の手数とスピードが増してくる。一進一退の攻防が一退一退へと圧されてゆく、少なからず余裕があった弾きが、いちフレームでも遅れたら貫かれる。どういうことだ……いくら摩耶でもおかしい。
追い込まれ始めた俺に不意に声をかけて来た。
「悠くん、汗……凄くかいてるよね」
「あぁ?」
もちろん突きは止まっていない。鉄のハンマーで釘を叩くような金属同士の鈍い衝突音が鳴り続ける。
「僕と悠君の体力差は歴然……だからね、僕は仕掛けたんだ。」
「な……にっ?!」
ガッイイィィン!!ここ一番で強力な突きを弾き返してやっと攻撃がやんだ。俺は刀を地面に突き立てて杖代わりにして立つ。翠龍の毒や今までのダメージじゃない、疲れだ。肩に太ももに重りでも縫いつけられたような疲労が圧し掛かっている。摩耶は弾かれても衝撃に逆らわず受け入れて肩から振り回すことで自身の疲れを最小限にしているのは知っていた。それにしてもこの差は異常、よく見てみれば摩耶はさほど汗をかいていない。少なくとも水を頭からかぶったような俺よりかは……。
奴は琨ゆっくりと垂直に振り降ろしていった。
「そこって何がある?」
琨の穂先にあるものの事をいってるのだろうか、その先にあるのは俺の右横腹、あばら骨の下の辺りだ。ここで、おれはハッとなった。思いついたのではなく気づかされた。人間最大のエネルギー貯蔵庫たる臓器官……肝臓の位置。
「肝臓は人体でもっとも大きく、もっとも重く、もっとも高温の器官。その役割を……悠君はしってるよね?」
肝臓のおもなはたらきは4つ「胆汁の生産」「養分の流通」「尿素の生産」「有害物の処理」
胆汁はいったん胆のうにためられてから小腸に送り出されます。小腸の柔毛の毛細血管で吸収された養分は、門脈を通って肝臓に送られる。
肝臓は養分を貯蔵しやすい物質に作り変えて、必要に応じて養分をからだが利用できる形に作り変えて全身に送る。 細胞から出た有害なアンモニアを、害の少ない尿素に作り変えて尿素はその後、じん臓に運ばれてこしとられ、尿として排出される。そして体内に入ってしまった有害物をこわして、無害なものに作り変えもする。
もし仮に何らかのショックで腎臓がうまく機能しなかったら、身体に送り込まれてくるエネルギーは停止して有害な物を処理できなくなる。つまり、一時的とはいえ……体力が回復しなくなってしまう。当然そうなれば身体は疲れていく一方だ。
「無尽蔵ともいえる悠君のスタミナ(体力)、そしてけた外れの回復力とタフネス(耐久力)。僕は……それが難問だった。言いたくはないけれど埋められない差。長期戦になれば先に力尽きるのは僕の方だ。だから……この手段を取った。肝機能の一時的破壊。いくら悠君でも内臓をピンポイントで回復したり、強固な骨や筋肉をつけることは不可能。力で負けても技術でカバーし智恵を使う。これが僕の……策だよ。」
俺は肩で息をしながら静かに聞き入っていた。完敗だ。摩耶は決しておれに劣っちゃいない。策を講じたことも恥ずべきことじゃない。むしろ相当な技術あっての行動だ。摩耶は軽く肝臓を狙ったといったが、寸分たがわずそこを打つことがどれだけ難しいだろうか。ミドルレンジで攻撃を捌きながらカウンターで狙うこともせず自ら不利とする接近戦へ、敵の懐へ飛び込んで闘う勇気。力で負けるだって?八極拳だって見事だったし、現に俺はあの体躯に押しつぶされかけた。彼は何に恥じることもない強者だ。
「ぬんっ!」
斜め下に刀を振った、刃の腹が突き向かう琨を弾き落とす。両手で柄を握っていなかったら弾かれてたのは俺のほうだっただろう。一歩前に出で切りこもうとしたが、摩耶は既に手中に琨をたぐり寄せて第二波を撃ってきた。踏み出した足を引いて今度は下から上へと弾きあげた。隙がない。弾いてからのコンマ数秒で琨を再装填し連打してくる奴の間合いに漬けこめる隙がまるでなかった。俺は一進一退しながら縦横無尽に襲い来る琨を弾き続ける。長期戦を強いられて不利になるのは摩耶だが今は違う。放たれてくる琨は一回一発が非常に重く迅い。弾くだけでもギリギリだ。一瞬でも集中が切れたら弾かれるのは俺の刀だ。最悪……貫かれる。
「くっ…はっ!」
降り注ぐ流星のような琨を弾きつづけける俺。アクション映画のワンシーンにも負けないほどの殺陣(たて)。ただし、これは本当に命がけ肩で息をし始める俺、ボタボタと汗が滝のように流れ落ちて顔を滴る。ここにきて琨の手数とスピードが増してくる。一進一退の攻防が一退一退へと圧されてゆく、少なからず余裕があった弾きが、いちフレームでも遅れたら貫かれる。どういうことだ……いくら摩耶でもおかしい。
追い込まれ始めた俺に不意に声をかけて来た。
「悠くん、汗……凄くかいてるよね」
「あぁ?」
もちろん突きは止まっていない。鉄のハンマーで釘を叩くような金属同士の鈍い衝突音が鳴り続ける。
「僕と悠君の体力差は歴然……だからね、僕は仕掛けたんだ。」
「な……にっ?!」
ガッイイィィン!!ここ一番で強力な突きを弾き返してやっと攻撃がやんだ。俺は刀を地面に突き立てて杖代わりにして立つ。翠龍の毒や今までのダメージじゃない、疲れだ。肩に太ももに重りでも縫いつけられたような疲労が圧し掛かっている。摩耶は弾かれても衝撃に逆らわず受け入れて肩から振り回すことで自身の疲れを最小限にしているのは知っていた。それにしてもこの差は異常、よく見てみれば摩耶はさほど汗をかいていない。少なくとも水を頭からかぶったような俺よりかは……。
奴は琨ゆっくりと垂直に振り降ろしていった。
「そこって何がある?」
琨の穂先にあるものの事をいってるのだろうか、その先にあるのは俺の右横腹、あばら骨の下の辺りだ。ここで、おれはハッとなった。思いついたのではなく気づかされた。人間最大のエネルギー貯蔵庫たる臓器官……肝臓の位置。
「肝臓は人体でもっとも大きく、もっとも重く、もっとも高温の器官。その役割を……悠君はしってるよね?」
肝臓のおもなはたらきは4つ「胆汁の生産」「養分の流通」「尿素の生産」「有害物の処理」
胆汁はいったん胆のうにためられてから小腸に送り出されます。小腸の柔毛の毛細血管で吸収された養分は、門脈を通って肝臓に送られる。
肝臓は養分を貯蔵しやすい物質に作り変えて、必要に応じて養分をからだが利用できる形に作り変えて全身に送る。 細胞から出た有害なアンモニアを、害の少ない尿素に作り変えて尿素はその後、じん臓に運ばれてこしとられ、尿として排出される。そして体内に入ってしまった有害物をこわして、無害なものに作り変えもする。
もし仮に何らかのショックで腎臓がうまく機能しなかったら、身体に送り込まれてくるエネルギーは停止して有害な物を処理できなくなる。つまり、一時的とはいえ……体力が回復しなくなってしまう。当然そうなれば身体は疲れていく一方だ。
「無尽蔵ともいえる悠君のスタミナ(体力)、そしてけた外れの回復力とタフネス(耐久力)。僕は……それが難問だった。言いたくはないけれど埋められない差。長期戦になれば先に力尽きるのは僕の方だ。だから……この手段を取った。肝機能の一時的破壊。いくら悠君でも内臓をピンポイントで回復したり、強固な骨や筋肉をつけることは不可能。力で負けても技術でカバーし智恵を使う。これが僕の……策だよ。」
俺は肩で息をしながら静かに聞き入っていた。完敗だ。摩耶は決しておれに劣っちゃいない。策を講じたことも恥ずべきことじゃない。むしろ相当な技術あっての行動だ。摩耶は軽く肝臓を狙ったといったが、寸分たがわずそこを打つことがどれだけ難しいだろうか。ミドルレンジで攻撃を捌きながらカウンターで狙うこともせず自ら不利とする接近戦へ、敵の懐へ飛び込んで闘う勇気。力で負けるだって?八極拳だって見事だったし、現に俺はあの体躯に押しつぶされかけた。彼は何に恥じることもない強者だ。