ー夏休み編ー技と力と策
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おれの背中にいる摩耶は熱かった。ただ背中を突き合わせているだけなのに焼けるような熱量を感じる。出会いがしらの一撃が余程効いているらしい頭のなかで小さなジェイソンが暴れまくっている感じに頭が痛い。出来るだけ深く息を吸って、吐き出す。体内に空気を取り込み巡回させているとグッと背中に圧がかかる。もたれかかってきたのだろう。それに対しておれも圧を返した。後ろから声が飛んでくる。
「回復しようとしてる……ね。」
読まれてる。まぁ、ここまで近い距離で触れ合っていのだ呼吸の音どころか心音まで聴こえているだろう。
「正直……頭も痛いし肩も痛い、打たれて蹴られて殴られて、辛いよ。」
「そう。じゃあ、その痛いみをかき消すほどエンドルフィン分泌させなきゃね」
圧が一段階強くなる。負けじと足をしっかりと地面に踏み込んで押し返した。おれは聞いた。
「本気の……本気なんだな。摩耶?」
「しつこいよ。それに……問うのは僕の番だよ。悠君はまだ目線を別な相手に向けている。それで……僕に勝てる気でいるの?」
おれはすぐに答えを返せなかった。身長182センチメートルで体重は90キロオーバーの悠に今ぶつかっているのは身長160センチメートルで体重は悠の半分もない43キロ……誰が見ても肉体的に圧倒的なアドヴァンテージがある自分に向けられた言葉に……。摩耶は続ける。
「ほら……油断してる。悠君は弱くなってるね。いくら気の練度があがっても、強大な力を得ても、今の悠くんはただの木偶の坊だ。」
「好き放題いってくれるじゃねぇかっ。」
背中を突き合わせての口論。ただの口喧嘩にも見えるが、そうではなかった。悠と摩耶を第三者として見ている雷果達の目に映るのは二人の足。つま先が少しづつだが確実に地面のなかへ埋まっている。それは一見なんのアクションも起こしていない様子で、二人は今とんでも無い力で押し合っている証拠だった。水面下で起こっている。その戦火は一気に破裂した。
おれは背中から肩までの筋肉のこわばりを一気に解放した。向かい来る力が追い勝って摩耶が雪崩れてくる。おれは右足を軸に左足を半円に逸らして摩耶の両足をすかし抜いた。雪崩れるからだと払われた足で当然仰向けに倒れる奴の顔に拳を叩きこんだ。空中ではいかに摩耶でも回避は不可能。垂直落下で顔を捉えた拳だったが摩耶は両手でおれの拳を受け止めた。だが、それでどうなる。おれは力を緩めるわけはないし地面に受けた瞬間その手ごと顔を叩き潰せばいいのだ。後頭部が地面に触れる寸前、摩耶の下半身がピタリとおれの腕と重なった。ヤバい、咄嗟に何かが起こると頭のなかで警鐘が鳴って、事態は急変した。首の後ろから殴られたような衝撃とともにおれは目の前が真っ暗になって鼻や口、顔中に痛みと圧が襲いかかる。
冷たい地面に顔をうずめ鼻腔に土の匂いが入ってくるなかで何をされたのかがフラッシュバックする。叩き潰そうとしたおれの腕に摩耶は絡みついた。そして蹴ったのだ。おれの後頭部を
あとは単純にそのまま押し体重を乗せて圧し倒すだけ。摩耶の身長、あの短躯とそれをやってのける覚悟があるからこそ出来る技術。一歩間違えば顔は完全につぶれていたはずだ。倒れたままの自分の耳に声が届く。軟らかさと鋭さをもつ矛盾の刃物のような声。
「お返し」
おれは身体を振るった。跳ねるように転がると自分の頭があった場所に黒いシューズが落ちて来た。ストピングが続く。ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!右左右と顔を踏み潰そうと摩耶の足が襲ってきておれは必死に地面を転がり続けた。泥や雑草、桜の花びらが顔に張り付き口の中にも入る。マズイ。味の事じゃなく、このままだといずれ潰されるが立ちあがれない。景色か何転もするなかに桜の木が目に飛び込む。今しかない。次の転がりで上半身を僅かに起こした。木の根元にぶつかって肩に衝撃が駆け抜けるがそのバウンドを利用して立ちあがることに成功。首を振ってすぐ近くにいるはずの摩耶を探した。だが……見つからない。そのとき、懐にトッともたれかかる存在を感じた。視線が自然と下がり彼を発見する。おれは立て直したんじゃない。
腰をやや引き気味に落として両足を肩幅ほど広げて背中を自分に押しつけている摩耶がいった。
「そう……立て直したんじゃない。僕が追い込んだんだっ!!」
八極拳:鉄山靠、この島への航路で鈴猫でも体験したあの一撃。あの時は受け止める覚悟と準備が出来ていたからこそ最小限の被害で済んだ。だが今回は違う無防備かつゼロ距離。後ろは大木で退路も無い。おれは瞬時に腹筋へ力を込めたが、圧し飛ばされた。圧し飛ばされたという表現は間違っている。だが今はなにも考えられない。胸より下から腰から上に掛けて表現できない衝撃が当たって圧し潰していったのだから……。内臓は潰れ口から何もかも吐き出してしまいそうな圧迫とどこかの骨がきしみ細かく折れる音。意識が飛んでいくさなかに目に映ったのは無数に舞い散りおれと摩耶を覆い包む桜の花びらだった。
「回復しようとしてる……ね。」
読まれてる。まぁ、ここまで近い距離で触れ合っていのだ呼吸の音どころか心音まで聴こえているだろう。
「正直……頭も痛いし肩も痛い、打たれて蹴られて殴られて、辛いよ。」
「そう。じゃあ、その痛いみをかき消すほどエンドルフィン分泌させなきゃね」
圧が一段階強くなる。負けじと足をしっかりと地面に踏み込んで押し返した。おれは聞いた。
「本気の……本気なんだな。摩耶?」
「しつこいよ。それに……問うのは僕の番だよ。悠君はまだ目線を別な相手に向けている。それで……僕に勝てる気でいるの?」
おれはすぐに答えを返せなかった。身長182センチメートルで体重は90キロオーバーの悠に今ぶつかっているのは身長160センチメートルで体重は悠の半分もない43キロ……誰が見ても肉体的に圧倒的なアドヴァンテージがある自分に向けられた言葉に……。摩耶は続ける。
「ほら……油断してる。悠君は弱くなってるね。いくら気の練度があがっても、強大な力を得ても、今の悠くんはただの木偶の坊だ。」
「好き放題いってくれるじゃねぇかっ。」
背中を突き合わせての口論。ただの口喧嘩にも見えるが、そうではなかった。悠と摩耶を第三者として見ている雷果達の目に映るのは二人の足。つま先が少しづつだが確実に地面のなかへ埋まっている。それは一見なんのアクションも起こしていない様子で、二人は今とんでも無い力で押し合っている証拠だった。水面下で起こっている。その戦火は一気に破裂した。
おれは背中から肩までの筋肉のこわばりを一気に解放した。向かい来る力が追い勝って摩耶が雪崩れてくる。おれは右足を軸に左足を半円に逸らして摩耶の両足をすかし抜いた。雪崩れるからだと払われた足で当然仰向けに倒れる奴の顔に拳を叩きこんだ。空中ではいかに摩耶でも回避は不可能。垂直落下で顔を捉えた拳だったが摩耶は両手でおれの拳を受け止めた。だが、それでどうなる。おれは力を緩めるわけはないし地面に受けた瞬間その手ごと顔を叩き潰せばいいのだ。後頭部が地面に触れる寸前、摩耶の下半身がピタリとおれの腕と重なった。ヤバい、咄嗟に何かが起こると頭のなかで警鐘が鳴って、事態は急変した。首の後ろから殴られたような衝撃とともにおれは目の前が真っ暗になって鼻や口、顔中に痛みと圧が襲いかかる。
冷たい地面に顔をうずめ鼻腔に土の匂いが入ってくるなかで何をされたのかがフラッシュバックする。叩き潰そうとしたおれの腕に摩耶は絡みついた。そして蹴ったのだ。おれの後頭部を
あとは単純にそのまま押し体重を乗せて圧し倒すだけ。摩耶の身長、あの短躯とそれをやってのける覚悟があるからこそ出来る技術。一歩間違えば顔は完全につぶれていたはずだ。倒れたままの自分の耳に声が届く。軟らかさと鋭さをもつ矛盾の刃物のような声。
「お返し」
おれは身体を振るった。跳ねるように転がると自分の頭があった場所に黒いシューズが落ちて来た。ストピングが続く。ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!右左右と顔を踏み潰そうと摩耶の足が襲ってきておれは必死に地面を転がり続けた。泥や雑草、桜の花びらが顔に張り付き口の中にも入る。マズイ。味の事じゃなく、このままだといずれ潰されるが立ちあがれない。景色か何転もするなかに桜の木が目に飛び込む。今しかない。次の転がりで上半身を僅かに起こした。木の根元にぶつかって肩に衝撃が駆け抜けるがそのバウンドを利用して立ちあがることに成功。首を振ってすぐ近くにいるはずの摩耶を探した。だが……見つからない。そのとき、懐にトッともたれかかる存在を感じた。視線が自然と下がり彼を発見する。おれは立て直したんじゃない。
腰をやや引き気味に落として両足を肩幅ほど広げて背中を自分に押しつけている摩耶がいった。
「そう……立て直したんじゃない。僕が追い込んだんだっ!!」
八極拳:鉄山靠、この島への航路で鈴猫でも体験したあの一撃。あの時は受け止める覚悟と準備が出来ていたからこそ最小限の被害で済んだ。だが今回は違う無防備かつゼロ距離。後ろは大木で退路も無い。おれは瞬時に腹筋へ力を込めたが、圧し飛ばされた。圧し飛ばされたという表現は間違っている。だが今はなにも考えられない。胸より下から腰から上に掛けて表現できない衝撃が当たって圧し潰していったのだから……。内臓は潰れ口から何もかも吐き出してしまいそうな圧迫とどこかの骨がきしみ細かく折れる音。意識が飛んでいくさなかに目に映ったのは無数に舞い散りおれと摩耶を覆い包む桜の花びらだった。