ー夏休み編ー技と力と策
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さくら花ちりぬる風のなごりには 水なき空に浪ぞたちける……桜散らす風が吹き抜け、空には花びらの波が残ったという意味の和歌がある。まるで今の現状、一陣の風が吹いて花が舞う、そこに残ったのは一人の少年と地に伏せる男。
何が起こったのか後から来た三人の少女たちは理解できずにただ、ただ固まっていた。数メートル先で倒れたままの悠もピクリとも動かなかった。それを見下ろす黒衣の拳法着を纏った摩耶は近くに突き立っている槍をひっこ抜いた。穂先が鈍く輝いている。レプリカではなく本物とおぼしき槍を倒れている悠の背中に向けた。本当にトドメを刺すつもりだ。硬直していた駒理が声を出そうしたその時、自分の隣で熱を感じた。その熱の塊りは突然爆ぜたように高速で移動する。その先は……摩耶。縮地、ほぼ完成の領域まで達している高速移動術で数メートルの間合いを潰して目標の獲物を一刀する。
「うっ……あぁぁぁ!!!許さない!絶対に許さないやよっ!」
小鳥遊流柔剣居合抜刀術・飛電。縮地という特殊移動技法が出来ることを前提に考えられた、敵を追い抜きつつ切り裂くという新世代の抜刀術。キャギイィィインっと鉄鋸で金属を引いたような恐ろしい音が鳴いた。摩耶を追い抜いた少し先で刀を鞘におさめふり返りながら楓子がいった。
「取ったやよっ!」
摩耶の手にしていた槍が中ほどから切断されて本人の服の一部も削ぎ落ちた。穂先を無くした槍の柄をくるりと手のなかでまわしていう。
「取ったんじゃないよ、取られたんだよ?」
ゴフッと何かが吹き出る音がした。摩耶の後ろで楓子は膝を着いて吐しゃ物を吐き散らす。自分の放った居合は槍もろとも摩耶を断った。わけがなかった。断てたのは槍のみ紙一重でかわされた上に今の今まで自分が打たれていたことにも気がつかずにいた。当たらないのならもう一度と汚れた口を腕で拭って刀の柄握る。断ちあがろうとした、その刹那ドンっと衝撃が左肩を打つ。衝撃に押されて尻もちをついた。その眼前に映るのは摩耶。槍だった柄を巧みに操り突き倒れている楓子から、今度は刀を弾いた。
「できれば女の子に手は上げたくないんだ。邪魔しないで」
穂先は無くとも木の棒の先を楓子の顎先へと向けて見下ろす摩耶。逆上しきっていると思われた楓子が冷静にいった。
「なんで……武器を使う私が打ち負け……たやよ?」
「……確かに剣技では僕のほうが劣っている。だけどね、中国拳法の本来は対徒手でなくて、対武器。君が剣術のエキスパートというなら、ボクは武器を相手取るエキスパートだ。」
そう言い終わると摩耶は武器を捨ててニコリっと笑った。
「それにしても凄いね。一瞬でこの判断して行動に出るなんて……。」
摩耶が微笑みを向けて話してる相手は楓子ではなかった。
「そして、その稼いだ時間ジャスト一分で復活する悠君」
そう……逆上してがむしゃらに斬りかかったわけではなかった。当たっても当たらなくてもいい、一分一秒でもいい倒れている師である悠から視線を逸らさせて、自分に意識させることが楓子の目的だった。
「バレバレっすか……やよ。」
「そうでもないけよ。君の居合は本物だった。避けなかったらボクはやられてたし、カウンターを放たなきゃアサルトドライブに再度斬りかかられてたら、今度はきっと避け切れなかっただろうからね……。でも、これでいい、これがいいんだよ。僕の目的は彼(悠)で君じゃない……。」
「ごちゃごちゃ……いってよそ見してんじゃねぇぞ!摩耶っ!!」
覆いかぶされば包みこめそうなほどの体格差がある男が、その小柄な少年めがけしかも背後から容赦なく思いっきり拳を振り下ろした。摩耶は笑顔のまま呟く。
「そう、それでいい。」
金槌を振り回したような鈍い風切り音がして拳は空を刈った。摩耶はその場から飛び跳ねアクロバティックに逆Uの字を描いて悠を飛び越え着地した。高低差のある背中をくっつけていった。
「さぁ……悠くん。喧嘩しよう。」
「……わかった。けど、ひとつだけ頼みを聞いてくれ。」
「なあに?」
「デコが向こうにいってからだ。」
「いいよ。」
悠は視線で楓子にいった。ありがとう、よくやったっと……楓子は刀を拾って、それをつえ代わりにして背中合わせの男二人から離れた。悠の目には映らず、摩耶の目に楓子が駒理と影子に抱き締められるのが映った。
何が起こったのか後から来た三人の少女たちは理解できずにただ、ただ固まっていた。数メートル先で倒れたままの悠もピクリとも動かなかった。それを見下ろす黒衣の拳法着を纏った摩耶は近くに突き立っている槍をひっこ抜いた。穂先が鈍く輝いている。レプリカではなく本物とおぼしき槍を倒れている悠の背中に向けた。本当にトドメを刺すつもりだ。硬直していた駒理が声を出そうしたその時、自分の隣で熱を感じた。その熱の塊りは突然爆ぜたように高速で移動する。その先は……摩耶。縮地、ほぼ完成の領域まで達している高速移動術で数メートルの間合いを潰して目標の獲物を一刀する。
「うっ……あぁぁぁ!!!許さない!絶対に許さないやよっ!」
小鳥遊流柔剣居合抜刀術・飛電。縮地という特殊移動技法が出来ることを前提に考えられた、敵を追い抜きつつ切り裂くという新世代の抜刀術。キャギイィィインっと鉄鋸で金属を引いたような恐ろしい音が鳴いた。摩耶を追い抜いた少し先で刀を鞘におさめふり返りながら楓子がいった。
「取ったやよっ!」
摩耶の手にしていた槍が中ほどから切断されて本人の服の一部も削ぎ落ちた。穂先を無くした槍の柄をくるりと手のなかでまわしていう。
「取ったんじゃないよ、取られたんだよ?」
ゴフッと何かが吹き出る音がした。摩耶の後ろで楓子は膝を着いて吐しゃ物を吐き散らす。自分の放った居合は槍もろとも摩耶を断った。わけがなかった。断てたのは槍のみ紙一重でかわされた上に今の今まで自分が打たれていたことにも気がつかずにいた。当たらないのならもう一度と汚れた口を腕で拭って刀の柄握る。断ちあがろうとした、その刹那ドンっと衝撃が左肩を打つ。衝撃に押されて尻もちをついた。その眼前に映るのは摩耶。槍だった柄を巧みに操り突き倒れている楓子から、今度は刀を弾いた。
「できれば女の子に手は上げたくないんだ。邪魔しないで」
穂先は無くとも木の棒の先を楓子の顎先へと向けて見下ろす摩耶。逆上しきっていると思われた楓子が冷静にいった。
「なんで……武器を使う私が打ち負け……たやよ?」
「……確かに剣技では僕のほうが劣っている。だけどね、中国拳法の本来は対徒手でなくて、対武器。君が剣術のエキスパートというなら、ボクは武器を相手取るエキスパートだ。」
そう言い終わると摩耶は武器を捨ててニコリっと笑った。
「それにしても凄いね。一瞬でこの判断して行動に出るなんて……。」
摩耶が微笑みを向けて話してる相手は楓子ではなかった。
「そして、その稼いだ時間ジャスト一分で復活する悠君」
そう……逆上してがむしゃらに斬りかかったわけではなかった。当たっても当たらなくてもいい、一分一秒でもいい倒れている師である悠から視線を逸らさせて、自分に意識させることが楓子の目的だった。
「バレバレっすか……やよ。」
「そうでもないけよ。君の居合は本物だった。避けなかったらボクはやられてたし、カウンターを放たなきゃアサルトドライブに再度斬りかかられてたら、今度はきっと避け切れなかっただろうからね……。でも、これでいい、これがいいんだよ。僕の目的は彼(悠)で君じゃない……。」
「ごちゃごちゃ……いってよそ見してんじゃねぇぞ!摩耶っ!!」
覆いかぶされば包みこめそうなほどの体格差がある男が、その小柄な少年めがけしかも背後から容赦なく思いっきり拳を振り下ろした。摩耶は笑顔のまま呟く。
「そう、それでいい。」
金槌を振り回したような鈍い風切り音がして拳は空を刈った。摩耶はその場から飛び跳ねアクロバティックに逆Uの字を描いて悠を飛び越え着地した。高低差のある背中をくっつけていった。
「さぁ……悠くん。喧嘩しよう。」
「……わかった。けど、ひとつだけ頼みを聞いてくれ。」
「なあに?」
「デコが向こうにいってからだ。」
「いいよ。」
悠は視線で楓子にいった。ありがとう、よくやったっと……楓子は刀を拾って、それをつえ代わりにして背中合わせの男二人から離れた。悠の目には映らず、摩耶の目に楓子が駒理と影子に抱き締められるのが映った。