ー夏休み編ー技と力と策
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「それは……違うんです。」
卯天はともきの真正面に立った。拳を握って前へと突きだす。
「ボク達はランカーです。ただシンプルに喧嘩が強い。それだけの順位を決めているだけですが……そのシンプルで簡単な強さ比べに全力を注いでいます。摩耶さんにとって一番の敵は悠さんなんです。」
真剣な眼差し。ともきは自分より一回りちいさな少年に気圧されてしまった。小さな闘者は腕を降ろして、そのまま頭も下げた。
「すいません。おかしなことをいって」
「いや、いいんだ。卯天君や摩耶君が真剣なのは分かった。けど、それでも聞かせてくれないか?なんで、このタイミングで、今じゃなきゃいけないのかを悠と喧嘩しなきゃいけないのかを」
「「いまじゃなきゃ」……が、違っています。「今だからこそ」です。もし、例えば今が普通に旅行を楽しんでいて摩耶さんがきて悠さんに勝負を挑んでちゃんと闘ってくれると思いますか?」
答えはノーだ。誰でも分かる。悠はそんなめんどくさいことをする奴じゃない。百歩譲って受けたとしても決して闘らないだろう。適当では無いにしろ「本気」は絶対に出さない。最悪、油断して不本意な負け方をする可能性だってある。
「今なら悠さんは本気を出します。いえ、出さざる得ない状況に引っ張り込めるんです。既にきっと何戦かを乗り越えて居るなら身体も暖まっているはずですから完璧です。」
納得の答え。理不尽な様で悠という人間で考えると理にかなっている答えだった。だが、それでも、それでもともきは聞かなければならなかった。
「けど、もし、悠が負けたら?」
「いったでしょ、その時は摩耶君がその意思を受け継ぐわ。悠が勝てば続けて進む、負けたら摩耶君が残りを倒す。これが私の横やり。柏さんが勝手にしろというから私はこの盤上へ第三軍という横やりを投げつけて。ぐちゃぐちゃにかき回す策。」
「初め聞いたときは無茶苦茶だと思いましたけど……摩耶さんにも頼まれたんです。悠さんと闘いたいから手を貸してほしいと……そして、ボクも知りたかった。悠さんと摩耶さんどちらが強いのかを……。なので、摩耶さんを解き放って、その間、稲葉さんの警護はやりとおすと約束しました。」
悠と摩耶……他の者は何も知らない特別な何かを知り合う二人。秋葉原でもランキングこそ上下は形作られているが誰もかれもが実は疑問に思っている。本当に摩耶は下なのかと……。稀にみないほどの組み合わせだ。だが、ともきはどうしても想像できなかった。いつもニコニコとして、女の子と見間違えるほど小柄で華奢な摩耶が悠に喧嘩を売ってしかも倒すヴィジョンが。
沈黙するなかで稲葉が口を開いた。
「私は……正直言うとね。金剛さんが一番強いんじゃないかと思ったの。けど、今の摩耶君にあって分からなくなっちゃった。彼、たぶん此処にスイッチがあるのよ。」
稲葉は自分の胸の中心を指で二度叩いた。
「普段とはまったく違う一面。けど、ただ逆上したり喚き散らしたりするなんてちゃちな物じゃない。純粋で邪悪、美しく恐ろしい殺意。あの小さな身体には決して収まりきらないほどの戦闘意欲を溜めに溜めに溜めこんでるのよ」
稲葉と卯天が小さく震えたのが分かった。だが、なにをいっているのかはわからない。ともきは今日だけで何度目になるか分からない問いかけをした。
「いったい、摩耶君がどうなってるんだ?」
「分からないわ。ただ、今の摩耶君は解き放たれた獣……いえ、覚醒した者かしら。獣というほど愚かで考えなしじゃないから……。」
「ともかく、ここからはぐちゃぐちゃになると思います。今の摩耶さんは絶対に悠さんを見つけ出しますし……もし、それ以外の邪魔が入っても止めることができない者になっているんです。さぁ、僕らも動きましょう。亮さんのことは心配ですが散りじりになっている方たちと合流して何とか説得しましょう。」
嵐が起こる……そんな言葉が脳裏によぎった。なぜかは分からない。だが、今から荒れ始めると無意識にともきは感じ取ったのだった……。
卯天はともきの真正面に立った。拳を握って前へと突きだす。
「ボク達はランカーです。ただシンプルに喧嘩が強い。それだけの順位を決めているだけですが……そのシンプルで簡単な強さ比べに全力を注いでいます。摩耶さんにとって一番の敵は悠さんなんです。」
真剣な眼差し。ともきは自分より一回りちいさな少年に気圧されてしまった。小さな闘者は腕を降ろして、そのまま頭も下げた。
「すいません。おかしなことをいって」
「いや、いいんだ。卯天君や摩耶君が真剣なのは分かった。けど、それでも聞かせてくれないか?なんで、このタイミングで、今じゃなきゃいけないのかを悠と喧嘩しなきゃいけないのかを」
「「いまじゃなきゃ」……が、違っています。「今だからこそ」です。もし、例えば今が普通に旅行を楽しんでいて摩耶さんがきて悠さんに勝負を挑んでちゃんと闘ってくれると思いますか?」
答えはノーだ。誰でも分かる。悠はそんなめんどくさいことをする奴じゃない。百歩譲って受けたとしても決して闘らないだろう。適当では無いにしろ「本気」は絶対に出さない。最悪、油断して不本意な負け方をする可能性だってある。
「今なら悠さんは本気を出します。いえ、出さざる得ない状況に引っ張り込めるんです。既にきっと何戦かを乗り越えて居るなら身体も暖まっているはずですから完璧です。」
納得の答え。理不尽な様で悠という人間で考えると理にかなっている答えだった。だが、それでも、それでもともきは聞かなければならなかった。
「けど、もし、悠が負けたら?」
「いったでしょ、その時は摩耶君がその意思を受け継ぐわ。悠が勝てば続けて進む、負けたら摩耶君が残りを倒す。これが私の横やり。柏さんが勝手にしろというから私はこの盤上へ第三軍という横やりを投げつけて。ぐちゃぐちゃにかき回す策。」
「初め聞いたときは無茶苦茶だと思いましたけど……摩耶さんにも頼まれたんです。悠さんと闘いたいから手を貸してほしいと……そして、ボクも知りたかった。悠さんと摩耶さんどちらが強いのかを……。なので、摩耶さんを解き放って、その間、稲葉さんの警護はやりとおすと約束しました。」
悠と摩耶……他の者は何も知らない特別な何かを知り合う二人。秋葉原でもランキングこそ上下は形作られているが誰もかれもが実は疑問に思っている。本当に摩耶は下なのかと……。稀にみないほどの組み合わせだ。だが、ともきはどうしても想像できなかった。いつもニコニコとして、女の子と見間違えるほど小柄で華奢な摩耶が悠に喧嘩を売ってしかも倒すヴィジョンが。
沈黙するなかで稲葉が口を開いた。
「私は……正直言うとね。金剛さんが一番強いんじゃないかと思ったの。けど、今の摩耶君にあって分からなくなっちゃった。彼、たぶん此処にスイッチがあるのよ。」
稲葉は自分の胸の中心を指で二度叩いた。
「普段とはまったく違う一面。けど、ただ逆上したり喚き散らしたりするなんてちゃちな物じゃない。純粋で邪悪、美しく恐ろしい殺意。あの小さな身体には決して収まりきらないほどの戦闘意欲を溜めに溜めに溜めこんでるのよ」
稲葉と卯天が小さく震えたのが分かった。だが、なにをいっているのかはわからない。ともきは今日だけで何度目になるか分からない問いかけをした。
「いったい、摩耶君がどうなってるんだ?」
「分からないわ。ただ、今の摩耶君は解き放たれた獣……いえ、覚醒した者かしら。獣というほど愚かで考えなしじゃないから……。」
「ともかく、ここからはぐちゃぐちゃになると思います。今の摩耶さんは絶対に悠さんを見つけ出しますし……もし、それ以外の邪魔が入っても止めることができない者になっているんです。さぁ、僕らも動きましょう。亮さんのことは心配ですが散りじりになっている方たちと合流して何とか説得しましょう。」
嵐が起こる……そんな言葉が脳裏によぎった。なぜかは分からない。だが、今から荒れ始めると無意識にともきは感じ取ったのだった……。