ー夏休み編ー技と力と策
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紙一重とは良くいったもので、傷こそ負ってはないがアイデンティティともいえる眼鏡は地面に落ちた。こめかみの辺りを抑える氷室に颯天はいった。
「ジョーダンじゃないぜ。まさか今のかわすかねぇ……。とんでもない反射神経してるわ本当に……。でもま……視力は奪えたかな。」
眼鏡越しにも糸のように目を細めていた男は頭をあげる。その顔は、額にしわを寄せ今まで以上に目を細くしていた。よっぽど目が悪いのだろう。それに加えて日はとうに沈み、心ともない光は月明かりだけ。仮に耳を頼ろうにもさざ波の音と茂った草木の音に阻まれている。氷室はよた、よたっとおぼつかない足取りでその場を小さく前後する。急に視覚を奪われて平衡感覚と距離感をつかめてないのだろう。
「もっと時間があったら、ちゃんと闘うけど……今回はこれで勘弁してくれ。」
赤子の手をひねる如く、颯天は右足を振ってローキックで完全に機動力を奪おうとした。フラフラしている氷室は一歩後退して半身を翻し、蹴りを避ける。
「なにっ?」
そのまま二歩、三歩と後退し続けてトンっと木にぶつかる。その様子に颯天は首をひねった。
「偶然……か?」
木を背にしてキョロキョロと四方をうかがう姿は、やはり見えていない。それでも、今さっきの動きに微かな疑問をもった颯天は銀の投刃を右手に数枚抜く。
「フッッ!!」
短く息を吐いて足目掛け投げた。もし、見えて無いのが演技やなにかしらの方法で避けていたとしても、左手に隠し持った刃を放つ。二重態勢での狙撃。
「馬鹿が……。お前もう捉えちまってるんだよ」
そういったのは炎銃だった。しかし、その声が颯天の耳に届くより速く、右手を弾かれた。それを理解したのはジンっとしたシビレが、自分の意思とは無関係に上げさせられた右手に走ってからだ。つぎはシャララッと音を立て銀の鱗が流れ落ちて左手が横に弾き飛ばされる。何が起こってるのかは分からない。だが、ひとつだけ確実に理解できたのは攻撃されているという事実。そして……その攻撃を仕掛けているやつは……
「氷っ…!」
「おっと、喋ると舌を噛みますよ」
パパパンッ!拍手みたいな音が鳴る。そのたびに颯天は小刻みに身体を揺らした。相変わらず額に深いしわを刻んだままの氷室は、多少ふらつきながら。颯天の正面でいった。
「喋る権利も、動く権利も与えません。ただし、聴く権利だけは与えましょう。」
「ぐぁっ……。」
喋りたくても、動きたくとも唇ひとつ、指先一本動かせなかった。さっきとは別物……こんどは本当に身体を氷結させられたような感覚。氷室は壊れた眼鏡を拾いあげて、ハンカチで丁寧に包みポケットにいれる。
「あーぁ、このフレームはイタリア製のブランドものだったのですけど……ねっ。」
肉打つ拍手音が夜の森に淡く響く。一見では分からない打撃が颯天を襲っている。それも一発や二発ではないとてつもない数の連打をぶつけられていた。
「まず、勘違いしている事をひとつお教えしましょう。私は確かに眼鏡をかけていますが……目が悪いわけではありません。」
言葉を切るたびに颯天の身体はぎこちないロボットのように身体がカクカクと動く。しかし、自意識で動いてるのではなく、強制的にかたちを変えさせられている。氷のマリオネットだ。
「私は元来……目が良すぎましてね。このレンズは視力を補強するものではなく抑え込んでいるギプスのようなモノです。」
見えすぎる目は無意識に視覚ないの動くものを捉えてしまうので、極度の眼精疲労を起こすゆえに自らその視力にブレーキをかけた。氷室は考えていた。最後に眼鏡を外して闘ったのはいつだったかと……思い出せないほど昔のことにすぐに考えるのをやめてしまった。今はこの愚かな男との決着をつけるとしよう。
「それでは暫く眠っていてください。」
「……っ。」
パチンッ……指をはじいたような音がして糸の切れた人形のように颯天はその場に崩れ落ちた。
「ふぅ、思いのほか手間取りましたね。」
炎銃は伏せている男を足蹴にしながらいった。
「コイツ……最後に何かいってなかったか?」
「私の読唇が正しいなら……「オジョウミスッタ」といってましたね。」
「おじょうみすった……お嬢ミスったか?」
「どうやら、今回の一件、柏さんだけの思惑では無いようですね。」
林道のなか……
氷室VS颯天
颯天捕縛にて決着……。
「ジョーダンじゃないぜ。まさか今のかわすかねぇ……。とんでもない反射神経してるわ本当に……。でもま……視力は奪えたかな。」
眼鏡越しにも糸のように目を細めていた男は頭をあげる。その顔は、額にしわを寄せ今まで以上に目を細くしていた。よっぽど目が悪いのだろう。それに加えて日はとうに沈み、心ともない光は月明かりだけ。仮に耳を頼ろうにもさざ波の音と茂った草木の音に阻まれている。氷室はよた、よたっとおぼつかない足取りでその場を小さく前後する。急に視覚を奪われて平衡感覚と距離感をつかめてないのだろう。
「もっと時間があったら、ちゃんと闘うけど……今回はこれで勘弁してくれ。」
赤子の手をひねる如く、颯天は右足を振ってローキックで完全に機動力を奪おうとした。フラフラしている氷室は一歩後退して半身を翻し、蹴りを避ける。
「なにっ?」
そのまま二歩、三歩と後退し続けてトンっと木にぶつかる。その様子に颯天は首をひねった。
「偶然……か?」
木を背にしてキョロキョロと四方をうかがう姿は、やはり見えていない。それでも、今さっきの動きに微かな疑問をもった颯天は銀の投刃を右手に数枚抜く。
「フッッ!!」
短く息を吐いて足目掛け投げた。もし、見えて無いのが演技やなにかしらの方法で避けていたとしても、左手に隠し持った刃を放つ。二重態勢での狙撃。
「馬鹿が……。お前もう捉えちまってるんだよ」
そういったのは炎銃だった。しかし、その声が颯天の耳に届くより速く、右手を弾かれた。それを理解したのはジンっとしたシビレが、自分の意思とは無関係に上げさせられた右手に走ってからだ。つぎはシャララッと音を立て銀の鱗が流れ落ちて左手が横に弾き飛ばされる。何が起こってるのかは分からない。だが、ひとつだけ確実に理解できたのは攻撃されているという事実。そして……その攻撃を仕掛けているやつは……
「氷っ…!」
「おっと、喋ると舌を噛みますよ」
パパパンッ!拍手みたいな音が鳴る。そのたびに颯天は小刻みに身体を揺らした。相変わらず額に深いしわを刻んだままの氷室は、多少ふらつきながら。颯天の正面でいった。
「喋る権利も、動く権利も与えません。ただし、聴く権利だけは与えましょう。」
「ぐぁっ……。」
喋りたくても、動きたくとも唇ひとつ、指先一本動かせなかった。さっきとは別物……こんどは本当に身体を氷結させられたような感覚。氷室は壊れた眼鏡を拾いあげて、ハンカチで丁寧に包みポケットにいれる。
「あーぁ、このフレームはイタリア製のブランドものだったのですけど……ねっ。」
肉打つ拍手音が夜の森に淡く響く。一見では分からない打撃が颯天を襲っている。それも一発や二発ではないとてつもない数の連打をぶつけられていた。
「まず、勘違いしている事をひとつお教えしましょう。私は確かに眼鏡をかけていますが……目が悪いわけではありません。」
言葉を切るたびに颯天の身体はぎこちないロボットのように身体がカクカクと動く。しかし、自意識で動いてるのではなく、強制的にかたちを変えさせられている。氷のマリオネットだ。
「私は元来……目が良すぎましてね。このレンズは視力を補強するものではなく抑え込んでいるギプスのようなモノです。」
見えすぎる目は無意識に視覚ないの動くものを捉えてしまうので、極度の眼精疲労を起こすゆえに自らその視力にブレーキをかけた。氷室は考えていた。最後に眼鏡を外して闘ったのはいつだったかと……思い出せないほど昔のことにすぐに考えるのをやめてしまった。今はこの愚かな男との決着をつけるとしよう。
「それでは暫く眠っていてください。」
「……っ。」
パチンッ……指をはじいたような音がして糸の切れた人形のように颯天はその場に崩れ落ちた。
「ふぅ、思いのほか手間取りましたね。」
炎銃は伏せている男を足蹴にしながらいった。
「コイツ……最後に何かいってなかったか?」
「私の読唇が正しいなら……「オジョウミスッタ」といってましたね。」
「おじょうみすった……お嬢ミスったか?」
「どうやら、今回の一件、柏さんだけの思惑では無いようですね。」
林道のなか……
氷室VS颯天
颯天捕縛にて決着……。