「はぁはぁ、長谷部さぁん。待ってくださいよ…」

少し遅れて走ってきたのはコマリだった。
ヘロヘロと千草の肩に手を置いて俺と鈴猫を見る。

「はぁはぁ…はぁー…お二人とも治療しますか？」

「いや、まずは、自分の息を整える方が先決だろ。あと、俺は後からで良いよ。先にコイツの腕を見てやってくれ。」

俺は鈴猫の背中を押した。コマリに任せて、千草に聞いた。

「他のは？」

「みんな勉強してるよ」

俺の聞き間違いだろうか？
今……勉強してるって言ったような……いや、まさかと思って耳を軽くかいてからもう一度同じ質問をした。

しかし、千草は残念そうに首を横に振った。

「え、なに、どゆこと？」

「まぁ、説明すると長くなるけどね。ホテルに着いて男女に別れたじゃない。その後、荷物置いてロビーに集まったのよ。まぁ、先人を切って遊びに行こうって、こなっちが言ったんだけど…まゆまゆが「いや、今日はしっかりと勉強しよう。」って…女子陣全員で宿題してるのよ。あ、デイジーちゃんはメイドさんとドレッドさん連れて消えちゃってたわね。それと、即男子陣側にいった二人は捕まんなかったけどね。」

「御愁傷様だな……。あれ、じゃあ、お前とコマリは何でここにいる？」

「逃げてきたから。」

千草は太陽がキモチイーっと背伸びをした。
雑誌の表紙でも飾りそうだミス･サンシャインガール…。

「おいおぃ。俺がいうのもアレだけどいいのかよ？」

「あのね、私は宿題なんかとっくに終わらしてあるの。それに代わりを置いてきたから平気よ。」

「代わり？」

「亮とともきん。」

あ、そう言われて気がついた。二人を連れてきてなかったっけ…。
サンシャインガールは休憩用のベンチに座って足を組んでいった。

「ともきんはつかっちと一緒なら苦にならないでしょ。亮は……少しちゃんと勉強した方がいいのよ。」

亮はきっと将来尻にしかれるだろう。

「女は強いなぁ～…」

「……アンタに忠告耳かして。」

「んだよ、ちゃんと返せよ？」

「(さっき、金剛からメールが来たわよ。悠の所にコマリを連れてってやってくれって、あの娘が何なのかは知らないけど、アンタとカッシーのやり合いに巻き込んでるならちゃんと守りなさいよね。金剛だっていつまで味方かわかんないわよ。)」

俺はグラウンドを遠くに見つめてうなずいた。
熱血よろしくの炎銃を先頭に走り込みが始まっている運動場で汗を散らしながら駆けていく姿は端から見るだけなら健康的だ。

ただ、俺が気になったのはセンヤだ。
足に怪我してるのにハイペースのランニングに参加して大丈夫だろうか。

コマリが俺の肩を叩いた。

「桜花さんの治療は終わりましたよ。さ、次は悠くんの番ですよ。」

スプレータイプの湿布とガーゼを持って手を伸ばしてくる。
俺は左手を見せつけていった。

「もう平気だ。痺れてないし痛くもない。」

「本当ですか？」

「勿論。」